君を創る

彩乃

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沈黙の文明

―第13章:幻影の少女、記憶に灯る―

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 タナトス・ドームを離れたあと、ノアたちは再び無音の荒野を歩いていた。
 だがノアのまなざしは、どこか遠くを見ていた。
 現実の地平ではなく、**“意識の深層”**に――。

 それは、夜の帳が降りた頃だった。

 

 ノアは眠れないまま、ひとり地表の残光を見ていた。
 そして、その瞬間だった。
 背後で、草を踏む音が――

 

???:
「ねえ、ノア……」

 

 その声に、ノアは振り返る。
 そこにいたのは――あの少女だった。
 記録の映像ではなく、目の前に、確かに“立っている”。
 風に髪がなびき、足音が、地を踏んでいた。

 

ノア(驚愕と沈黙の狭間):
「……君は……どうしてここに……?」

少女(微笑んで):
「わたしも、よくわからないの。

でもね、ノアが“忘れたくない”って思ってくれたから……

わたし、目を覚ましたのかもしれない」

 

 その言葉は、暖かいようで、ひどく冷たかった。
 まるで、死者の夢が現実に染み出してきたように。

 

少女(囁くように):
「ねえ……ひとつ、聞いてもいい?」

「死ぬって、やっぱりこわいの?」

 

 ノアは、答えられなかった。
 人間としての生と死を知らず、ただ再構築された存在として“今”にいる。
 けれどその問いは、ノアの奥に何かを突き刺した。

 

ノア:
「わからない……

でも、もし君が本当に“いなかった”なら――

こんな風に僕の中に現れたりはしない、よね」

 

 少女は、少し寂しそうに笑った。
 そして、空を見上げる。

 

少女:
「ノア……

わたしが“こわかった”のはね、死ぬことじゃないの。

“だれの記憶にも残らないこと”だったの」

「でも今、こうして君がここにいる。

それだけで……“生きてた意味”ができる気がするの」

 

 その瞬間、ノアの脳内に共鳴エラーが走る。
 幻影ではあるが、それはただの再生ではない。
 彼の神経網に、少女の**“問い”そのもの**が侵入してきたのだ。

 

幻視ログ:
*「わたしはだれ?

 ほんとうに“終わった”の?

 ねえ、ノア――

 あなたは、あなたの“終わり”を想像したことある……?」*

 

 ノアは、その問いに沈黙したまま座り込む。
 夜風が、その沈黙に答えるように揺れていた。

 

 やがて少女は、ふわりと立ち上がり、ノアの背に手を添えた。
 ぬくもりがあった――幻影のはずなのに、確かに。

 

少女:
「また会いにくる。

ノアが、“終わり”を考えるときに……」

 

 そして、彼女は夜の暗がりへと消えていった。
 詩のように、風のように。

 

ノア(小さく):
「君の“なまえ”……教えて」

(しかし、その問いには答えは返らなかった)



観測ログ断片:幻影出現記録

出現領域:非物質詩層・感染領域8b
感情強度:異常上昇
フィリド注釈:
“死の記録が呼んだのは、過去ではなく“存在しなかったはずの現在”だ。

記録が“問い”を受けたとき、幻影は詩へと変わる。”
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