【完結】番である私の旦那様

桜もふ

文字の大きさ
25 / 96

『実家へ帰らせていただきます』と初めて言って(書いて)みた!

しおりを挟む
 私はフェンの体に包まれたまま泣き疲れたのか眠っていたみたい、気付いたらフェンの尻尾が掛け布団のように、ポカポカとしていてとても暖かかった。

「フェン、ありがとう。
 フェンにお願いがあるの、誰にも気付かれないようにわたくしを王宮の自室へ連れて行って欲しいの」

 真剣な目で言うと「わかった」と一言。
 私を背に乗せ素早い動きで森を出て王宮の自室のテラスに着地し、子犬の姿になった。

 一緒に部屋へ入り、羽ペンで『実家へ2~3日の間帰宅します。身勝手な行動をお許し下さい』とだけ書き、学園で勉強するであろう教科書を持ち、地球の自室へ入りドアの前に立ち。

「王族の皆んな、王宮の皆さん……必ず帰って来るので2~3日実家に帰らせて下さい」

 これぞまさに『実家へ帰らせていただきます』だわ!

 お辞儀をし、ドアを閉める前に『あの音が近付いて来てる』事に気付いた。
 その音は、私とオールの鈴の音。

 オールが部屋のテラスへ跳び入り、目が合い涙が流れた瞬間にドアを閉めてしまった。
 オールはあと一歩!  というところで間に合わなかった。


 テーブルの置き手紙を見つけ、手紙を持っている手がブルブル震えている。
 オールはツノを出している。
 怒りの震えや悔しさの震えではなく『この先、ユアが帰って来なかったら』という不安からの震えだ。
 メイド長のテリーゼとメイド頭のアミンが部屋へ来たが、オールが一言「ユアが居なくなった」とだけ言い、置き手紙をテリーゼに渡した。
 テリーゼとアミンは置き手紙を見て即、王様がいる謁見の間へと急いだ。

 暴言を吐いたバードン・スウェール伯爵とエリーナ・スウェール伯爵令嬢は騎士団に拘束され尋問を受けている。

 王のルーヴェンを始め、王妃のメーリア・姉のリアローズ・妹のリリーティア、王宮内の皆は激怒の嵐で誰にも止められない。
 止められるのはユア1人だけ。


 そのユアは、現代(地球)で言うところの『実家へ帰らせて頂きます!』的な?
 まだ16歳でイジメられてた記憶が甦って、地球へと逃げてしまった私、直ぐに戻るのは恥ずかしすぎだよね。
 まあ、置き手紙を置いてきたんだし勉強の時間って事にして、2~3日地球で過ごそう。
 地球にいる間にミーストの勉強しておこう。
 今は駄目でも、次は言い返してやる!
 って、勢いは良いけど勇気が出ない。



「た、ただいま……」

 父と母は驚き。

「どうしたの!」
「何かあったのか?」

 うん、そういう反応だよね。

「ちょっと里帰り? 的な?   ミーストの勉強を集中したいから2~3日の帰宅を貰ったの、えへへっ」

 両親にはバレない様に、バレてなさそう?   だね。

「そうかそうか、何か食べたのか?」
「食べる前に帰宅したからお腹空いた!
 フェンもお腹空いたよね?」

 可愛い子犬の様に『お腹ペコペコ』アピールが超ウマッ!
 寝転がって前足でお腹を触るって、可愛い仕草だけど。
 こんな仕草が出来る子犬は地球にいないよ、絶対にね!

「じゃあ、優愛ゆあとフェンちゃんのご飯はここに置いておくわね」

 朝食は、至って普通のパン・サラダ・目玉焼きにべーコン。
 お母さんが作ってくれた朝食、美味しかったな。


「フェン、部屋に行こう。
 私勉強して来るね」
「おう、勉強頑張れよ」

 頷き、部屋へ戻った。



「フェン、ミーストでは黒髪と黒目は『忌子』って言われてる?」

 今まで誰にも聞かなかった私が悪い!
 フェンは私を見て『黒髪黒目』の事を教えてくれた。

「遥か昔の話だが、魔族側へされたのが『』の男だったと言われている。
 魔法数値が多いほど髪は黒になる、それを伝え聞いてない者が『忌子』と言い出したんだ。
 間違った考えを持つ人間は多い、だが逆に獣人は皆知っている話だ。
 帰っても大丈夫だ。彼奴らが必ず守り助けてくれる」

 フェンに抱きつき。

「うん、そうだよね。
 オールはいつだって私の味方でいてくれた」

 明後日にはミーストへ帰ろう!

 それまでは、勉強して貴族に馬鹿にされない様に頑張ってやるんだ!!
 地球の女を舐めるなよ!
 勢いだけは良い私だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

家を追い出された令嬢は、新天地でちょっと変わった魔道具たちと楽しく暮らしたい

風見ゆうみ
恋愛
母の連れ子だった私、リリーノは幼い頃は伯爵である継父に可愛がってもらっていた。 継父と母の間に子供が生まれてからは、私への態度は一変し、母が亡くなってからは「生きている価値がない」と言われてきた。 捨てられても生きていけるようにと、家族には内緒で魔道具を売り、お金を貯めていた私だったが、婚約者と出席した第二王子の誕生日パーティーで、王子と公爵令嬢の婚約の解消が発表される。 涙する公爵令嬢を見た男性たちは、自分の婚約者に婚約破棄を宣言し、公爵令嬢に求婚しはじめる。 その男性の中に私の婚約者もいた。ちょ、ちょっと待って! 婚約破棄されると、私家から追い出されちゃうんですけど!? 案の定追い出された私は、新しい地で新しい身分で生活を始めるのだけど、なぜか少し変わった魔道具ばかり作ってしまい――!? 「あなたに言われても心に響きません!」から改題いたしました。 ※コメディです。小説家になろう様では改稿版を公開しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...