賊を狩り続ける冒険者~近代技術で魔法を凌駕する~

作間 直矢 

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3話 挑発と挑戦

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 事態が動きつつある中、バハから逃れたアリウムは屋敷を巡り逃げようとした。


 「―――ここも、か」


 警備が厳重となっている通路を避け、外に繋がる出口を探す。
 アリウムは戦闘を極力避け、隠密行動で身を潜めていた。


 「おいっ!!娘はいたかっ!!」

 「ここは探した、上階に向かって逃げ道を塞いでおけ」

 「わかった、ここは頼んだぞ」


 警備兵のやり取りを流し見て、巡回ルートを観察し少しずつ移動すると書斎に辿り着く。
 そこは警備が手薄くなっており、一時的に身を隠すのに最適な場所であった。


 「……色々置いてあるなぁ、あの人がこんなに本を読むとは思えないけど」


 傲慢なバハが様々な分野を取り扱う本を読むとは思えず、不思議に思いながら書斎を見渡すと、作業用の机が目に映る。


 「何か、あるかな」


 引き出しや机の上にある物を漁り、使えそうな物を探す。
 作業用のペーパーナイフを見つけた彼女は、それを懐にしまって装備する。

 と、引き出しの一つに沢山の資料が入っているのを見つけた。


 「なにこれ……奴隷受け入れの名簿、と、価格が明記されている」


 ペラペラとまとめられていた資料を流し見て、この屋敷で行われている非道な人身売買の履歴を確認した。

 と同時に、この資料が違法な奴隷売買の証拠になりアリウムはこれをしまう。

 そして、資料に記載されていた隠し通路の存在を見つけ、息を呑む。


 「……」


 本棚の一つ、その中にある特殊な本。
 それは通路へのスイッチであり、引き抜くとレバーの役割となって本棚が動く。
 
 吹き抜ける乾いた空気と不穏な気配。

 追われている立場であるアリウムは、その危機を度外視して先へ進んだ。

 コツコツと石の階段を降りてゆき、薄暗い視界が徐々に馴染む。
 階段を下ると、魔法石で照らされた鉄格子が輪郭を表していく。


 「―――ッ…!!!」


 アリウムは絶句する。
 鉄格子を介して見た風景は人間扱いされていない人達。


 すすり泣く人、気が狂いうすら笑いを浮かべる人、絶望した人。


 様々な負の感情が入り乱れ、地獄と化したこの場所にアリウムは吐き気を覚えた。


 「い、今っ……助けますからッ…」


 必死に冷静を保ち、なんとか絞り出した言葉。

 だが、身体を動かそうとすると同時に、この状況で自分に何が出来るかを考えてしまい、躊躇と無力に止まってしまう。

 そして、少女は騎士が言った言葉を思い出す。


 『俺の力では、救えない人もいる』


 あの時、彼が言った言葉が脳裏によぎる。

 多くの人を救おうとも、自らの手から零れ落ちる命は確かに存在した。
 彼はそれを知っているから、私に謝った。

 目の前の奴隷の人達を救い出し、この状況から逃げ出して、バハの悪行を認めさせる。

 これらを行う為には、力が必要であるはずなのに私はそれを持ち合わせていない。

 故に、綺麗事だけで動いていた私が酷く惨めに思え、勇者になると言った約束すら霞んで眩暈を起こした。


 「見つけたぞ、お嬢ちゃん」

 「―――ッ!?」


 後ろから呼びかける声は聞き覚えがあった。

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