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1話 賊狩りと少女
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しおりを挟む―――きっと、彼の戦いはずっと一人だったのだろう。
少ない口数も、最低限の説明も、その必要性が無かったからこそであり、私の存在が彼に迷惑をかけているかもしれない、そう思えてならなかった。
「よいっしょ……!」
既に命の危険がある場所で、感傷に振り回されながら言われた指示をこなす。
ひらけた街道に馬を引いて馬車を移動させると、ここに迷いが生じる。
(本当に、このまま帰ってしまっていいのだろうか)
真に役に立ちたいと思うのならば、それは言葉ではなく行動で示すべきである。
力の無い私にも出来る事があるのなら、ここで退き返すのは違うと断じた。
「よしっ……!」
引いていた手綱を掴みなおし、その方向を廃村へと向ける。
せめてもう少し近い距離に酒樽を置ければ、作戦も確実になるはずと信じて。
少し距離を歩くと、林道に差し掛かって辺りは一気に暗くなる。
整備のされてない道は歩きづらく、荷車を引く馬の足取りも重くなる。
「……流石に、ここまでいいかな、お馬さんも疲れているみたいだし」
軽く頭を撫でてあげ、馬の様子を見つつ周辺の警戒をする。
村では動物と触れ合う機会が多かったが、ここで乗馬の技術が役に立った事を少し誇らしく感じる。
そんな細やかな気持ちを壊す様に、その騎影は接近してきた。
「―――ま、まずいかも」
遠目に見えるは、松明を掲げて接近する二人の盗賊。
アルバートが言っていた警備を担当している賊が見回りにここまでやってきていた。
気付いた時には視認できる距離でこちらに向かって近付いてくる。
「逃げなきゃ……!」
ここから離れようと乗馬した時、一束の爆竹がこちらに投げられる。
次の瞬間、爆竹はけたましい音と共に発火し、馬の足元で破裂した。
「っきゃッ!?」
馬が驚いて嘶くと、荒れ狂って飛び跳ねる。
繋がれていた綱が緩んで外れると、私は地に落ちて逃げ去った馬を微かに見るだけ。
「おいおい、村の連中が追いかけに来たと思ったら、
こいつぁ随分と可愛らしいお嬢さんじゃねぇか」
「馬車を引いて来ている、中を確認するまで油断するな」
「へいへい、わかってるつーの、
この娘はどーする?俺が貰ってもいいのか?」
「まぁ待て……ふむ、なんだこいつは?
酒樽が積んであるな……これは、お前行商人か?答えろ小娘」
盗賊の一人が慎重に馬車の中身を確認しつつ、もう片方は刃物をちらつかせ下卑た笑顔をこちらに向ける。
「わ、わた、しは……」
また、だ。
声が上手く出せず、恐怖で手は震え、視界が定まらない。
せめて一矢報えるようにと腰に付けたナイフは、抜く事すら出来ず悔しさが溢れる。
私は、こんな気持ちを味わう人々がいなくなるよう、彼についていったのではないのか。
何の為に、彼の役に立ちたいと願ったのか。
何の為に、この命は救われたのか。
何の為に、いま、賊と相対しているのか。
全ては、自らの意思で人を救いたいと願ったからだ。
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