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44.初登校
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翌朝、昨日の出来事を両親に話そうとしたが、父は既に仕事に出かけていておらず、母はいつも朝よりもバタバタして落ち着きがない。
オフィーリアが朝食を食べ終えても、キッチンでパタパタと働いている。とても話しかけられる雰囲気ではなく、オフィーリアは身支度を整えにテーブルを立った。
昨日言われた時間までに完璧に身支度を整え終え、リビングへ向かう。
母はまだキッチンだ。
「お母様。行って参ります」
オフィーリアは母に声を掛けた。
「待って、待って! お弁当! もう、すっかり忘れちゃってて。間に合った!」
母親は花柄の可愛い布に包まれた箱らしきものを手にキッチンから飛び出して来た。
そしてさらに、これまた花柄の小さい布バッグに入れてオフィーリアに手渡した。
(椿様は花柄がお好きなのかしら? それともお母様の趣味なのかしら?)
「ありがとうございます。お母様」
礼を言いながら、しげしげとバッグを見る。
母親は玄関までオフィーリアを見送りに来ると、
「これからお母さんもお仕事に行く準備しないといけないから、学校まで一緒に行けないけど大丈夫よね? 道は覚えたわよね?」
少し心配そうな顔でオフィーリアを見た。
「はい。大丈夫ですわ」
オフィーリアは大きく頷く。
「校門前で竹田先生が待っていてくれるそうよ。学校に着いたら先生の言う事をよく聞いて行動しなさいね」
「分かりました。行って参ります」
オフィーリアは玄関を開けた。
大きく深呼吸すると力強く一歩を踏み出した。
母は門扉までついて行き娘を見送った。
こちらを振り返ることもなく堂々を歩いて行く娘の後ろ姿を見守る。
「学校で刺激を受けて何かしら思い出せばいいけど・・・」
娘の症状が記憶喪失の一つであろうと思っている母親はそんな期待を込めて後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
☆彡
迷うことなく学校に辿り着くと、母の言っていた通り校門の前で竹田が立っていた。
「おーい、山田ぁ! おはよう!!」
オフィーリアに向かって大きく手を振っている。
「おはようございます。竹田先生」
竹田の近くまで来ると、オフィーリアは制服のスカートを摘まんで軽く膝を曲げた。
「・・・おう、おはよう。ゆ、優雅な挨拶だな。ははは・・・」
竹田は目が点になりながらも、無理やり平静を装って見せた。
その隣にはセオドアこと柳が立っていた。
「おはようございます。セオドア様」
「おはよう・・・。オフィーリア」
「そうだったなあ、セオドアとオフィーリアって言ったけなぁ。やっぱりまだ戻ってないんな、お前たち・・・」
二人の挨拶の様子に竹田は肩を落とした。
だが、すぐに顔を上げると、
「教室に行く前にちょっと保健室に来い。保健室の伊藤先生もお前たちの事をとても心配していたからな。顔を見せておこう」
そう言って二人を保健室へ連れて行った。
保健室に入ると、以前会った白衣の女が待っていた。
「おはよう。柳君、山田さん」
二人を迎えてにっこりと笑う。セオドアもオフィーリアも挨拶を返した。
「さてと・・・」
竹田はセオドアとオフィーリアをベッドに座らせ、自分はその前に立って両手を擦った。
「セオドア君とオフィーリアさんと言ったな、君たちは。でも、この学校では柳健一君と山田椿さんだ。それは理解できているかな? 難しいかな?」
「・・・分かります」
「分かっておりますわ」
セオドアとオフィーリアは同時に返事をした。
「クラスメイトもお前たちを柳と山田と思って接してくる。それに混乱すると思うし、複雑な気持ちになると思う。自分を分かってもらおうと思ってもなかなか難しいだろう。冷ややかな目で見られる可能性が高い。ある程度の覚悟が必要だ」
オフィーリアは黙って頷いた。セオドアも無言で頷く。
「だが、先生は味方だぞ! それと事情を知っている伊藤先生もな。何かあったら遠慮せず相談するんだぞ! 一人で悩むなよ、いいな?」
竹田の隣で伊藤もうんうんと頷く。
「いつでも保健室にいらっしゃいね」
そう優しく笑う。
「ありがとうございます」
オフィーリアは気をかけてくれている二人に素直に感謝の言葉を口にした。
その時、校内にチャイムが流れた。
そのメロディーにセオドアとオフィーリアは驚き、体をビクッと震わせた。
「ああ、鐘が鳴っちゃったな。さ、教室に行くぞ、二人とも。伊藤先生、これからも二人をよろしくお願いします」
竹田は伊藤に軽く頭を下げると、二人を促し廊下へ出た。
長い廊下を二人は担任教諭の後に続いて歩いた。
歩きながらオフィーリアはそっとセオドアの袖口を引いた。セオドアは驚いたようにオフィーリアに振り向いた。
〔セオドア様。大変な事が分かりましたわ〕
オフィーリアは小声でセオドアに耳打ちした。
〔今は無理ですので、後で詳しく説明しますわね〕
セオドアは目を丸めていたが、すぐに真顔になり無言で頷いた。
オフィーリアが朝食を食べ終えても、キッチンでパタパタと働いている。とても話しかけられる雰囲気ではなく、オフィーリアは身支度を整えにテーブルを立った。
昨日言われた時間までに完璧に身支度を整え終え、リビングへ向かう。
母はまだキッチンだ。
「お母様。行って参ります」
オフィーリアは母に声を掛けた。
「待って、待って! お弁当! もう、すっかり忘れちゃってて。間に合った!」
母親は花柄の可愛い布に包まれた箱らしきものを手にキッチンから飛び出して来た。
そしてさらに、これまた花柄の小さい布バッグに入れてオフィーリアに手渡した。
(椿様は花柄がお好きなのかしら? それともお母様の趣味なのかしら?)
「ありがとうございます。お母様」
礼を言いながら、しげしげとバッグを見る。
母親は玄関までオフィーリアを見送りに来ると、
「これからお母さんもお仕事に行く準備しないといけないから、学校まで一緒に行けないけど大丈夫よね? 道は覚えたわよね?」
少し心配そうな顔でオフィーリアを見た。
「はい。大丈夫ですわ」
オフィーリアは大きく頷く。
「校門前で竹田先生が待っていてくれるそうよ。学校に着いたら先生の言う事をよく聞いて行動しなさいね」
「分かりました。行って参ります」
オフィーリアは玄関を開けた。
大きく深呼吸すると力強く一歩を踏み出した。
母は門扉までついて行き娘を見送った。
こちらを振り返ることもなく堂々を歩いて行く娘の後ろ姿を見守る。
「学校で刺激を受けて何かしら思い出せばいいけど・・・」
娘の症状が記憶喪失の一つであろうと思っている母親はそんな期待を込めて後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
☆彡
迷うことなく学校に辿り着くと、母の言っていた通り校門の前で竹田が立っていた。
「おーい、山田ぁ! おはよう!!」
オフィーリアに向かって大きく手を振っている。
「おはようございます。竹田先生」
竹田の近くまで来ると、オフィーリアは制服のスカートを摘まんで軽く膝を曲げた。
「・・・おう、おはよう。ゆ、優雅な挨拶だな。ははは・・・」
竹田は目が点になりながらも、無理やり平静を装って見せた。
その隣にはセオドアこと柳が立っていた。
「おはようございます。セオドア様」
「おはよう・・・。オフィーリア」
「そうだったなあ、セオドアとオフィーリアって言ったけなぁ。やっぱりまだ戻ってないんな、お前たち・・・」
二人の挨拶の様子に竹田は肩を落とした。
だが、すぐに顔を上げると、
「教室に行く前にちょっと保健室に来い。保健室の伊藤先生もお前たちの事をとても心配していたからな。顔を見せておこう」
そう言って二人を保健室へ連れて行った。
保健室に入ると、以前会った白衣の女が待っていた。
「おはよう。柳君、山田さん」
二人を迎えてにっこりと笑う。セオドアもオフィーリアも挨拶を返した。
「さてと・・・」
竹田はセオドアとオフィーリアをベッドに座らせ、自分はその前に立って両手を擦った。
「セオドア君とオフィーリアさんと言ったな、君たちは。でも、この学校では柳健一君と山田椿さんだ。それは理解できているかな? 難しいかな?」
「・・・分かります」
「分かっておりますわ」
セオドアとオフィーリアは同時に返事をした。
「クラスメイトもお前たちを柳と山田と思って接してくる。それに混乱すると思うし、複雑な気持ちになると思う。自分を分かってもらおうと思ってもなかなか難しいだろう。冷ややかな目で見られる可能性が高い。ある程度の覚悟が必要だ」
オフィーリアは黙って頷いた。セオドアも無言で頷く。
「だが、先生は味方だぞ! それと事情を知っている伊藤先生もな。何かあったら遠慮せず相談するんだぞ! 一人で悩むなよ、いいな?」
竹田の隣で伊藤もうんうんと頷く。
「いつでも保健室にいらっしゃいね」
そう優しく笑う。
「ありがとうございます」
オフィーリアは気をかけてくれている二人に素直に感謝の言葉を口にした。
その時、校内にチャイムが流れた。
そのメロディーにセオドアとオフィーリアは驚き、体をビクッと震わせた。
「ああ、鐘が鳴っちゃったな。さ、教室に行くぞ、二人とも。伊藤先生、これからも二人をよろしくお願いします」
竹田は伊藤に軽く頭を下げると、二人を促し廊下へ出た。
長い廊下を二人は担任教諭の後に続いて歩いた。
歩きながらオフィーリアはそっとセオドアの袖口を引いた。セオドアは驚いたようにオフィーリアに振り向いた。
〔セオドア様。大変な事が分かりましたわ〕
オフィーリアは小声でセオドアに耳打ちした。
〔今は無理ですので、後で詳しく説明しますわね〕
セオドアは目を丸めていたが、すぐに真顔になり無言で頷いた。
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