賊を狩り続ける冒険者~近代技術で魔法を凌駕する~

作間 直矢 

文字の大きさ
5 / 68
1話 賊狩りと少女

5

しおりを挟む

 ―――きっと、彼の戦いはずっと一人だったのだろう。

 少ない口数も、最低限の説明も、その必要性が無かったからこそであり、私の存在が彼に迷惑をかけているかもしれない、そう思えてならなかった。


 「よいっしょ……!」


 既に命の危険がある場所で、感傷に振り回されながら言われた指示をこなす。
 ひらけた街道に馬を引いて馬車を移動させると、ここに迷いが生じる。


 (本当に、このまま帰ってしまっていいのだろうか)


 真に役に立ちたいと思うのならば、それは言葉ではなく行動で示すべきである。
 力の無い私にも出来る事があるのなら、ここで退き返すのは違うと断じた。


 「よしっ……!」


 引いていた手綱を掴みなおし、その方向を廃村へと向ける。
 せめてもう少し近い距離に酒樽を置ければ、作戦も確実になるはずと信じて。


 少し距離を歩くと、林道に差し掛かって辺りは一気に暗くなる。
 整備のされてない道は歩きづらく、荷車を引く馬の足取りも重くなる。


 「……流石に、ここまでいいかな、お馬さんも疲れているみたいだし」


 軽く頭を撫でてあげ、馬の様子を見つつ周辺の警戒をする。
 村では動物と触れ合う機会が多かったが、ここで乗馬の技術が役に立った事を少し誇らしく感じる。

 そんな細やかな気持ちを壊す様に、その騎影は接近してきた。


 「―――ま、まずいかも」


 遠目に見えるは、松明を掲げて接近する二人の盗賊。

 アルバートが言っていた警備を担当している賊が見回りにここまでやってきていた。
 気付いた時には視認できる距離でこちらに向かって近付いてくる。


 「逃げなきゃ……!」


 ここから離れようと乗馬した時、一束の爆竹がこちらに投げられる。
 次の瞬間、爆竹はけたましい音と共に発火し、馬の足元で破裂した。


 「っきゃッ!?」


 馬が驚いて嘶くと、荒れ狂って飛び跳ねる。
 繋がれていた綱が緩んで外れると、私は地に落ちて逃げ去った馬を微かに見るだけ。


 「おいおい、村の連中が追いかけに来たと思ったら、
  こいつぁ随分と可愛らしいお嬢さんじゃねぇか」

 「馬車を引いて来ている、中を確認するまで油断するな」

 「へいへい、わかってるつーの、
  この娘はどーする?俺が貰ってもいいのか?」

 「まぁ待て……ふむ、なんだこいつは?
  酒樽が積んであるな……これは、お前行商人か?答えろ小娘」


 盗賊の一人が慎重に馬車の中身を確認しつつ、もう片方は刃物をちらつかせ下卑た笑顔をこちらに向ける。


 「わ、わた、しは……」


 また、だ。

 声が上手く出せず、恐怖で手は震え、視界が定まらない。
 せめて一矢報えるようにと腰に付けたナイフは、抜く事すら出来ず悔しさが溢れる。

 私は、こんな気持ちを味わう人々がいなくなるよう、彼についていったのではないのか。


 何の為に、彼の役に立ちたいと願ったのか。
 何の為に、この命は救われたのか。
 何の為に、いま、賊と相対しているのか。


 全ては、自らの意思で人を救いたいと願ったからだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...