チートレス転生者の冒険記

沼米 さくら

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ゴブリン大討伐・後日談編

眠れぬ夜の冒険者

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 なんか、アリスの様子が変だったな。大丈夫かな。
 もしかして恋に落ちたとか……いや、そこは絶対にないと断言しよう。俺なんかよりかっこいいやつなんか大勢いるし……俺なんて、弱いしダサいしキモいし自己中心的だし、そのくせ下心だらけだし。あんまり誰からでも好かれるような人間じゃないことはわかってる。むしろ嫌われるほうが多いくらいだ。
 まずその可能性は消すとして、それ以外だと風邪……? そうじゃなければいいんだけど。
 会場の中はアルコールと人々の熱気で蒸し暑く、もう日本でいう11月くらいであるということを忘れそうになる。そんな暑さが嫌になって、俺は会場を出た。
 冬に入る前の肌寒さを肌に感じながら、帰り道を歩く。無論、俺を襲ってくるやつらに警戒しながら。
 しかし、町はいつも通りの活気のまま。数日前まで危機にさらされていたとは思えないような感じで、吐いた息は白く、平和を感じさせた。
 やがて、レンガ造りの我が家へとたどり着く。
 ふぁあ。疲れてしまったので、布団を敷いて早めに寝ることにした。

 ……暇だ。何も無い。なのに、眠れない。
 そうだ、本屋にでも行こう。今もらった褒賞金で魔道書でも買おう。
 そう思い立ち、本屋に向かう。
 本屋にはいつも通り、本が多く置いてあった。
 魔道書も多く取り揃えている。その中から一つ、比較的薄い一冊を取って、レジカウンターに持っていく。
「一冊で8000Gです」
 いつも通り、めちゃくちゃ高い。
 ちなみに、今回は基本の6属性の基本的な魔法を収録したものだ。
 収録されている魔法が決まっている分、少しだけ高い。
 火、水、風、土、光、闇の6属性である。
 ちなみに、俺の使える魔法は、回復魔法が光属性、隕石魔法は火、土、風の複合属性で、ほかは無属性だ。
 火や水などは、生活の役にも立つ。煮たり焼いたりするのが楽になるし、綺麗な水を作ることも可能だ。
 本屋にはほかにも多くの本が売っている。
 その中をゆっくり見ていると、面白そうな本を見つけた。
 その名も“ゼロから始める冒険者生活”。
 某ライトノベルに題名が似ていると思ったが、比較的安いし、以前神様からもらったやつには書かれていない情報もあったようなので、購入することにした。

 翌日、本を読んだ。
 買った本は、わかりやすく、面白く、冒険者に必要なことが書かれていた。
 例えば、冒険者カードの使い方、魔法の使い方、装備の手入れのやり方などなど。冒険の手引書としては最適なものだ。1000G分の価値はあったと思われる。
 その中で、“スキルの使い方”というのがあった。
 スキル? なにそれ。……技能の事だよな? もしかしてこういうのによくあるRPG的なやつなのか?

 本当にそうだった。

 SPスキルポイントというものを消費して、冒険者カードの操作で覚えられるらしい。
 ちなみに、冒険者には役割をあらわす“職業”というものがあり、それに沿ったスキル構成が重要だということらしい。
 俺は魔法剣士として登録したので、『剣技』と『魔法威力増加』は必須、必要に応じて、物理攻撃強化や防御などのスキルを獲得していけばいいと書いてあった。
 冒険者カードを見ると、今はレベル34で、保有SPは39らしい。
 とりあえず、剣技スキル、魔法威力増加スキルなどのいくつかのスキルを獲得した。
 そのほか、ゴブリン戦で使い物にならなくなった盾や鎧を、新品のちょっと高くて性能のいいものに買い替えた。
 ついでに剣を一本購入。カイさんからもらった剣と合わせて二刀流……なんて、アニメの主人公の猿真似にしかならないだろうが、少し練習してみることにしたのだ。

 それからしばらくはその二刀流の練習で傷だらけになる日々が続いたのであった。
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