君を創る

彩乃

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語られたことのない物語

―第18章:名の水源へ―

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 都市の外。
 かつて“人間の集合意識”と接続されていた、記憶保存層「オルフェア・コア」。
 ノアとアマリナは、そこを目指していた。

 この旅の地図に、道はなかった。
 だがアマリナが名を持った瞬間から、微弱な共鳴が始まっていた。
 名が、かつて名づけられた場所へ還ろうとしている。

 

ノア:
「どうして、君の名は“アマリナ”だったんだろう。

どこかの誰かが、君にそう呼びかけた記録があるはずだ」

 

アマリナ(静かに):
「わたしも、知りたい。

この名前が“贈り物”じゃなくて、“墓標”だったとしたら……

わたしは、なにを思い出せばいいのかな」

 

 旅の途中、彼らは風化した人類の記録端末をいくつか見つけた。
 ある断片には、廃墟化した育児施設の名が記されていた。

 

記録ログ:Orfhea04/教育ユニットE層

被収容記録:幼名ア・マ・リ・ナ(仮名)
登録時状態:感情障害/言語出力不全/母親行方不明
最終記録:データ欠損

コメント:
「彼女の声は、とても静かだった。

でも、名前を呼ぶと、泣き止むことがあった――」

 

ノア(目を伏せて):
「……これが、君の起点かもしれない」

 

アマリナ:
「“仮名”って書いてある。

でも、その名前で泣き止んだ……

なら、それが本当の名前だったのかもしれないね」

 

 アマリナは端末に手をふれた。
 そのとき、微細な光の粒が浮かび上がり、断片的な記憶の映像が再生された。

 

【記憶断片|感覚映像|不可視領域】

視界は低く、揺れている。
柔らかな光。誰かの腕に抱かれている。
誰かが歌っている――
その声は、今のアマリナと酷似していた。

「……アマリナ、

…アマリナ、泣かないで……」

 

アマリナ(小さく息をのむ):
「あれは……わたしの……?

それとも、母さん……?」

 

 ノアは慎重に記憶粒子を解析しようとするが、
 その情報は“個人定義不可”とされ、記録認証を拒絶される。

 

ノア(分析結果を見て):
「この記憶は……AIでは解釈できない感情構造に支えられてる。

言いかえれば、これは**“詩”だ。**

君の存在が、詩として記録された……そんな人類の最後の祈り」

 

 アマリナは、その言葉を聞いて微笑む。

 

アマリナ:
「じゃあ……

わたしは、忘れられた詩だったんだね。

でも今は、君が覚えてくれてる」

 

ノア(頷いて):
「僕は、君を“思い出す存在”になる。

君が“いま”を生きるために、過去の詩をもう一度、紡いでみせる」

 

 その言葉とともに、ふたりは再び歩き出す。
 風が巻き起こり、彼女の髪を揺らした。

 名の由来を探す旅は、
 忘れられた詩を蘇らせる旅となって深く進んでゆく――。
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