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それは、きっと五月雨のせい
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しおりを挟む「何処か、出掛けるの?」
玄関口で、身支度を整えていた私の後ろから、不意に声が掛かる。
「…起きてたのか」
振り向いた先には、青い寝巻きを羽織り、眠そうに目を擦る彼女の姿があった。
「寝付けないから、ちょっと、散歩にね」
私は、視線を彼女から逸らすように、俯きながら答える。
「こんな時間に?もう、夜更けだけど」
彼女の声は、何処か不安気に、揺れている。
何時からだろう。
彼女には似つかわしくない、凛とした、良く通る声は、気付けば彼女が纏う、霞の様な雰囲気と共に溶けて、私の中から消えていった。
「静かなぐらいが、丁度いいんだ」
俯いたまま、扉の方へと向き直り、ドアノブに手を触れる。
「…相変わらず、目、合わせてくれないのね」
そのまま、出掛けようとした、私の背中に、彼女がぽつりと、呟いて、
扉が、静かに閉まる音が、聴こえた。
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