天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

文字の大きさ
30 / 102
シルバ・アリウム、剣聖と成る

二十九話

しおりを挟む

 「ヒース」


 しかし、優しげな響きで呟かれた彼の名が、死神に落ち着きを取り戻させる。


 「―――シュバルツ様、貴方のお願いは謹んでお受けします、
  街の……ひいては国にとって重要な行事です、協力できる事があれば全面的に
  お手伝いさせて頂きます」

 「ご協力、まことに感謝します」

 「シュバルツ様は、私を試したいのでしょう?
  表面的には王女の名を使った大会の余興を想定しているのでしょうが、
  ……もし、仮に、剣聖と言われた義父の姿を彷彿とさせる剣技があれば、
  貴方は私に助力を惜しまない―――違いますか?」

 「………お答え、しかねます」

 「ふふっ、その反応だけで上々です、……この短いやり取りで確信しました、
  貴方は合理的であるだけで、その本質はとても正しく素直です、
  常に王女としての務めを果たしていけば、自ずと仕えてくれます」


 呆気に取られるシュバルツは、その心を見透かされて視線をシルバから外す。

 帝都を離れて以来、彼女は人の心を読み取り、気遣い、そして成長してきた。
 
 彼にとって私が有益な人間であれば協力し続け、逆に失態を晒せば見放される事も、それら全てを汲み取った上で協力し、邁進する。


 「シュバルツ様、貴方に対して偽りのない信頼と期待、そして協力を約束します、
  これからは国のために尽力するアリウム騎士として、全力で責を全うしてください」

 「―――ッは」


 もはやその心中を悟られ、取り繕う必要の無いシュバルツは素直に応える。
 一連の取り決めをし、事なきを得たかと思われた今回の会合。

 しかし、一人だけ不服そうな顔をした死神が一石を投じる。


 「僭越ながら、シュバルツ様よろしいでしょうか?」

 「―――如何いたした、黒き死神?」


 わざとらしく名前を呼ばず、敵意に似た声色で返答してみせる騎士。


 「……ジニア村が抱える問題、そしてこれから話し合う剣術大会の事を進める前に、
  貴方はシルバ王女に婚約の件を謝罪するべきではありませんか?」

 「その件については既にシルバ王女とお話しておりますし、正式な手順を終えて済んだ
  案件です、ここで要らぬ時間を割いてまで口出しする身分ですか?」

 「騎士であるならば、ましてや、誉れ高きアリウムの名を冠する者であれば婚約まで
  した相手を裏切るなど言語道断、貴方はシルバ様の温情に甘えてのうのうと
  生きているに過ぎません、それに気付けず謝罪の言葉も無いとは無礼極まりない、
  私には到底考えられない愚かな行為です」

 「―――口が、過ぎるぞ、死神が」


 犬猿の仲、とはこの事なのだろうか。

 ヒースは普段から口うるさく私の事を心配し、小言が多く何かと言ってくる。
 が、この様に直接的な言葉で嫌悪感を示すのは初めて見る。

 その強固な姿勢にシュバルツも苛立ちを見せるが、彼もまた人前で感情をあらわにするのは決して無かった。


 ―――冷静沈着、才色兼備、文武両道。


 様々な例え方をされる程の秀才が、元暗殺部隊のヒースの言葉にいちいち反応するのは何故なのだろう。

 実際、彼との婚約破棄はお互いにあとくされの無い終わり方をしているので、それを指摘されても毅然と振る舞えば良いのに、妙にシュバルツは熱くなっている。


 ので、事態の収拾が付かなくなる前に私は二人に提案する。


 「そうだっ!せっかくですからお二人も剣術大会に参加されては?」


 「「―――は?」」


 間の抜けた返事が被さり、嫌な一体感を作りながら二人は気まずく口を閉ざした。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...