木瓜

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歓談はほろ苦い珈琲と共に

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「それも、気付きましたか」

私が、賞状に反応した時と、ほとんど同じ言葉を、誠二が返す。

違うのは、その言葉に込められた熱量。

今回は、少し、その言葉に、陶酔のニュアンスが混じっている。

「娘さん、ですよね」

飾られていたのは、女性の写真。

同じ女性の、幼少期から中学入学までの写真が、隙間なく並べられていた。

写っているのは、恐らく、娘の茉莉だろう。

ここまでは、多少親ばかが入っているかな、というぐらいで、不自然な点はないが、問題は、他にあった。

「ええ、私の娘の、可愛いコレクションの、数々です」

誠二はそう話すと、戸棚に近づき、恍惚とした表情で、写真たちの講釈を始めた。

「これは、茉莉が初めて生まれた時の写真です。まだ赤ちゃんなのに、この時から、彼女は美しかった。次は、小学校に入学した時。大人びているでしょう。もうこの時点で、彼女の美は完成されつつあった。そして、中学入学と同時に、彼女の美しさは、最高点に達した」
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