木瓜

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夕景の依頼人

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そんな中、やっと訪れたと思ったお客さんは、喫茶店の利用ではない上に、その相談内容も、二階に設けた事務所が掲げている目的とは、かなりずれたものだったため、些か肩を落としてしまうのも、無理はない。

「そもそも、どうやって、ここの事を?あなたの学校からは、かなり分かりづらい位置にあるし、学生さん自体、ここを利用したことはないのだけれど」

「美咲ちゃんから、聞いたんです…。悩み事があったら、ここに行ってみるといいって」

―あの子か…。

美咲ちゃん。

恐らく、先週うちの事務所を訪れた少女だろう。

そういえば、その子も、今の依頼人と同じ制服を着ていた。

その美咲ちゃんは、初日に訪れたおばあちゃんのお孫さんだそうで、おばあちゃんからどのように伝え聞いたのかは知らないが、『居なくなったペロちゃんを探して欲しいんです』と、泣きそうな顔で、私に頼み込んできたのだ。
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