シンデレラなんてお断り~ハイスペック御曹司にロックオンされました~

夢呼

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73.団欒

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夕食は外食ではなく、家で鍋をしようと香織は提案した。

「実家から野菜を送ってもらったので、野菜いっぱいの鍋をしましょうよ!」

ほくほく話す香織に、綾子は怪訝な顔をした。

「陽一の家で?」

「はい! もし早く帰ってきたら、ご一緒できますよ」

「・・・」

綾子はますます顔を顰めた。
ここ数年、陽一と一緒にプライベートで食事などしたことがない。仕事がらみか、見合いの席か、佐田家での会食くらいだ。
夏の八丈島の件を除いて・・・。

あれだって、ハプニングのようなもので、プライベートとは程遠い。

もし、陽一と鉢合わせてしまったら、どんな顔をして一緒に食事をすればいいのか。
親子だと言うのに、縁遠くなってしまったものだ。

「・・・出張なら遅くなるに決まっているわよ。二人だけで鍋をするのは勿体ないわ」

「え~、そうですか~?」

残念そうに首を傾げる香織に、

「私の家にしましょう。それなら、サワさんもいるから三人だし。我が家にもあなたのご実家から大量に野菜が届いているの。食べきれないほどよ。さばくのを手伝ってちょうだい」

そう言い、自宅に招待することで、今回は逃げることにした。
そんな綾子の思惑など、香織は気が付かない。

「あ、サワさん! そうですね! 私も会いたいです!」

喜んで綾子の意見に賛同した。





綾子の家に着くと、サワが早速、鍋の準備をしてくれた。
香織も手伝おうとしたが、サワの手際があまりに良く、逆に邪魔のようだ。

「サワさんの邪魔になるから、お止めなさい」

綾子にそう言われてしまう始末だった。

出来上がった鍋を三人で楽しく食べた後、仕上げの締めを雑炊にするかうどんにするか迷っているとき、香織の携帯が鳴った。

「あ、陽一さんからメッセージだ。今から迎えに来てくれるそうです」

香織は携帯を見ながら二人に伝えると、

「じゃあ、やはり雑炊にしましょう! 坊ちゃまは雑炊が好きだから」

サワは嬉しそうに言うと、うどんをしまい、雑炊の準備を始めた。
その様子を見て、

「食べるかしら?あの子・・・」

綾子は思わず呟いた。

「食べるでしょう!! こんないい匂いしてるんですもん! 締めは別腹ですからね~」

綾子の心配を余所に、香織は鼻歌交じりに汚れた食器を片付けている。

(本当に能天気と言うか、鈍感と言うか・・・)

自分と陽一との溝の深さに気が付かない香織を呆れたように見つめた。
しかし、他人から見れば、気が付かない方が当然なのかもしれない。
これはあくまでの親子二人の問題だ。

綾子は溜息を付くと、落ち着かない様子で陽一を待った。





溶き卵が流し込まれ、美しく黄金色に輝いた雑炊を前に、香織は歓喜の声を上げた。

「あれだけ食べた後なのに、またよだれが出そうですね~!」

ふふふ~っと鍋を覗き込む姿に、サワは笑いながら茶碗に雑炊をよそった。
そこに玄関のチャイムが鳴った。

「あ、陽一さんですかね?」

香織はインターホンの画面を覗いて陽一と確認すると、玄関に急いだ。

「お帰りなさい! 出張、お疲れ様でしたぁ!」

「・・・お帰りなさいって、お前の家じゃないだろ、ここは。なんでお袋ん家にいるんだよ」

陽一は呆れたように香織を見ると、

「帰るぞ、荷物持ってこい」

そう言って、外に出ようとした。

「は? 何言ってるんですか? これから雑炊ですよ?」

「は?」

「雑炊ですよ! 雑炊! 早く食べましょう!」

香織は陽一の腕を引っ張った。

「俺は夕食済ませたって言っただろ」

「私たちだって済ませましたよ。締めですよ、締め! 別腹です。これを食べずして帰れません」

香織はぷくーっと頬を膨らませると、陽一を無理やり家に引きずり込んだ。

香織に引っ張られるように居間に入ると、サワが作った雑炊のいい匂いが広がっていた。
サワは、陽一を見ると嬉しそうに微笑んで、

「さあさあ、坊ちゃま、こちらにどうぞ! 美味しくできましたよ!」

そう言って、陽一のために椅子を引いた。
綾子をチラッと見ると、そっぽを向いている。
しかし、香織はそんなことに気が付かないようで、さっさと席に着くと、自分のお茶碗を両手に持った。

「見てくださいよ! めっちゃ美味しそう~♪ もはや雑炊は日本の芸術ですね!」

香織の言葉にサワは声を上げて笑った。
釣られて綾子も笑う。

陽一はそんな綾子を見て目を丸くした。
香織は「早く早く」と自分を手招きしている。

軽く肩を竦めると、観念したように、サワが引いてくれた椅子に座った。
隣の香織を見ると、にこにこ笑ってこちらを見ている。
その表情に頬が緩んだ。

サワに差し出された箸を受け取ると、

「いただきます」

と言って、三人と一緒に雑炊を食べ始めた。
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