償い〜心«イノチ»〜

sho

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天に昇った日

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平成27年4月15日

今日は憂輝と本当のお別れの日。
お父さんと二人喪服を着て
火葬場に行く。
ウチは喪服なんて持ってなかったから
お母さんが貸してくれた。
都城の方が良かったんだけど
住民票の関係で宮崎ですることになった。
憂輝と三人でお父さんの運転で
宮崎まで行った。

昨夜も泣き通しで眠れていなかったし
お父さんもそれを分かってか
寝ててもいいからね?
って言ってくれたけど
眠れなかった。
すごく眠たかったけどね。
火葬場に着いて担当の方が挨拶に来た。
「松尾 直樹」って書いてあった。
なんで…?って思ったよ。
1文字感じが違うだけの人。
ちゃんと産んであげられなかった天罰だ。
っておもった。
お父さんは憂輝のパパの名前を知らない。
だから、何も言わなかったけど
本当は担当の人を
変えてほしいと思った。
だけど、何も言えなかった。

そのうち、部屋に通された。
ものすごいお線香の臭がした。
大きな大仏様がいる真っ白なお部屋だった。
何個かのイスがあって
「最後のお別れをしてください」
って言われた。


お線香のあげかたとか拝み方を聞いて
ウチが先、お父さんが後で手を合わせた。
泣かなかったよ。
必死にこらえて…

お父さんが終わって次のお部屋に行った。
鉄のタンカがあった。
そこに憂輝が置かれて
少し低めの扉の中に入っていって
鉄の扉が閉められた。
手を伸ばして今すぐそこから
出したいと思うくらい苦しかった。

そして、「心の準備ができたら
ボタンを押してください。」って
言われた。
ボタン一つで天に昇ってしまう。
ママのそばからいなくなってしまうんだ
って思ったら
あっけないんだな。って思ったよ。
でも、逆に良かったのかもしれない。
そんなに長いこと
耐えられるはずがないから。
自分で押さなきゃいけないんだって思うと
押したくない気持ちと
押さなきゃって気持ちで
ごちゃごちゃだった。
ボタン一つ押すのがこんなに
難しいんだって思ったのは
初めてだった。
やっとの思いでボタンを押した。
お父さんも、担当の方も
何も言わずに静かに待っていてくれた。
ボタンを押すときには
涙でボタンの位置なんかわからなかったけど
なんとか、ボタンを押した。
そして火葬が始まり
「これから完全なボネの状態に
するまでに1時間半ほどかかります。
なので、骨を拾われるのでしたら
1時間半ほどお待ちいただく
形になりますがいかがなさいますか?」
って言われた。
ウチは、もちろん一緒に
つれて帰りたかった。
だから、お父さんに「待っときたい。」
って言ったけど
「近くに置いてたら前に
進めないんじゃない?」って言われた。

「それに、親族全員が
知っていることではないから
お墓には入れてあげられなよ?
家で保管するか少しだけ貰って粉にして
キーホルダーみたいな形で
持つことも確かにできるけど
もしも、この先結婚したりする時
必ず重荷になるよ?
受け止めてくれる人もいるかも
しれないけどなかなかそんな人いないよ?」
って…。
多分、1時間位話してたと思う。
結局、おいて帰ることになった。
担当の方に挨拶をして
隣にある納骨堂に行った。
そこで、先に入ってる方々に
お父さんと二人で挨拶をした。
「これから、憂輝と言う子が
入って来ます。仲良くしてください。」
って。

そして、その後
「お父さんは先に車に戻って
待っておくから最後にお別れして
戻っておいで」って言われた。
沢山、お話して
沢山、ごめんなさいして
沢山、お別れした。
沢山、お約束もした。
そして、お父さんの車に乗って帰った。
帰りは泣け疲れて眠ってた。

こうして、ママと憂輝の
15週間の短い物語は幕を閉じました。



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