68 / 68
4話 魔を討つ
13
しおりを挟む「来ていたか、さっそくだが始めるぞ」
「ん~……これだけ終わったら」
「シキはそのまま続けながらでいい、アリウムは今回の会議概要をまとめておいてくれ」
「わかりました、記録しておきます」
「―――っへ、随分優秀な部下がいて羨ましいよ技術師、おまけに可愛いときた、
俺のむさ苦しくてバカな筋肉野郎共と交換して欲しいね」
「……そうか」
アルバートは興味の無い返事をして大きな地図をボードに拡げる。
そこには、ゴルド平原の立地を詳細に記した図と、敵勢力の規模と進路を予想したマーカーが記入されていた。
「まず、貴重な時間を使って集まってくれた事を感謝する、
これから説明するのは魔物との戦闘においてのそれぞれの役割だ」
「―――その前に、団長……なぜこの男が今回の作戦を仕切っているのですか」
体格の良い兵士の一人が、アルバートに懐疑的な視線を送り団長に問う。
それは、砦内での彼の信頼と評判からくる不信。
賊を専門とする悪評と不気味な雰囲気を常に纏う彼への牽制でもあった。
「あぁー……お前ら、俺が考えるの苦手なの分かってるだろ?
そこに都合の良い頭の良い奴がいれば頼るのも当然だ、
時間も無い事だ、今は黙って話を聞いとけ」
「しかしっ……!!!」
「―――おい、俺の言う事が聞けねぇのか?次何か言ったら叩きのめすぞ」
分かりやすい力、そして立場。
眼力だけで屈強な兵士を黙らせると、鎧の騎士に一つ溜息をついて団長は返す。
この砦を任された団長は、アルバートを庇う形でこの場を収めた。
それは彼への信頼でも、砦への貢献に対しての行動では無い。
団長は、自身より強い相手への最低限の敬意をはらっただけであった。
「……続けるぞ、今回の砦による防衛戦は部隊を二つに分けて行う、
一つ目の部隊が大軍の対応、もう一つが退路の確保と背後を守る部隊だ」
「なんだと!?我々全員で魔物討伐をするんじゃないのか!!」
「その手段も効果的ではある、だが……仮に全ての人員を使って魔物を倒し、
損耗の激しい状態で更に交戦しなければいけない時、手が無くなる」
「何を言っている?俺達の敵は魔物の大軍だろ?
どうしてそいつらを倒した後の話をしてるんだ」
「―――俺が賊ならば、遠くでこの砦を監視して戦いが終わる頃に攻めるだろう」
「っ!?」
一瞬のどよめきが流れるが、アルバートは変わらぬ姿勢で説明を続ける。
「部隊を二つに分け、退路を確保すると同時に後方からの奇襲を牽制する、
その理由は賊への対策もあるが、最大の理由は魔物を統率している存在だ」
「テメェらも知っての通り、先遣隊から上がっている報告では大軍を束ねる魔族も、
そいつらをまとめる強力な魔物も見えてない、この意味が分かるか?」
「……まさか、団長は人が魔物を動かしていると言うのですか?」
「否定出来ねぇから俺はコイツの話に乗っているんだ、
勇者が魔王を倒してから今まで、大規模な魔物の活動はほぼ無かった、
となると、人為的に引き起こされた可能性も捨てちゃいけねぇだろ?」
「しかしっ……それで魔物にやられては元も子もありませんっ……」
「そうならないように、私達がいます……兵の皆様、
どうかアルバートさんの作戦を信じてください、お願いしますっ…」
未だ不信感が残る兵達に、アリウムが堪えきれずに言葉を投げる。
一人の少女がひたむきに願い、頭を下げる姿に頭の固い兵士達も思わず腕を組んで考え込んで話を聞く。
「―――そもそも、これが俺の杞憂で終わればそれで済む話ではある、
賊も、姿の分からぬ統率者もいなければ単純な退路の防衛が目的になる」
「それでも念を入れて部隊を分けるんだろ?わかった……お前を信じるぞ」
「ああ……誰一人として欠ける事なく、この作戦を成功させる」
その言葉は彼らにとって意外であり、考えもしなかった。
砦の兵には冷徹な殺人者に見えていたアルバートが、ほんの少し優しく映る。
「改めてだが、砦を防衛する本隊を団長が指揮を執り、後方の部隊を副団長に任せる、
人員の選定だが後方部隊を少数精鋭とし、団長が選んだ兵で組んで欲しい」
「あいよ、それなら任せな」
「作戦中の連絡は使い魔を通して行い、何かあれば本隊から連絡する、
戦闘が始まれば砦の兵器を使って迎撃し、残った残党を野戦で殲滅、
大まかだがこれが一連の流れとなる、細かな指示は追って伝えよう」
まとまりつつある話の途中、兵装部品を完成させたシキが飛び上がる。
そして、場違いなほど楽しそうな声で声を掛けた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる