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第三章
35.誓い
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ノアがさくらを連れてやって来たのは海辺だった。
(わぁ、海だ!)
さくらは胸が弾んだ。周りを見渡すと、ちょうど干潮時で潮がかなり引いている。その中を、潮干狩りだろうか、数人がしゃがみ込んで砂を掘っている。そしてその奥に古い灯台が建っているのが見えた。
「あの灯台って・・・」
さくらはノアに振り向いた。ノアは頷くと、
「潮が引いている時間帯は歩いてもあの灯台に行ける」
そう言って、そのまま干潮の海に進んでいった。
「うわぁぁ!」
灯台について、馬から降ろしてもらうと、さくらは街の方を眺めて叫んだ。
初めて連れてきてもらった時は夜だった。幻想的な夜景も美しかったが、街の全体像は見えなかった。でも、昼間である今は、すべてがよく見渡せる。さくらは目の前に広がる美しい街並みに目を奪われた。この王都が決して小さい街ではないことがよく分かる。
「塔に登ってもいいですか!?」
さくらは目を輝かせてノアに聞いた。ノアはふっと笑うと、無言で灯台の入り口の扉を開けた。さくらは中に飛び込むと、螺旋階段をどんどん登って行った。
「うわぁぁぁ! すごーい!」
一番上の踊場に出ると、さくらはさらに大きな叫び声を上げた。目の前に一面の海が広がっている。波も穏やかに、太陽の光を反射してキラキラ輝いていた。水平線には船が何隻か見える。さくらがその景色に見惚れていると、ノアがさくらの隣に立った。そっとさくらの手を取ると、反対側に連れて行った。
「わぁ!!」
さくらは手を叩いて、目の前に広がる街の景色に見入った。灯台の上からだと、さっきよりもずっとよく見える。
「綺麗ですね~! 本当に素敵な街!」
さくらはうっとりと街を眺めた。そんなさくらをノアは背中から包むように抱きしめた。
「ふふっ」
「なにが可笑しい?」
嬉しそうに笑うさくらを、愛おしそうに眺めながら、ノアが尋ねると、
「あの時も、陛下が抱きしめてくれましたね、翼で」
さくらはそう言うと、ノアにもたれかかった。ノアはさくらの頬にキスを落とすと、抱きしめる腕に力を込めた。
「白状すると、あの時だ。お前に心を奪われたのは」
さくらは驚いてノアの方に顔を向けた。
「その前から、俺の周りから離れないお前のことを可愛いと思っていた。だがあの時、自分の未来を案じて泣いているのに、この国のことを思ってくれたお前に、すべてを持って行かれたんだ」
目が潤んでくるさくらの顔を覗き込みながら、ノアは続けた。
「残念だが、この国は貧富の差がかなりある。お前が心配していた、道端で生活している者たちがいるのは確かだ。だから、お前の願いを聞いたときハッとした。その通りだと思った」
ノアはさくらの体を離すと、自分の方に向かせた。しっかりさくらの両腕を掴むと、真っ直ぐ目を見つめた。
「さくら、お前の望むような国にしてみせる。だから俺の傍で力を貸してくれ。絶対に俺の傍を離れるな。お前さえいれば俺は何でもできる気がする」
さくらは目を潤ませたまま、何度も頷いた。ノアは自分の額をさくらの額に合わせると、さくらの潤んだ瞳をじっと見つめた。
「・・・世継ぎのことを気にしているのだろう?」
さくらは瞬きした。そして気まずそうに目を伏せた。ノアはさくらの頬を両手で包むと、
「そんなことは気にしなくていい。子に恵まれなくても、お前以外妻は取らない。改めて誓う」
そう言った。さくらの瞳は一瞬輝いたが、すぐに切なそうな色に変わった。
「でも、国王様なのだから、そんなこと周りが許さないと思います・・・」
「俺が気にしなくていいと言ったら、気にしなくていい!」
「でも・・・、んっ・・・」
ノアはムッとした様子で、反論しかけたさくらの唇を口づけで強引にふさいだ。長い口づけの後、ゆっくり唇を離すと、こつんと額を合わせ、熱を帯びた目でさくらを見つめた。
「わかったな? 俺を信じろ」
無言で頷くさくらを見て、満足したように笑うと、さくらを胸に抱きしめた。
「それに、もし子ができたとしても、それが王位を継ぐとは限らん」
「・・・へ?」
さくらはノアの胸の中で素っ頓狂な声を上げて、思わずノアを見上げた。ノアはさくらの髪を撫でながら、
「俺の下には優秀な弟が二人もいるからな。なにも俺だけの子孫がローランド王国を繋いでいくわけではない」
ノアはニッと口角を上げて、さくらの顔を覗き込んだ。
「ローランド一族の歴史は長い。その分裾野は広い。この一族の血はそうそう簡単に耐えることはないぞ」
ノアの自信たっぷりな笑みに、さくらは安心すると同時に、また涙が込み上げてきた。その涙を隠すように、ノアの胸に顔を押し当て、背中に手をまわすとぎゅっと力強く抱きしめた。
「さくら、愛している」
ノアはそう囁くと、力強くさくらを抱きしめ返した。
(わぁ、海だ!)
さくらは胸が弾んだ。周りを見渡すと、ちょうど干潮時で潮がかなり引いている。その中を、潮干狩りだろうか、数人がしゃがみ込んで砂を掘っている。そしてその奥に古い灯台が建っているのが見えた。
「あの灯台って・・・」
さくらはノアに振り向いた。ノアは頷くと、
「潮が引いている時間帯は歩いてもあの灯台に行ける」
そう言って、そのまま干潮の海に進んでいった。
「うわぁぁ!」
灯台について、馬から降ろしてもらうと、さくらは街の方を眺めて叫んだ。
初めて連れてきてもらった時は夜だった。幻想的な夜景も美しかったが、街の全体像は見えなかった。でも、昼間である今は、すべてがよく見渡せる。さくらは目の前に広がる美しい街並みに目を奪われた。この王都が決して小さい街ではないことがよく分かる。
「塔に登ってもいいですか!?」
さくらは目を輝かせてノアに聞いた。ノアはふっと笑うと、無言で灯台の入り口の扉を開けた。さくらは中に飛び込むと、螺旋階段をどんどん登って行った。
「うわぁぁぁ! すごーい!」
一番上の踊場に出ると、さくらはさらに大きな叫び声を上げた。目の前に一面の海が広がっている。波も穏やかに、太陽の光を反射してキラキラ輝いていた。水平線には船が何隻か見える。さくらがその景色に見惚れていると、ノアがさくらの隣に立った。そっとさくらの手を取ると、反対側に連れて行った。
「わぁ!!」
さくらは手を叩いて、目の前に広がる街の景色に見入った。灯台の上からだと、さっきよりもずっとよく見える。
「綺麗ですね~! 本当に素敵な街!」
さくらはうっとりと街を眺めた。そんなさくらをノアは背中から包むように抱きしめた。
「ふふっ」
「なにが可笑しい?」
嬉しそうに笑うさくらを、愛おしそうに眺めながら、ノアが尋ねると、
「あの時も、陛下が抱きしめてくれましたね、翼で」
さくらはそう言うと、ノアにもたれかかった。ノアはさくらの頬にキスを落とすと、抱きしめる腕に力を込めた。
「白状すると、あの時だ。お前に心を奪われたのは」
さくらは驚いてノアの方に顔を向けた。
「その前から、俺の周りから離れないお前のことを可愛いと思っていた。だがあの時、自分の未来を案じて泣いているのに、この国のことを思ってくれたお前に、すべてを持って行かれたんだ」
目が潤んでくるさくらの顔を覗き込みながら、ノアは続けた。
「残念だが、この国は貧富の差がかなりある。お前が心配していた、道端で生活している者たちがいるのは確かだ。だから、お前の願いを聞いたときハッとした。その通りだと思った」
ノアはさくらの体を離すと、自分の方に向かせた。しっかりさくらの両腕を掴むと、真っ直ぐ目を見つめた。
「さくら、お前の望むような国にしてみせる。だから俺の傍で力を貸してくれ。絶対に俺の傍を離れるな。お前さえいれば俺は何でもできる気がする」
さくらは目を潤ませたまま、何度も頷いた。ノアは自分の額をさくらの額に合わせると、さくらの潤んだ瞳をじっと見つめた。
「・・・世継ぎのことを気にしているのだろう?」
さくらは瞬きした。そして気まずそうに目を伏せた。ノアはさくらの頬を両手で包むと、
「そんなことは気にしなくていい。子に恵まれなくても、お前以外妻は取らない。改めて誓う」
そう言った。さくらの瞳は一瞬輝いたが、すぐに切なそうな色に変わった。
「でも、国王様なのだから、そんなこと周りが許さないと思います・・・」
「俺が気にしなくていいと言ったら、気にしなくていい!」
「でも・・・、んっ・・・」
ノアはムッとした様子で、反論しかけたさくらの唇を口づけで強引にふさいだ。長い口づけの後、ゆっくり唇を離すと、こつんと額を合わせ、熱を帯びた目でさくらを見つめた。
「わかったな? 俺を信じろ」
無言で頷くさくらを見て、満足したように笑うと、さくらを胸に抱きしめた。
「それに、もし子ができたとしても、それが王位を継ぐとは限らん」
「・・・へ?」
さくらはノアの胸の中で素っ頓狂な声を上げて、思わずノアを見上げた。ノアはさくらの髪を撫でながら、
「俺の下には優秀な弟が二人もいるからな。なにも俺だけの子孫がローランド王国を繋いでいくわけではない」
ノアはニッと口角を上げて、さくらの顔を覗き込んだ。
「ローランド一族の歴史は長い。その分裾野は広い。この一族の血はそうそう簡単に耐えることはないぞ」
ノアの自信たっぷりな笑みに、さくらは安心すると同時に、また涙が込み上げてきた。その涙を隠すように、ノアの胸に顔を押し当て、背中に手をまわすとぎゅっと力強く抱きしめた。
「さくら、愛している」
ノアはそう囁くと、力強くさくらを抱きしめ返した。
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