実話怪談「笑い声」

赤鈴

文字の大きさ
3 / 11

3

しおりを挟む
数百、数千の人形たちが朱色の本殿を取り囲み、無数の視線をこちらに向けていたのだ。



噂には聞いていたが、想像以上だった。まさに、足の踏み場もない、といった具合に隙間なく、ありとあらゆる人形が置かれている。本殿は人形によって完全に占拠されていた。夜暗がその不気味さをより一段と際立たせている。
その種類は日本人形に陶器人形、と様々だ。それらが暗闇のなかで静かにたたずんでいる。どうやら日本人形は日本人形、陶器人形は陶器人形で分けて置かれているようだ。なかでも気になったのが市松人形だった。
乱れた髪の間から小さな目をのぞかせ、その吸い込まれそうな黒い目でじっとこちらを見つめている。一様に表情はない。暗闇で白い顔が浮かんでいるように見え、おどろおどろしい。その小さな口で今にも語りかけてきそうだ。他の人形同様、その数は数えきれない。

 スマートフォンを録画状態のまま一旦、朱色の柱にもたれさせるように地面に置くと、本殿の賽銭箱に革財布から取り出した小銭を一枚入れ、目を瞑って拝んだ。拝んでいる間も人形からの視線が気になって仕方がない。とても願い事などできる雰囲気ではない。「良縁に恵まれますように」という三十代独身男の切実な願いを別の言葉で上書きする。

――お邪魔しております。写真と動画を撮らせていただきます。夜分遅くにお騒がせして申し訳ございません

自分でも誰に対して言っているのか分からなかった。ただ、なんとなく言っておいた方がいい気がしただけだった。「単なる自己満足だ」と言われれば、それまでのことだ。



 その見えない誰かの返事を待たずに、私は動画撮影を再開した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

怪談実話 その4

紫苑
ホラー
今回は割とほのぼの系の怪談です(笑)

怪談実話 その1

紫苑
ホラー
本当にあった話のショートショートです…

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

処理中です...