シンデレラなんてお断り~ハイスペック御曹司にロックオンされました~

夢呼

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15.打ち合わせ場所

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翌日、綾子は香織に指定された場所に出向いた。
年休を取るから会ってほしいと香織から懇願されたのだ。

西川に連れられて、たどり着いたカフェには、長い行列ができていた。
綾子はその光景を呆然と見つめた。
行列の前の方に並んでいる香織の姿がある。

「信じられない、こんなところで打ち合わせなんて!」

「・・・一時間以上前から並んでいらっしゃるようです」

唖然としている綾子に、西川も少し呆れたように伝えた。

「何を考えているの、あの子は」

綾子は眉間に手を当てると、

「あの子を呼んできて」

と西川に言った。

「残念ながら、もう遅いようです」

綾子が顔を上げると、丁度、店員に呼ばれている香織が目に入った。
店員と何かを話しているようだ。香織はキョロキョロと周りを見渡すと、綾子を見つけたようだ。
店員に綾子を指差して、何かを伝えると、綾子に向かって手を大きく振った。

「このお店はお客が全員揃わないと入れてくれないそうです」

西川は静かに言った。

「・・・」

「もう既に、何組か先に店内へ通されているかもしれませんね」

「・・・」

「この暑い中、一時間以上も待つなんて、いやいや、若くても大変でしょうね」

「・・・西川、待っていて頂戴・・・」

「はい。いってらっしゃいませ」





綾子は店に入ると、その内装のあまりの可愛らしさに目を剥いた。
香織はそんな綾子には気が付いていないようで、鼻歌交じりにメニューと取ると、綾子の前に広げて見せた。

そのメニューの内容も、その内装に負けず劣らずの、フルーツたっぷりの可愛らしいパンケーキが並び、綾子の目はますます丸くなった。

普段、綾子はホテルのラウンジやサロン、ブランドブティックのカフェなどの高級店しか使わない。
娘もいないので、可愛らしいカフェなどに縁が無かった。

周りを見渡すと、若者同士が多いが、母娘の姿もかなりある。
娘に連れて来られないと入れない母親は、皆同じく嬉しそうにしている。

「ただでさえ、後ろ向きな打ち合わせなんですから、せめて美味しいものを食べながら話し合いましょうよ! このお店、前から来たかったんですよ!」

香織はワクワクしながらメニューを覗いている。

「平日でもこの混み具合ですよ。休日はホント凄いんです。入れてよかったぁ!」

「・・・」

綾子は香織の能天気さに呆れてしまった。
だが、同時に、この可愛らしいパンケーキに目を奪われている自分もいる。
しかし、自分のプライドが邪魔をして、注文する勇気が出ない。

「コーヒーだけでいいわ・・・」

「何をおっしゃっているんですか! これから作戦会議ですよ! コーヒーだけじゃ済みませんって!」

「そ、そう?」

「そうですよ! 相手は強敵です。がっつり糖分捕って、しっかり考えないと!」

「そう、それもそうね」

結局、香織の訳の分からない理屈に釣られるがまま、かなり可愛らしいパンケーキを注文してしまった。

パンケーキがテーブルに運ばれてくると、写真よりもずっと可愛らしく、美味しそうで、綾子も香織も自然と悲鳴が出た。

「まあ!」
「きゃ~!」

香織はすぐにスマホを出し、写真を撮り始めた。

「まあ、はしたないわよ」

「ごめんなさい。そうなんですけど、可愛くって!」

香織は目の前のパンケーキを写真に収めると、スマホを綾子に向けた。

「ささ、副社長のお母さまも!」

綾子は驚いて、

「結構!」

手を振った。
しかし、目の前の食べるのももったいないほどの美しいパンケーキに心が揺れる。
周りを見ると、自分と同じくらいの年齢の母親が、素直に娘に写真を撮られている。

「じゃあ、副社長のお母さまのスマホで撮ってあげますよ。ご自分のなら安心でしょ?」

「そ、そう? じゃあ、お願い」

香織は綾子からスマホを受け取ると、パシャパシャ撮り始めた。

「いいですよ~! 可愛い~、お母さま!! パンケーキも素敵!」

カメラマンのようにおだてる香織に思わず、可笑しくて吹いてしまった。
そして、撮れた写真を見て、自分でも驚いた。

正直、綾子は自分で美人だと自覚している。
しかし、この写真は美人というより、どこか可愛らしく映っている。ツンと澄ましている自分ではない。
どこか懐かしい表情だ。いつからこんな表情をしなくなったろうか・・・。

「・・・」

「・・・? もっと撮ります?」

「いいえ! 結構。いただきましょう」

「そうですね~♪ いただきま~す!」

香織は両手を前に合わせると、早速、パンケーキを頬張った。
何とも言えないふわっふわの食感と、フルーツとジャムとクリームのハーモニーが口の中にいっぱいに広がる。

「幸せ~~! 並んだ甲斐があった~~!」

綾子を見ると、彼女も満足なのか、目元も口元も緩んでいる。
しかし、香織と目が合うと、キリっとした表情になった。

「これを食べることが目的ではないのよ! 分かっているわね!」

「もちろんです!!」

香織は大きく頷いた。そして、ぐっとガッツポーズをした。

「美味しいものを食べて、良い策を考えましょう!」

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