BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび

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第四十八話





※四十四話を読んだ後だともう少し楽しく読めるかもしれません。
…あくまでかも、です。








ドンッと前に佇む理科準備室の扉はいつもより重く感じて少し尻込みしてしまう。
けどここで逃げたら高城郁真の時の俺と何も変わらない…しっかり今の問題を見据えないと。
扉を開ける前に1人深呼吸をしていると、大原が横から小声で声をかけてきた。







「唯兎、俺らはここで待機して危なそうなら突入って事でいい?」

「うん、お願い」

「おう、安心して行ってこい。俺らが守ってやる」







安心できる2人の言葉に心が一気に軽くなる。
大丈夫、俺は1人じゃない。
よし、と両手に拳を作り気合を入れた後ついに理科準備室の扉をコンコンと軽くノックした。
すぐに中から返事があり、心臓が嫌な音を立てる。
ふーー、とゆっくり息を吐きながら扉をガチャっと開けるとまっすぐ見た先にある机に松岡先生が座っていた。







「なんで呼ばれたか、わかってるね?」

「…昨日の事、じゃないですか?」

「そう、あの行為は教師を侮辱する行為だ。心配した俺を君はまるで犯罪者…誘拐犯のように扱った。つまり簡単に言ってしまえば君はとても悪い事をしてしまったんだ。わかる?」






コツコツ、と机を自身の爪で叩きながら威圧するように松岡先生は俺を睨むように見つめてきた。

かなり身構えてここまで来たけど、なんだ…大した事ない。
高城郁真の方がずっと怖かった。
高城郁真を思い出せ…あの人はもっともっと…俺を殺さんと言わんばかりに睨んできた。
それに比べて先生はどうだ、睨んではいるもののその中に殺気はない。

いける、そう確信して俺は先生に口を開いた。







「わかりません、俺は先生の家には行きたくない。やめて欲しいとはっきり言いました。それなのに無理矢理家に連れ込もうときたのは先生ですよ」

「具合の悪い生徒が行きたくない、と言った結果どこかで倒れたら教師の責任になるだろう。唯兎くんはそんなに先生を悪者にしたいのか?」

「悪者にしたいのではなく、悪者なんですよ。先生がした事は俺から見たら誘拐未遂、犯罪です。それなのに俺が悪いなんて押し付けにも程があると思いますよ」








はっきりと否定の意を示すと、先生はガタッと椅子から立ち上がると乱暴な足取りで俺の方に近寄ってきた。
あまり近寄られても嫌だ。何をされるかわからない。
俺は素早くポケットからスマホを取り出すと、ある動画の音声を流し始めた。







《…どうしたの?大丈夫だよ、俺独身だから奥さんが家にいるなんてことないから》

《いや、俺家に帰ります…あの、兄さんにも連絡入れちゃったし早く帰らないと》

《少し休むだけだよ、このまま返すのは心配なんだ。何かあってからじゃ遅いんだよ、このまま返して君に何かあったら誰の責任だと思う?はいさようならって返した俺の責任になるんだ。唯兎くんは俺に責任を負って欲しいの?》

《…俺大丈夫なんで、特になにもないから》









ポケットの中から録音したそれは昨日の俺と先生の会話だった。
前の世界で学んだ事はいつでも録音ができる状態で外に出る事。
何か危ない事や自分が危険視している人物と会ってしまった場合、すぐに録音を始める事だった。

高城郁真と対峙している時に必要だった事、後々であの時証拠を残せていたらと何度も後悔した結果今それが役に立っている。
俺はもう、あの時のように泣いて従うような事はしない。
自分で出来ることを増やさないといけない。

キッと先生を睨みながらスマホの画面を見せると、不気味なくらいな無表情が俺を見下ろしていた。
なんで?これを学校に提出したら困るのは絶対先生の方…それなのにどうして全然動揺してないんだ…。
全く動じることのない先生につい俺の方がオロついていると、その隙をついて一気に距離を詰めて手を伸ばしてくる。
ヤバい、と思い反射的に目を強く瞑るとドンっという大きな音と共に背中当たるあたたかい手が俺を支えてくれる。






「せんせー、黙らせたいからって力でなんとかしよーとしたらダメなんじゃないですかー?」

「今のも全部録画しました。先生が唯兎に何かしようものならすぐに学校、そして警察に届け出ますが…どうしますか?」







俺の左右を固めるように立つ大原と桜野は俺の背中を支えながら松岡先生を強く睨んでいた。
俺に手を伸ばしていた先生は桜野に強く押され、その反動で倒れ込んだらしく床に尻餅をついていた。






「お前ら…っ、教師にこんなことをしていいと思っているのか!」

「じゃあ先生は生徒を誘拐してもいいですか?先生は生徒を傷付けてもいいんですか?先生は何様なんです?そもそも新人教師なんてそこまで信用されてませんよ、俺たち生徒が貴方のことを校長に伝えればすぐに対応してくれると思います。証拠だって音声と動画両方あるんですから、逃げることなんて出来ませんよ」







スマホのカメラ部分を先生に向けながら冷たく言い放つ大原に、先生は文句を言おうと口を開くが何を言っても録画されている今は何も出来ないと判断したのか大人しく口を閉じた。
俯いて何も言わなくなった。







「…唯兎、どうする?この動画と音声校長に提出する?」

「……いいよ、何もしなければ。ただ次は全部まとめて提出します、それが困るならもう構わないでください」







俺の顔を見ることもなくコクンと頷いた先生に大きくため息を吐き、2人と共に理科準備室を出た。
そのままの足で学校から出ると、そういえば…と大原の制服をちょんちょんと軽く引っ張る。







「そういえば、いつから録画してたの?」

「ん?してないよ、録画なんて」






そう言いながら俺にスマホの画面を見せてくる大原に首を傾げながら画面を見てみると、フォルダの中には確かにさっきの動画が残っている様子はなかった。
じゃあなんで録画してるなんて嘘を?と大原の顔を見ればクスッと笑いながらスマホをポケットの中にしまった。








「ああいう大人は証拠を怖がるから。だから唯兎が録音した音声流した時かなり焦ってたんだよ、あの人。でも何もないふりをしてたのは唯兎の隙をついてスマホを奪いたかったから。奪っちゃえばその音声を消せるでしょ?」

「でもその録音のデータが他のもので残ってる可能性もあるよね」

「そこまでは考えてなかったんじゃない?昨日の今日だし、そもそも唯兎が証拠を持ってるなんて想像もしてなかったんでしょ」






バカだよね、なんて言いながら足を進める大原は俺のために証拠を持ってるなんて危険な事をしてくれたんだ。
もしかしたら先生が諦めず、大原に襲いかかった可能性だってあるのに…。

そう思うと、嬉しさの反面申し訳なさが生まれ少し鼻がツンとする。
そんな俺に気付いたのか、大原は俺の頭を数回撫でた後ポンっと背中を叩いた。







「そんなことより、カフェ行くんでしょ?案内してよ」

「そうだぞ!俺らどこにあるのか知らねーもん!」







そう先を歩いてた桜野が勢いよく振り向いて俺達の隣に並び直すと早く早くと急かされて思わず笑ってしまった。
バカにされたと思ったのか桜野がむくれてるけど、違うよ。
本当、好きだなって…大好きだなって改めて思ったからつい笑いが出ちゃったんだよ。
笑いすぎて涙の滲んだ目尻を軽く撫でると、2人の背中を押しながら前に進んだ。

























2人を引き連れて深緑を目指すと、前に店内で見かけたおじさんがバタバタと横を走りながら通り過ぎていった。
あの人って、藍田さんのお父さん…だよね?
焦った様子で走り去っていったため、どうしたのかなんて声をかけることも出来ず見送ると、深緑の前には藍田さんが周りをキョロキョロと見回しながらスマホを片手に立っていた。






「藍田さん、どうしたんですか?」

「…お前か、丁度いい。うちの爺さん見なかったか?」

「……お爺ちゃん…?いえ、見てないですけど…どうしたんですか?」






見てないと答えたらそうか、とだけ返してまたスマホを見る藍田さんに追求するために更に声をかけた。







「…うちの爺さん、認知症でな…。いつの間にか家を出て行っちまってからどこにいるかわかんねーんだ」

「それって時間どのくらい立ってるんです?」

「…朝からだよ、10時間近く立ってる。警察にも連絡してあるんだがまだ見つかってない」






10時間という数字に驚きすぎて声が出なかった。
あのお爺ちゃんが認知症だという事実にも驚いたが、そんな長い時間行方知れずだなんて…。

店を開けているのも、この店が大好きだったお爺ちゃんがひょこっと帰ってくる事を考えての事らしく店での待機と周りの捜索をお父さんと交互にやっているそうだ。

俺も…探しに行きたい。
そう思って2人に目を向けると、2人も同じ気持ちだったようでコクンと頷いた。






「藍田さん、俺たちも探しに行ってきます」

「いい、お前らには関係ない」

「関係あります。俺、この店に…お爺ちゃんに沢山助けてもらいました。落ち込むことがあった時この店に来ると凄く落ち着けたから、だから俺も何かしたい。させてください。ていうか勝手にやります」








止めようとする藍田さんの手をすり抜けてカフェから離れると、後ろから大原の声で「連絡待ちしてるー」と聞こえて後ろ手で振りながら桜野ととりあえず近くの公園を目指した。
そっか、俺ら3人で行動しても藍田さんの連絡先知らないから見つけた時に連絡出来ないよな…すぐそれに気付くなんて流石は大原。

そう脳内で褒めちぎりながら公園、スーパー、通学路などなどいろんな場所を見て回ったがお爺ちゃんらしき人はいなかった。
…いったいどこに…そう思いながら桜野と次どこに行くか相談していると近くを通った小学生が気になる事を話していることに気付く。






「あのおじーちゃん、なんでブランコから離れなかったんだろーね?」

「ブランコ好きなんだよ!あたしはボールで遊ぶ方が好き!」

「えー!やっぱり縄跳びだよ!」

「ちょ、ちょっと待って君たち…!」






そう話しながら俺たちの横を通り過ぎて行く小学生達を慌てて呼び止めると、小学生達は驚いたように俺たちを見上げる。
急に声をかけたことを謝り、詳しい事を聞いてみるとその子達はこの近所にある小学校の子達だった。
今日は学校は休みなのだが、宿題を学校に忘れて取りに行ったのだそう。
そして、校庭のブランコに1人のお爺ちゃんが座っていて全然動こうとしてくれなかったと、あの子達は話していた。

もしかしたらお爺ちゃんかもしれない。
俺と桜野はその小学校に向けて走って向かうと、外からでもその姿が確認出来た。
…お爺ちゃんだ。
ブランコをゆらゆら揺らしながら空を眺めているお爺ちゃんがそこにはいた。
大原に見つけた事と場所を伝えて正門を潜ると、ひとまず校舎に入って事情説明をする。
そうすると先生達は気付いていなかったようで、一緒にブランコまでついて来てくれることになった。

ゆっくり近寄って行くと、お爺ちゃんが何かを話している声が聞こえてソッと立ち止まる。







「…たつこさんとも沢山遊んだよねぇ。ほら、たつこさんはブランコ好きだったでしょ?」







誰かと話しているような様子だが、当然のことながら目の前には誰もいない。
…これも、認知症の症状なのかな…。

そう思いながら止まっていた足を再び動かし始め、お爺ちゃんの目の前まで歩いて行く。






「…お爺ちゃん」







そう呼ぶと、どこか別のところを見ていたお爺ちゃんの目は俺を捉え優しい目が笑みを浮かべる。
ああ、お爺ちゃんはやっぱりお爺ちゃんだ。
認知症でも覚えててくれる、そんな優しいお爺ちゃん。

変わらないお爺ちゃんの笑顔にホッとして藍田さんが探していたことを伝えようと口を開いた瞬間。






「誰かな?ブランコ乗りたいの?」







そう、変わらぬ優しい声色で俺にそう言った。
いつものように[唯兎くん]と呼んでくれる事を期待していた俺の足は再び固まり、声を出そうとしていた口はそのままの状態でお爺ちゃんを見つめていた。

…認知症は、物忘れが多くなる。
新しいことが覚えられない、今日がわからない。

そういう、記憶力の低下や認識力の低下…日常生活に支障が出てくるものもあると前に何かの本で読んだ気がする。
止まったまま動かない俺を心配そうに、優しく目を細めるお爺ちゃんは…見た目何も変わっていないのに全然違う人のようで、お爺ちゃんを前にして泣きそうになった。







「…っ、お爺ちゃん。帰ろう?」

「帰るの?もうお昼?」

「…うん、お昼。探してたよ、帰ってご飯にしよ」






今はお昼などではない。
けれど、今は否定をしてはいけない気がしてお爺ちゃんの言葉全てに頷いた。






「また遊びに来ていいかなぁ?」

「うん、また来よう」

「たつこさんもおうち帰った?」

「うん、帰ったよ」

「帰ってご飯かな」

「そうだね、ご飯だ」






うん、うんと続ける俺にお爺ちゃんは楽しそうに話を続ける。
同じ話題が何度も続く。
今お昼かな?ご飯かな?そういえば今お昼?お腹すいたね、お昼かな。
そう、何度も何度も繰り返される同じ話題に認知症というものを手で触れた気がした。

そういうものなんだね、認知症って。

離れないように、はぐれないようにお爺ちゃんの手を繋ぎながらカフェに向かっていると前から藍田さんが息を切らせて走り寄ってきた。






「爺ちゃんっ!」







そう大きな声でお爺ちゃんを呼びながら走り寄ってくる姿は本当に、心の底から心配していたと言っているようで…見つかってよかったと、俺自身とようやくホッと一息つけた気がした。

その後、お爺ちゃんは藍田さんのお父さんに連れられて家に帰り怪我がないか確認するそうだ。
昨日見た時は気付かなかったが、藍田さんのお父さんの目元はかなり暗く、隈が酷くあった。
眠れていないであろうことは目に見えてわかるその姿に心配していると、大丈夫だよ。と藍田さんに似た声でそう言われた。








「…ありがとな、お前らがいなかったら明日まで見つからなかったかもしれない」

「いえ…外は暑いですし、体調悪そうだったらすぐ病院連れて行ってください」

「当然だ、爺ちゃんの事はもう大丈夫だからお前らはこれ以上気にしなくていい。コーヒー飲めるなら淹れるけど、甘い方がいいか?」







藍田さんにお礼のサービスとしてコーヒーを淹れてもらえる事になったのは嬉しいが、お爺ちゃんが気になりすぎて素直に喜べない。
それぞれ好みの味を伝える大原と桜野に藍田さんが相槌をしているのを見ていると不意に藍田さんの手が俺の頭をポンッと撫でた。







「…気にするなって言っても無理だと思うが、ここから先は家族の仕事だ。お前は外から爺ちゃんを見守ってやってくれ」

「…たまに、お爺ちゃんに会いに来てもいいですか?」

「その時に爺ちゃんが店にいたらな。店に来る時連絡してやる、連絡先寄越せ」







さも当たり前のようにスマホを取り出す藍田さんに俺の身体はピシッと固まる。
俺の…連絡先…?

慌てて大原の方に目を向けると、大原の眠そうな目も俺の方を向いていた。

が、ん、ば、れ

そう口パクで伝えてくる大原に俺は更に頭を抱える事になる。
頑張れったって、連絡先の交換なんて…前の時とは状況全然違うんだよ!?
前はバイトとして連絡先交換したけど、今はただの従業員と常連…それで連絡先交換て…交換って…!

なかなかスマホを出さない俺に藍田さんは不思議そうにしていたが、急かすような事はしなかった。
…よし、覚悟は決まった…連絡先…連絡先…。






「れ、れんらくしゃき交換お願いしぁす…っ!」







盛大に噛んだ。

わざとじゃない、本気で噛んだ。
なんなら舌がジンジンして痛いまである。

あぁ、もう…
舌は痛いし、恥ずかしいし、大原も桜野も笑うの我慢してピクピクしてるし…最悪だ。
スマホを両手で差し出す形で固まっていると、そのスマホを上から掬い取られそちらに目がいく。







「…ははっ、じゃあ俺の連絡先入れとくわ」







小さいながらも笑いながら俺のスマホを操作する藍田の笑顔に、恥ずかしさも忘れて完全に目を奪われてしまった。
貴重だよ、藍田さんの笑い声も…笑顔も…。

ポーッと見つめていると、それを見ていた大原と桜野がニヤニヤしている事に気が付いて意識を顔に持っていき、気を引き締める。
そんな姿も面白かったのか、藍田さんの頬も緩んだまま俺にスマホを返してきた。

恥ずかしくて…爆発しそう…。

俺は慌ててスマホを受け取ると、頭を下げて持ち帰れるようにテイクアウト用カップに入れてもらったカフェラテを持って店ので入り口に向かった。






「…またきます!」

「おー、また来い」







俺はもう一度頭を下げると、大原と桜野と共に店を後にした。
言葉を噛んだ事で熱くなった顔をパタパタ扇ぎながら歩いてると、大原が隣に並んで

「頑張ったじゃん」

と、満足げに笑っていた。

何をどう頑張ったのか、なんかよくわからなかったけど…頑張れていたならよかった。
なんだかまた気恥ずかしくなり、ヘラッと笑うとカフェラテを一口飲んだ。

うん、いつもの…大好きな優しい味。

俺は冷たいカフェラテを両手で抱えると、空を見上げた。
また…もっとがんばろう。

そう誓いを立てるよう、俺はもう一口カフェラテを飲んだ。























家に帰ってきた俺がまずやる事は、散らかった部屋の掃除からだった。思わずため息が出てしまう。
爺ちゃんは今まで出来ていたことが何も出来なくなり、無理に自分でやろうとして周りを散らかしてしまう。
それ自体は仕方ない、歳なんだ。
いつかはみんな通る道、仕方ない。

そうはわかっているのだが…疲れが取れない、しんどい。
けど、やらないといけない。
自分がやらないと爺ちゃんは死んでしまう。
そう思うと、手を抜くことなんて出来ない。

再度出そうになった溜め息をグッと飲み込んで我慢すると、他の部屋からガチャーンっと大きな音とともに男の怒鳴り声が聞こえてきた。
俺が慌ててそちらに行くと、ベッドに座りながら困り顔をしている爺ちゃんと息を切らした父さんが立っていて、落としたであろうお盆や食器が床に散らばっていた。





「いい加減にしてくれよ親父!!何度も何度も同じ事繰り返しやがって、なんなんだよ!!」

「…父さん、落ち着け。爺ちゃんはなりたくてそうなったわけじゃない」

「うるせぇ!!わかってんだよんなこと!わかってるから今まで我慢してきたんだろうが!!」





目の下に隈を拵えた父さんは俺に対しても怒鳴り、もう全てが信じられないような顔で爺ちゃんを睨んでいた。
俺はそんな父さんを部屋から出すと、今まで考えていたことを口にする。






「…父さん、俺が爺ちゃんの面倒見るから。もう家帰っていいから」

「何言ってんだよ…お前だって…っ」

「諦める。仕方ないだろ、元々爺ちゃんのものだ。それを返すだけだろ」

「けど…お前…」





俺は荷物を父さんに持たせると、玄関まで背中を押して行く。
なかなか帰ろうとしない父さんに、あまり得意ではない笑みを見せた。





「…いいんだよ、少しだけど夢を叶えてもらったんだ。今度は俺が返す番だろ」








 



















「次の店の更新の時、店を畳む。その時間と、今までの金で俺は爺ちゃんに恩返しするよ」













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