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第二章
7.「不注意」の傷
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さくらはしっかりと食事を取り終えると、お茶をすすりながら、今度はどうやって薬を手に入れるかを考え始めた。薬だけではない、出来たら包帯なども手に入れたい。
しかし、いきなりそんなことを言って理由もなく貰えるものだろうか? 怪我人もいないのに不自然だ・・・。
(そうか、怪我人になればいいんだ!)
さくらはポンと手を打った。
簡単だ、自分が怪我をすればいい。軽く怪我をして塗り薬を貰おう。人の塗り薬がドラゴンに効くか分からないが、無いよりマシだ!
さくらは浅はかだが、単純で確実な方法だと自画自賛した。そして最初に目に入ったのは、豪華絢爛なベッドの支柱だった。この獅子の彫り物に「不注意」でぶつかれば、簡単に擦り傷はできそうだ。しかし、実際に行動に起こすにはかなり勇気のいることだった。
(よし!)
さくらは両手でピシャっと自分の頬を叩いて気合をいれると、左腕をまくり上げ、肌をあらわにした。そして、
―――ガンッ!!
鈍い音がした。ベッドに何か叩きつけられた衝撃に驚いたドラゴンが顔を上げ、周りを見渡した。
「――痛っ~~・・・」
左腕を抱えてしゃがみ込みこんで悶絶しているさくらに気が付き、驚いて傍に行こうとしたが、全身を手ぬぐい手覆われているせいで簡単に身動きが取れない。ジタバタともがきながら、さくらに向かって奇声をあげた。
「!」
それに気が付いたさくらは慌てて立ち上がり、ベッドに駆け寄った。
「大人しくて!」
ドラゴンをぎゅっと抱きしめると、
「ごめんね、驚かせちゃって。せっかく寝てたのに起こしちゃったね、ごめんね」
そう言うとドラゴンの額にチュッとキスをした。
途端に、ドラゴンの動きがピタッと止まった。さくらはドラゴンの頭を優しくなでて、乱れた手ぬぐいを丁寧に直し、さらにベッドの布団の中にドラゴンを隠した。
「大人しくしててね」
さくらはドラゴンに向かって口元に人差し指を立てて囁くと、ベッドから離れ、アンナとカンナを呼ぶための呼び鈴の紐を力いっぱい引っ張った。
暫くすると、二人はやってきた。
テーブルの片づけを終えた二人に、さくらは食事の礼を言った。そして、
「ところで、さっき、ちょっとぶつけちゃって、怪我をしてしまったんです」
と、さっそく流血している腕を見せた。二人はそれを見ると悲鳴を上げて真っ青になり、
「す、す、すぐにお医者様を!」
慌てて出ていこうした。
(まずい!)
医者は余計だ! 今度はさくらの方が慌てた。
「大したことはないの! お薬と包帯だけもらえれば自分で手当てしますから!」
そう言って無理やり二人を引き留めたが、さくら様ご自身にそのようなことはさせられないと、二人は納得しなかった。
「じゃ、じゃあ、お二人が手当てしてください! お医者様は嫌なの!」
さくらは必死で食らいついた。二人は困惑したが、こう言い合っている間にも、さくらの傷から血が滴り落ちているのを見て、
「では、すぐにお手当てを!」
二人は部屋を飛び出していった。
(焦った・・・)
さくらは、ホーっと息を吐いた。そして改めて自分の腕を見た。驚いたことにかなりの出血量だ。二人が悲鳴を上げるのも無理はない。
(痛かったわけだわ・・・。少しやり過ぎちゃったかな)
後悔したがもう遅い。とあえず腕を心臓より上に挙げ、二人が戻ってくるのを待った。
しかし、いきなりそんなことを言って理由もなく貰えるものだろうか? 怪我人もいないのに不自然だ・・・。
(そうか、怪我人になればいいんだ!)
さくらはポンと手を打った。
簡単だ、自分が怪我をすればいい。軽く怪我をして塗り薬を貰おう。人の塗り薬がドラゴンに効くか分からないが、無いよりマシだ!
さくらは浅はかだが、単純で確実な方法だと自画自賛した。そして最初に目に入ったのは、豪華絢爛なベッドの支柱だった。この獅子の彫り物に「不注意」でぶつかれば、簡単に擦り傷はできそうだ。しかし、実際に行動に起こすにはかなり勇気のいることだった。
(よし!)
さくらは両手でピシャっと自分の頬を叩いて気合をいれると、左腕をまくり上げ、肌をあらわにした。そして、
―――ガンッ!!
鈍い音がした。ベッドに何か叩きつけられた衝撃に驚いたドラゴンが顔を上げ、周りを見渡した。
「――痛っ~~・・・」
左腕を抱えてしゃがみ込みこんで悶絶しているさくらに気が付き、驚いて傍に行こうとしたが、全身を手ぬぐい手覆われているせいで簡単に身動きが取れない。ジタバタともがきながら、さくらに向かって奇声をあげた。
「!」
それに気が付いたさくらは慌てて立ち上がり、ベッドに駆け寄った。
「大人しくて!」
ドラゴンをぎゅっと抱きしめると、
「ごめんね、驚かせちゃって。せっかく寝てたのに起こしちゃったね、ごめんね」
そう言うとドラゴンの額にチュッとキスをした。
途端に、ドラゴンの動きがピタッと止まった。さくらはドラゴンの頭を優しくなでて、乱れた手ぬぐいを丁寧に直し、さらにベッドの布団の中にドラゴンを隠した。
「大人しくしててね」
さくらはドラゴンに向かって口元に人差し指を立てて囁くと、ベッドから離れ、アンナとカンナを呼ぶための呼び鈴の紐を力いっぱい引っ張った。
暫くすると、二人はやってきた。
テーブルの片づけを終えた二人に、さくらは食事の礼を言った。そして、
「ところで、さっき、ちょっとぶつけちゃって、怪我をしてしまったんです」
と、さっそく流血している腕を見せた。二人はそれを見ると悲鳴を上げて真っ青になり、
「す、す、すぐにお医者様を!」
慌てて出ていこうした。
(まずい!)
医者は余計だ! 今度はさくらの方が慌てた。
「大したことはないの! お薬と包帯だけもらえれば自分で手当てしますから!」
そう言って無理やり二人を引き留めたが、さくら様ご自身にそのようなことはさせられないと、二人は納得しなかった。
「じゃ、じゃあ、お二人が手当てしてください! お医者様は嫌なの!」
さくらは必死で食らいついた。二人は困惑したが、こう言い合っている間にも、さくらの傷から血が滴り落ちているのを見て、
「では、すぐにお手当てを!」
二人は部屋を飛び出していった。
(焦った・・・)
さくらは、ホーっと息を吐いた。そして改めて自分の腕を見た。驚いたことにかなりの出血量だ。二人が悲鳴を上げるのも無理はない。
(痛かったわけだわ・・・。少しやり過ぎちゃったかな)
後悔したがもう遅い。とあえず腕を心臓より上に挙げ、二人が戻ってくるのを待った。
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