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少女は白い菫に夢を見る
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しおりを挟む「あいつは?元気してる?」
「あ、はい…。元気に、してます」
私の言葉に、葵は、そう、とだけ呟く。
「今日は、何の用?ここは、君みたいな子が来るところじゃないんだけど。あいつだって、君に、ここには来ないように、言ってたよね」
「…買いに、来たんです」
「買いに?何を」
「…薬を」
私の言葉を聞いて、葵の表情が一変した。
「…帰りな。今なら、何も聞かなかった事にしてやる」
厳しい表情のまま、葵が顎で、後ろの扉を指す。
「茉莉ちゃんが飲んでるところを、前に、偶然見たんです。
ここの、ロゴが入った錠剤を」
―ここじゃない、どこか、遠くの所へ行けるの。
そこは、とても、良い所よ。
「必要なんです!茉莉ちゃんにお願いしても、『あざみは、駄目』っていって、一度もくれなかった」
私は、身を乗り出して、葵に掴みかかりながら、必死に、叫ぶ。
「あいつが、駄目だって言った意味を、もう一度、良く考えな」
葵は、私の手を、すげなく払う。
彼女の態度には、取り付く島もなかった。
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