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シルバ・アリウム、剣聖と成る
十七話
しおりを挟む「な……何をしとるッ……早く殺―――」
「聞きなさいッ!!貴方に送ったその書状ッ……
それを承認した者を誰と心得ているのですかッ!!」
「承認者だとぉ……まさかお前、このサインを信じろと申すか?」
フタバ伯爵が懐から取り出す紙。
それは私が送った納品物に関する対応を求めた書状であり、彼はその書面の最下段に記載されたある人物の直筆のサインを嘲笑う。
「―――確かに、このサインが本物であれば我の行いは間違いであり、
お前の方が正しいのだろう……しかし、知っておるだろう?
かの王の娘、シルバ王女は不慮の事故で亡くなったのだ!
故に、このサインは偽物であり貴様が言う我の不正の確証も無い、
これが王女の名を利用した反逆行為である事は明白なのだッ!!」
私が仕掛けた罠は二つ。
一つは偽造された輸出品リストの存在を公開して、その事実を村民に謝罪するように要求した書状、そうしなければ抑えた証拠書類を帝都へ提出して、然るべき処罰を受けて貰う趣旨の内容。
そしてもう一つは、今回の件を統括する責任者の名前。
今までこの名を隠してなるべく目立たない様に過ごしてきたが、相手が騎士団の立場と利権を利用するならば、こちらも名前と立場を利用するしかない。
よって、書面に綴った名前は私の名、
―――シルバ・アリウムの署名であった。
「……では、シルバ王女が仮に生きていたとしたら?
フタバ伯爵は己の間違いを認めてくださるのですか?」
「っふんッ……!!くだらぬッ!!
万が一そうであった場合は、潔く認めてやろうではないか」
「その言葉、しかと受け取りました……」
確かに聞いた言葉は周りの兵士一同と、騒ぎを聞きつけた村人にも伝わった。
この瞬間、全ての準備は整い私は声を張り上げる。
「―――皆、聴いてくださいッッ!!
このジニア村の農業にはフタバ伯爵による不正があり、
それを正そうと私は動きました、しかし、それを反逆行為と判断され
私は今に至ります、これをどう捉えるか―――」
「魔術師よ、やれ」
ドガァァァッ!!!!!
シルバの言葉は、最後まで発せられることなく魔術師による集団魔法でかき消された。
複数人による魔術行使は、上級魔法を発動させてシルバを仕留める。
黒煙を発してその場は焼かれ、消える事の無い炎が不気味に揺らめく。
「ふぁっはっはッ!!荒唐無稽な嘘を言うからだッ!!」
「シルヴィアッ!?」
ヒースは悲痛な叫びに似た声で彼女を呼ぶが、応えは無く煙だけが立ち昇る。
徐々に鮮明になってゆく視界、炎と煙が虚ろに消えて残骸となったはずであろう彼女の姿がそこには―――。
「―――もはや、言葉を語る意味すらない」
美しい銀の髪、澄んだ蒼の瞳、凛とした佇まい。
そこには、シルヴィア・ライトが魔法を相殺して構える、
―――シルバ・アリウムの姿があった。
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