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小話まとめ
しおりを挟む※Pixivにて投稿している時、たまにキャプション(説明文)で遊んでいた小話です。
その場の気分でサッと書いたものたちなのでストーリーに直結するものはありません、気楽になんとなくで読んでください。
【31話キャプション】
唯兎「ここ、どこ?」
俺は今、草原の中に1人ぽつんと佇んでいた。
周りを見渡しても誰の姿もなく、さっきまで一緒だった兄さんでさえ見当たらない。
唯兎「どういう…だって、さっきまでちゃんと家に…っ」
震える身体を抑えながらその場から動けずにいると、近くにある草がカサッと音を立てた。
その音にすらビクッと身体を震わすとそこから出てきたのは一羽のウサギ…のような動物。
その姿はよくゲームで見るような、ウサギにツノが生えている雑魚モンスターにも見えた。
そのウサギのような生物は俺に気付くや否や、猛スピードで突進をしてきた。
唯兎「ヒッ、うわぁっ!」
咄嗟にその場にしゃがみ込むと、俺がいた場所をそのウサギがとてつもないスピードのまま通過する。
通過したばかりのウサギは軽快なステップでその場の地面を蹴ると、再びしゃがみ込んで動けない俺に突進してきた。
唯兎「ぁ、ぁ…っ!うわあぁぁああっ!」
照史「唯兎!唯兎!?大丈夫!?」
唯兎「はっ!」
ソファに横になったまま寝落ちしてしまったのか、俺はボロボロと涙を流しながら両手で自分の顔を覆うような体制で兄さんに声をかけられていた。
…今のは、夢…?
照史「大丈夫…?かなりうなされてたから、こんなに泣いて…どうしたの?」
唯兎「兄さん…っ!俺、ファンタジーじゃなくてよかった…!」
照史「…ファンタジー…?」
[完]
【39話キャプション】
「ゴホッ…、ゴホッ」
苦しげに咳をして自然と出て来た涙をタオルで拭いているのは俺、七海唯兎。
今日本当なら大原、桜野、皇の3人と一緒に放課後本屋に行ってからスカラに行って遊ぶ予定だった…のに、朝から俺は38.0度超える熱を出していて動けずにいた。
身体の節々は痛いし、咳はしんどいし、熱いのに寒い。
まだ熱は上がるのかな…なんて思いながら少しだけ身体を起こして兄さんが用意してくれたピッチャーを傾けてスポドリのおかわりをしようとした。
けども中にはもう何も入っていないのか、求めていた飲み物は何も出てこず中に残った氷だけがカランっと悲しく音を立てた。
「…っ、ごほっ…はぁー…」
求めていた冷たい飲み物が近くにないという事実、それだけで大きく疲れてしまい起こしていた身体から力が抜ける。
リビングに行けば冷蔵庫の中に別で作ってくれたピッチャーがある筈だがそれを取りに行く元気もない。
もう寝てしまおう。
なかなか眠れないという事もあり飲み物を求めたのだが、飲み物を飲むという選択肢がなくなった今眠る以外やる事がない。
なんとか眠れるようにと目を閉じてモゾモゾと身体を眠りやすい体制に動かした。
他にできる事がないと身体も理解したのか、先程までなかなか眠れなかった筈の身体は不思議と眠る体制を作り熱に浮かされた頭がボヤーッとフラフラする感覚と共に睡魔が訪れる。
眠りについた俺の身体は完全に脱力し、自身の身体を休める為だけに努めた。
眠り始めてからどのくらい経ったのか、なんとなく騒がしい気がしてフと目を開ける。
「あ、唯兎。平気か?」
「飲み物飲める?今大原がお粥あっためてくれてるからね」
「…ごほっ、桜野…皇ぃ…?」
寝ぼけ眼で2人を見上げると優しく笑いながら身体を起こす手伝いをしてくれる。
眠る前まで求めていた冷たいスポドリを持って来てくれたらしく、コップを口元に当てられゆっくりと口の中に含んだ。
熱で熱くなった口腔内が冷たいソレで冷えていくのを感じ、気持ち良くてホッと小さく息を吐いた。
横を見ると空になったピッチャーはリビングに持っていってくれたのか、冷えたピッチャーが新しく置いてある。
涙や汗を拭いていたタオルも新しくなっている事からそれも洗濯機に持っていってくれたのだろう、何から何までやってもらってしまい申し訳ない。
「唯兎、お粥温めてきた。あとりんご。少しでもいいから食べて薬飲もう」
「…大原、ありがと…」
ゴホッと咳をしながら大原が持って来てくれたお粥を受け取り、レンゲで食べようとしたらそのレンゲを皇に取られてきょとんとしてしまう。
「ふー…ふー…唯兎、あーん」
「そ、そのくらい自分で食べられるよ」
「いいから、ぼくがやりたいの。あーん」
ニコニコと俺にお粥を食べさせようとする皇に苦笑しながら一口くちの中に入れると温かく、優しい塩の味と卵の味が口の中に広がる。
これなら、もう少し食べられそう。
それを感じ取ったのか皇が再びふー、ふーと少し冷ましたお粥を俺に向けてくれる。
ゆっくりと食べ進めていくと、3人で持って来てくれたというりんごを食べたいな…とジッと見てしまう。
それは擦ったりんごに蜂蜜をかけてあるのか、りんごの上にはほんのり黄色がかった何かが掛かっていた。
「それ、蜂蜜少しかけたからよく混ぜてから食べさせてやって」
「はーい」
カチャカチャとりんごをよく混ぜた皇が、お粥の時と同じように俺に口に運んでくれる。
それを口に入れると程良い甘さのあるりんごが俺の疲れた身体を包んでくれるような、ホッとする甘さがあった。
自然と頰が緩む感覚があり、それを見た大原が美味いか?と優しく頭を撫でてくれる。
コクコク頷きながらもう一口、と口を開けると皇もクスクス笑いながら俺の口に新しくりんごを入れてくれた。
それを見ていた桜野が
「…大原と皇、なんか唯兎の父ちゃんと母ちゃんみたいだな」
なんて言うと皇が即否定していた。
お粥もりんごも無事食べ終わり、意外とお腹空いてたんだな…なんてお腹を摩っていると皇に水が入ったコップを渡される。
「はい、薬。ちゃんと飲んでね」
「……はい」
錠剤ならまだしも、粉薬が目に入りわかりやすく眉間に皺を寄せてしまった。
大原が気持ちはわかるけどな、なんて言いながら薬の袋を開けて俺に渡してくれる。
粉薬って上手く飲めないし、苦いし…苦手なんだよな…。
でも飲まないと早く良くならないよな、と覚悟を決めて薬を一気に口に入れて間髪入れずに水を飲み干した。
「…ごほ、うぇ…」
「よくがんばりました。ほら、飴」
薬の苦味に舌を出して嫌な顔をしていると、それがおかしかったのか大原が微笑ましげに笑いながらくちの中に飴を入れてくれる。
ただののど飴だったが、薬の味で苦しんでいたからのど飴でもとても有り難い。 カラッと口の中で飴を転がすと、ほんのり甘くて頰が緩む。
「あれ、みんな来てたの?いらっしゃい」
いつの間にか帰って来ていた兄さんが俺の部屋に入って来て俺の額を触って熱を確認する。
まだ少し熱いのか、心配そうに頭をひと撫でして一度離れる。
「唯兎はお昼ご飯今食べて、薬も飲み終わりました」
「ありがとう、助かったよ。みんなはお腹空いてない?何か作ろうか?」
「あ、じゃあぼく手伝います…!」
みんながお昼、お昼と話し始めたため時間を確認すると13時を過ぎた頃だった。
なんで3人はこんな早い時間に帰ってこれたんだ?なんて不思議に思っていると、それに気付いた大原が答えた。
「今日全教室のエアコンの清掃が入るから午前で終わりって先生言ってたろ?」
「…だっけ?」
「まぁ熱出てたから、それで飛んだのかもな。横になってもいいぞ」
大原の優しい声に甘えて再び横になると、ご飯や薬だけでも結構体力を使ったのか横になっただけで眠気が強くなりウトウトとしてしまう。
それに気付いた大原が俺の額に新しい冷えピタを貼り頭を撫でていく。
「寝てろ、みんなには言っとく」
「…ありがとぉ、おおはら…」
既に目が開かなくなっている俺は目を閉じたまま大原にお礼を言うとおー、と優しい声が返ってくる。
そのまま静かにパタン、と扉が閉まる音がして大原も部屋を出たことを感じる。
ほんの少し、寂しさを感じるがリビングから聞こえてくる大好きなみんなの声が聞こえてくる。
それだけでも嬉しくてモゾモゾと身体を動かしてしまう。
午前中しんどかった筈の身体は、薬のおかげか…みんなのおかげか。
かなり楽になった気がする。
「…ありがと…」
布団の中で呟いたその言葉は下の階にいるみんなには聞こえないが、ただ口にしたかった。
優しくて大好きなみんなに、大きな感謝を。
すー…と寝息を立てながら大好きな人達のことを考えて、幸せを感じた。
【40話キャプション】
「……んー…」
「大原?どした?」
ペラっと漫画を読んでいた手を止め、ジッとスマホを見つめる大原に桜野は目を向けた。
そんな桜野に気付いた大原はもう一度んー…と声を出してからスマホの画面を桜野に見せる。
「…ジェイ、ポリス?」
「そう、室内型のアミューズメントパーク。これに俺の好きなホラーゲームのコラボがあるんだよ」
大原が見せた画面には大きく『ジェイポリス』と書かれたサイトに人気ホラーゲームのコラボ告知がされていた。
そのゲームはスマホゲームで、確かに最近大原がハマっていたな…と桜野は思い出す。
単純にゾンビを銃で撃ち抜いていくゲームだが、ストーリー性もありタイムアタックやフレンドとの協力もありハマりだすと抜けられないと話題だった。
「このキャラ、俺がよく使ってるキャラなんだけど…どうせなら欲しいんだよね」
ゾンビがいる世界とは思えないようないい笑顔をした割とガッチリした体型の男キャラのグッズを見せながらでもなー、と唸る大原に桜野は首を傾げた。
「何そんな悩んでんだ?」
「1人で行くにはちょっとなぁ、かと言って転売ヤーからは書いたくないし」
「俺がいんじゃん」
大原の普段やる気のないような顔がうっすらと驚きに染まる。
自分が持ってるスマホと桜野の顔を見比べながらコテン、と首を傾げては再びスマホと桜野を見比べる。
ソワソワと落ち着きがなくなった大原に桜野は実は自分とは行きたくないのでは、なんてほんの少し。本当にほんの少し不安に思ったがそれもほんの一瞬。
大原は少しだけ頬を染め、照れ臭そうにスマホで自分の顔を下半分隠した。
「…ランダムのグッズ、手伝ってくれる?」
「おー、俺の運分けてやんよ」
「…朝から行ってもいい?」
「いいんじゃね?起こしに来てくれな!」
「……2人で行ってもいい?」
「お?おー、いいぞ」
一通り質問した大原は嬉しそうに行く日程の話をし始めた。
どうして2人がいいと言ったのか、桜野には通じてなんていなくても2人で出掛けられる事実が嬉しい…と大原は当日の予定に胸のときめきが止まらなかった。
【41話キャプション】
カチャカチャ…
とある日のバイト中、食器が鳴らす優しい音が店内で唯一音を鳴らす。
微かに聞こえる程度のBGMは心を穏やかにし、お客さんの入っていない店内で欠伸を誘うには十分すぎる心地よさだ。
「……ふぁ…ぁ…」
「おい、せめて欠伸隠せ」
「あ、すみません」
反射的に謝るも、やっぱり眠気は収まらずカチャカチャと鳴る食器やカップを眺めながら再び大きな欠伸をした。
「……まぁ、いいか。今客もいねーし」
「…藍田さん、カフェオレって飲んじゃだめですか?」
「仕方ねーな、淹れてやっから待ってろ」
カウンターに突っ伏しながら止まらない欠伸を続ける俺の頭をポン、と一つ撫でてカフェオレの準備をする藍田さんに俺の目は奪われる。
この感情はゲームでもあった七海唯兎の感情だ、そう教えてもらったけど…それでも俺のこの煩い胸は今現在も煩く鳴っている。
この胸の高鳴りが、七海唯兎の物だとしても…不快ではない。
むしろ、藍田さんと2人きりでドキドキしている時間が…俺は好きだったりする。
「…激甘にすっか?」
「いつもの量でお願いしまーす」
くふくふ笑いながらカフェオレを待っている俺におしぼりを渡す藍田さんはついでと言わんばかりに一つ俺の頭を撫でていく。
その優しい温もりが、俺は…好きなんだと思う。
「…藍田さん」
「あー?」
「………なんでもないでーす」
なんだよ、なんてぶっきらぼうに言う藍田さんの声に嫌がってる色はない。
ただ優しい藍田さんの全てに、俺はきっと七海唯兎とは関係なく…そういう想いを持ってるんだと思う。
「藍田さーん」
「…殴られてーか?」
「暴力反対でーす」
くふくふ笑いながら過ごす穏やかな時間を、大事にしたい。
【42話キャプション】
「…ぱぱ?」
「ん?どうした、唯兎」
俺の可愛い息子。
長い間あの女に酷いことをされていたにも関わらず、擦れることを知らないまま可愛らしく育っている。
小学1年生に上がり、友達も出来たようだ。
そして友達が他の子に嫌なことをしようとしたら「ダメだよ」と教えてあげたらしい。
「ダメだよ。あのね、ぶったら痛いんだよ。ずーっと痛いの。かずくんがぶったのずーっとのこっちゃうんだよ。かずくんもそんなのいやでしょ?」
そうやっていけないことをしようとした友達にいけないことだと教えてあげていたと小学校の先生からの連絡で知らされた。
唯兎はきっと、あの女から与えられた痛みを今もずっと抱えているのだろう。
だから友達にもそれを教えてあげることができた。
そしてそれは、俺の罪でもある。
「ぱぱー」
「なんだ唯兎、甘えたさんか?」
「あまえたさんだよぉー」
くふくふと笑う可愛い息子。
この子が痛みを忘れられないのは俺のせいだ。
だからこそ俺は…この子のために全てを投げ出してでも守らねばならない。
大事な大事な、誰よりも優しい息子。
誰よりも可愛い息子。
「ぱぁーぱ」
「…唯兎ぉー、大好きだぞ」
「んふふ…ぱぱだぁいすき」
小さな身体を自身の身体で包みながら、大切な身体の温もりを感じた。
【44話キャプション】
「怜くーん、お母さん先出るから戸締りお願いねー」
「はーい、いってらっしゃい」
ぼくより一足先に仕事へ向かうお母さんに挨拶をすると、ぼくもそろそろ出ようかなと自室の時計をチラッと見てみる。
ぼくと唯兎、そして照史先輩が通う聖心高校は電車に乗って向かうため変に早く出ても電車待ちの時間が長くなって少し失敗したような気持ちになる。
どうせ座れないんだし、それなら電車待ちの時間を少しでも少なくしたいよね。
鞄を持って家を出ると、お母さんに頼まれたようにしっかりと戸締りをして駅に向かって歩き出す。
駅で電車に乗って数駅、降りる駅では同じ制服を着た学生が多くいて目的地がみんな同じであることを示してくる。
スマホで時間を確認してみると、お母さんから「帰りは遅くならないように」と連絡が入っていてそれに軽く返事を返す。
息子の見た目が可愛いからお母さんも心配になるよね、ごめんねぼく可愛くて。
返事を返してスマホをポケットに入れるとトンっと誰かがぼくの肩を叩いた。
誰?とほんの少し眉間に皺を寄せて睨むようにそっちを見ると、そこには大好きなあの子がコテン、と首を傾げて不思議そうにぼくを見つめていた。
「おはよ、皇不機嫌?」
「おはよ唯兎!唯兎なら不機嫌になんてならないよぉ!」
「そう?じゃあ一緒に教室行こ」
うん!と自然と弾んだ返事が自身の口から出てくる。
唯兎の腕に抱きついて歩き出すと「歩きにくいよ」と苦笑しながらもぼくの腕を取ろうとしない唯兎の優しさにぼくの頬は更にゆるゆるになってしまう。
ぼくは唯兎が大好き。
それは恋心とかではなく、友人として大好き。
優しくて、自分より周りを優先してしまう唯兎。
酷いことをしてしまったぼくを責めることなんてせず、全てを許してくれた唯兎。
ぼくはそんな優しい唯兎が大好き。
だからぼくは唯兎といる。大好きだから。
「…照史先輩の弟って言っても全然似てないよね」
「ほんと、ただのぶ…す…っ」
ぼくは自分の顔が[可愛い]って[好かれてる]って知ってるから。
だからぼくは唯兎と一緒にいる。
だって、ぼくが強く睨むとソイツらは黙るんだ。
ほら、そこでナニかを言っていた奴らだって少し強めに睨んだだけで黙っちゃう。
「…皇、やっぱり機嫌悪い?」
「違うよ!唯兎と一緒にいられて逆に上機嫌!」
「そう?何かあったら俺に相談してよ?」
…優しい優しい唯兎。
ここには大原も、桜野も…照史先輩もいないからぼくがしっかり守ってあげる。
自分の顔を[使って]唯兎を守るよ。
「えへへ、唯兎だあーいすき」
「なに急に、俺も皇が大好きだよ」
ギュッと抱きつくぼくにくすぐったそうにくふくふ笑うこの子を、誰にも傷つけさせないために。
……お前らは黙って指咥えてみてろ。
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