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シルバ・アリウム、剣聖と成る
四十二話
しおりを挟むとは言え流石のダガーンも百戦錬磨の猛者、咄嗟に見切って後方に下がっては、二度目の仕切り直しとなって大斧を構え直す。
「―――強ぇな……嬢ちゃん……」
「お褒めに頂き恐縮です、ですが……私の強さ、更に知ってもらいます」
「ほぉ……なら、オレも気合い入れなきゃならねぇな?
ワリィが手加減はもう無しだ、殺すつもりで挑ませてもらうぜ」
ダガーンは広い闘技場の端まで大きく距離を取ると、集中して魔力を高める。
すると、握っていた大斧は赤く灼熱の如き色で染まってゆく。
「―――業火絢爛、爆裂破壊魔法ッッッ!!!!」
『おおっっとッ!!これはっ……五年前の決戦で使われたダガーンの魔法……
灼熱の一振り“業火絢爛”だぁぁぁっ!?会場の皆様は衝撃に備えてくださいっ!!』
限界まで魔力を注ぎ込んだ大斧は、爆発寸前まで加熱し力を蓄える。
と同時に、腰だめに構えて弾丸の疾さでシルバに突撃した。
「喰らえやぁぁぁッッッッ!!!!」
純粋な力。
そこに小賢しい技術も魔法も介入する余地はなく、圧倒的な衝撃を目の前にシルバは一つ、深呼吸をするだけ。
「―――ふうっ……」
そして呼吸を整え、細く綺麗な腕で赤き流星めいた突撃を―――
銀の星を以てして、逆に叩き切る。
――――ドガァァァァッッ………!!!!!
衝突する二人の風圧で、闘技場全体に痺れるような空気が伝わる。
最前列に近い位置まで爆風が巻き起こり、二人の勝敗が分からずにいた。
爆音により耳鳴りが響くなか、状況を確認した実況者のクロが喋り出した。
『………えー…皆様、ご無事でしょうか……?防御魔法で守られた実況席すら
凄まじい衝撃が伝わり、その苛烈さが染みわたりました……王女様とダガーンは
いったいどうなったのでしょうか……お二人とも~生きてますかーー!!』
破壊的な衝撃音が静寂に変わり、その凄まじさから観客は息を呑んでその行方に注視していた。
実況からの呼びかけから一瞬の間、その声に応えて舞い上がった爆炎を斬り払い、姿を現した剣聖が、ここにいた。
「はーい、生きておりますよー」
何事も無かった、そう言わんばかりにシルバは無傷であり、笑顔であった。
大斧の衝撃を受け流し、自身の周辺だけ爆風の跡が残らない様に剣を巧みに使うと、隙となった懐に魔力剣の一太刀を浴びせた。
その結果、大斧の魔力は削がれて攻撃手段を失い、魔力で生成されたとはいえ直撃した刀身によりダガーンは―――
気を失って、倒れ伏していた。
『な、ななな、なんとーーー!!!!
ダガーンの一撃を防ぎきり、あまつさせ反撃してこの場を制したのは………
我らが王女様、シルバ・アリウム王女だーーーー!!!!』
疑いようも無い程の、完勝。
呼吸を忘れ、静まり返っていた観客たちは大きな声で反応した。
「うおおおおぉぉぉぉおぉおぉ!!!!!」
「剣聖の再来だぁぁぁッ!!!!」
「最高だったぜ王女様――――!!!!!」
割れるような歓声と賞賛、そして興奮して立ち上がったアリウムの民は、シルバに対して絶対的な敬意を心に宿す。
それほどに、この一戦は彼らを熱狂させ、シルバという少女の人物像を確立させた。
大衆から惜しみない声援を受けて、シルバは笑顔でそれを返して舞台裏へ去る。
その際、彼らの心を掴んだ王女は惜しまれる様に姿を消した。
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