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4話 魔を討つ
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しおりを挟む三日後、澄んだ空気が気持ちの良い朝。
アリウムとシキは魔物討伐の為に準備を進め、遠征へと向かおうとしていた。
ただ一人、彼を待ちながら。
「火薬と……鉄鋼、必要な部備品は揃ったかな……」
「アリウムちゃーん、一応入るだけの武器も積んで貰っていいかにゃ?
砦の兵士が扱える武器もあるだろうし、無駄にはならないはずだよ~」
「あ、はい……わかりました」
「―――やっぱり、アルバートくんがいないと不安?」
ずっと暗い表情のままであるアリウム。
原因であろう彼の事を尋ね、シキは荷物を降ろして隣に座り話を聞く。
「魔物が怖い訳でも、命が惜しい訳ではないのに、
私は酷く怯えている気がするんです……
きっと、今までアルバートさんに頼り切りだったんでしょうね…」
「アリウムちゃんは本当に健気だねぇ……」
「そ、そんなつもりではっ……」
「まぁ、次のクエストが成功するように頑張ろうね、
計画では充分アタシ達でもこなせる予定だし」
「……大軍兵器を運用した魔物殲滅、予定では新たに二機の増設が
されているらしいですが、現地の技術者が調整しているのが懸念点ですね」
「兵器本体は問題無いらしいけど、砲弾の術式組み替えに手こずっているらしいね、
確かに専門的な知識がないと、魔法陣を失敗する様に組むなんて難しいかぁ~」
「私達で兵装関連の支援をして、砦の兵士さん達の助けになればよいのですが…」
「あまり気負い過ぎず、もう少し気楽にいこうよ~」
「はい……ありがとうござます、シキさん」
作業に戻ろうと、二人が立ち上がろうとする時だった。
不意に、工房の玄関から呼び鈴が鳴る。
「なんでしょうか?工房の呼び鈴を鳴らすなんて珍しい来客ですね」
「ん~?なんだろうね?ちょっと対応お願いしていいアリウムちゃん」
「わかりました、ちょっと見て来ますね」
思わぬ来客を不思議に思いながら、アリウムは玄関へ向かう。
ぱたぱたと急ぎながら、古ぼけた扉を開けてその人物を迎えた。
「お待たせしましたー……ぇ……」
よく見た姿。
来るとは思っていなかった人。
だが、帰ってきて欲しかった人。
「ある、ばーと……さん…」
「―――今、戻った」
鋭い目つき、暗い瞳。
そこには、アルバートが鎧を纏わず帰って来た。
「おかえり、なさい……じゃなくてっ!!
身体はッ!!身体は……大丈夫、なんですかっ……」
「刻印の影響は落ち着いた、若干の身体機能に影響はあるが戦闘には問題ない」
「どうしてっ……そんな身体で、何と戦うつもりですか」
「俺の敵は賊だけだ……あいつらを殺す為に今まで戦ってきた、
だが……いや、だからこそ、その為ならば魔物とも戦おう」
彼が口にした言葉は意外なものであり、アリウムは目を見開いて彼を見た。
「でも……なんで……」
「あの後、サクラに謝った……目的の為とはいえ彼女の気持ちを蔑ろにした」
「アルバートさん……」
「俺にとって、賊を殺す事以外は余計なことだ、しかし……
サクラが言う様にギルドの後ろ盾を得られるのは大きな成果であり、
今後の賊討伐においては自由に動きが取れやすくなる」
「―――本当に、それだけが理由ですか」
まっすぐ、視線を逸らさずに彼の瞳を見据えるアリウム。
数々の賊を屠って来た彼でさえ、あまりに純粋な眼差しに顔を逸らした。
「……サクラとは、一つ取引をした」
「取引?」
「先の件で捕らえた男……蛇と呼ばれた傭兵の尋問許可を取るために、
砦での魔物討伐依頼を正式に受諾して話をつけてきた」
「アルバートさんにとって、その方は重要なのですか」
「―――恩人を殺し、故郷を壊した人物だ」
苦しそうに、そして明確な殺意を込めて告げた。
その表情で全てを察して、アリウムは黙って彼の話を聞く。
「賊に攫われ、奴隷となった俺を雇ってくれた騎士団……、
あいつはその騎士団を壊滅させた傭兵の一人だ、
既に襲撃した賊の組織は壊滅させたが、加担した傭兵は他にもいる」
「やはり……復讐のため、なんですね」
「ああ、そのためならば魔物の討伐でも請け負って先に進む」
「理由はわかりました、ですが……私はアルバートさんに無理はしてほしくないです」
「無理をしてでも、通すべき信念がある」
「でしたら、私から一つ約束をしても良いですか?」
「なんだ」
「アルバートさんの身体の現状と、刻印による副作用について、
これからは隠さず話してください、それだけを約束してくれますか」
「―――わかった、善処する」
また一つ、少女と騎士の距離が近付いた。
新たな依頼を前にして、刻印に蝕まれた身体を動かし彼らは向かう。
魔物が大量発生した場所、ゴルド平原へ―――
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