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「一色 神速・T・スカリ』
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「あっ。そう言えば……」
普段呑むことのないお酒を楽しんでいると蒼穹がそんな声を上げた。
そして懐から出した何かが入った封筒をスカリの前へ。
「車に落ちてたから。今日、ここに運んであげた人のだと思うから返しといて」
「おっけ」
スカリは返事をしながら封筒を手に取り中を覗いた。
そこに入っていたのは一丁の拳銃。スカリは中に手を入れそれを取り出した。
「ちょっと。折角、袋に入れて来たのに」
「まぁ大丈夫でしょ」
「そんな物お店で出さないでよね」
そう言いつつもメーナはスカリの手から銃を取った。そして慣れた手付きで弾倉を抜き、薬室から弾を取り出した。更に軽く分解まで。
「えっ! メーナさんそんな事出来るの?」
「まぁ昔解剖もしてたから」
「それって人の話ですよね?」
「そうだけど?」
「関係あります?」
蒼穹の的を射た言葉にメーナは微笑みで返し、部品に分かれた銃を何やら見ていた。そして限界まで分解すると目の前に並べ顔を上げた。
「十秒以内に組み立てられたらさっきのお酒、もう一杯頼んでもらおうかな」
「いいですよ。じゃあ越えたらお店の奢りということで」
「いいわよ。それじゃあ時間はよろしくね」
「はーい」
スカリはスマホを取り出しストップウォッチを開いた。
「いくよ?」
「いつでもどうぞ」
「よーい、スタート!」
掛け声の直後、メーナは迷いのない手捌きで銃を組み立て始めた。的確に部品を選び、流れるように填め瞬く間に銃は形を成していく。
そしてマジックでも見ているかのように銃は元通りになり、最後はスライドがゴールの音を鳴らした。
「どうだった?」
蒼穹が結果をスカリに尋ねるとスマホを見せながら結果発表。
「六秒」
「ご注文ありがとうございまーす」
少し弾んだ口調でメーナは早速、グラスにあのウイスキーを注ぎ込んだ。
「えぇー! すっご……」
その隣でまじまじとスマホを見つめるスカリは押し出される様に呟いた。
「練習すれば出来るようになるわよ」
ボトルを置いたメーナはそう言いながら銃をスカリの前へ。
「それはさて置き。それ、細工されてるわね」
「細工?」
「そう。引き金を引いても弾が出ないようになってるわね」
「ほんとに?」
説明を聞きながら銃を握ったスカリは疑念を抱きながらも銃口を蒼穹へと向けた。グラスを片手に銃口と目を合わせた蒼穹は静かに苦笑いを浮かべた。
「ちょっと止めてくれない? 普通に怖いし」
「えぇー? メーナさん信じないの? ……あとあたしも」
「信じる信じないじゃなくてさ……というかスカリはただ撃つだけじゃん」
「でも大丈夫なんですよね?」
スカリは銃を構えたまま顔をメーナへと向けた。
「部品足りなかったからね。なんなら私に撃ってもいいわよ」
人差し指を挑発するように動かし自信満々な様子。
「じゃあ手にしとこうかな」
そう言うとスカリは自分の反対の手で銃口を覆い、恐怖も迷いもなく引き金を引いた。
だがメーナの言う通り掌に穴が開くことも銃が声を上げることもなかった。連続して何度も引き金を引くが、何度やっても結果は同じ。
「もしかしてイカれてる?」
「人を狂人呼ばわり止めてよ。あたしはただ先生を心の底から信じてるの」
「普通は弾が入ってないって知ってても嫌だよ」
「つまりどっちもたま無しってこと?」
上手く掛けたとドヤ顔を浮かべるスカリとカウンター越しで笑みを零すメーナ。
そんな二人に対し蒼穹は少し多めにお酒を呑み込んだ。
「その発言は今の時代にっていうのは置いておいて――そこまで言われたら僕も黙ってる訳にはいかないかな。メーナさんの前じゃね」
「あたしは?」
「なに? カッコいいとこでも見せてくれるの?」
「おーい。あたしは?」
「僕だって度胸は持ち合わせてますよ」
そう言うと蒼穹は体ごとスカリの方へ向けた。
「さっ、いいよ。頭でもどこでも」
全てを受け入れると両手を広げて見せる蒼穹の表情は悠然としていた。
「でもこれもうあたしが試したから絶対に安全って分かるじゃん」
安全と言う言葉を口にしながらスカリは、自分の蟀谷と銃口に口付けを交わさせ引き金を引いた。嫌がらせのように連続で何度も。
「はい残念。あなたは最早ただの二番煎じで何の意味もありませーん」
「分かった。僕の負けでいいよ」
「という事で奢りでさっきの高いのをもう一杯」
「どうぞ」
自分では絶対に呑まないお酒は二杯目だが、タダで呑めている事を考えれば二勝目だろう。一口目から連続で二口目まで呑んだスカリはコースターの隣に置いた銃を見つめていた。
「でもこれって壊れてた訳じゃないんだよね?」
「細工かジャンクでも掴まされたかでしょうね。少なくとも運悪くでそうはならないわ」
「それってもしこれで誰かを殺そうとしても無理ってことか……」
「まぁ殴ってなら弾は関係ないけどね」
「昨日ので何か面倒事?」
「どーだろう。もう関係ないって言えばそうだし」
煮え切らない表情の顔を僅かに傾げながらスカリは銃を手に取り封筒へと仕舞った。
普段呑むことのないお酒を楽しんでいると蒼穹がそんな声を上げた。
そして懐から出した何かが入った封筒をスカリの前へ。
「車に落ちてたから。今日、ここに運んであげた人のだと思うから返しといて」
「おっけ」
スカリは返事をしながら封筒を手に取り中を覗いた。
そこに入っていたのは一丁の拳銃。スカリは中に手を入れそれを取り出した。
「ちょっと。折角、袋に入れて来たのに」
「まぁ大丈夫でしょ」
「そんな物お店で出さないでよね」
そう言いつつもメーナはスカリの手から銃を取った。そして慣れた手付きで弾倉を抜き、薬室から弾を取り出した。更に軽く分解まで。
「えっ! メーナさんそんな事出来るの?」
「まぁ昔解剖もしてたから」
「それって人の話ですよね?」
「そうだけど?」
「関係あります?」
蒼穹の的を射た言葉にメーナは微笑みで返し、部品に分かれた銃を何やら見ていた。そして限界まで分解すると目の前に並べ顔を上げた。
「十秒以内に組み立てられたらさっきのお酒、もう一杯頼んでもらおうかな」
「いいですよ。じゃあ越えたらお店の奢りということで」
「いいわよ。それじゃあ時間はよろしくね」
「はーい」
スカリはスマホを取り出しストップウォッチを開いた。
「いくよ?」
「いつでもどうぞ」
「よーい、スタート!」
掛け声の直後、メーナは迷いのない手捌きで銃を組み立て始めた。的確に部品を選び、流れるように填め瞬く間に銃は形を成していく。
そしてマジックでも見ているかのように銃は元通りになり、最後はスライドがゴールの音を鳴らした。
「どうだった?」
蒼穹が結果をスカリに尋ねるとスマホを見せながら結果発表。
「六秒」
「ご注文ありがとうございまーす」
少し弾んだ口調でメーナは早速、グラスにあのウイスキーを注ぎ込んだ。
「えぇー! すっご……」
その隣でまじまじとスマホを見つめるスカリは押し出される様に呟いた。
「練習すれば出来るようになるわよ」
ボトルを置いたメーナはそう言いながら銃をスカリの前へ。
「それはさて置き。それ、細工されてるわね」
「細工?」
「そう。引き金を引いても弾が出ないようになってるわね」
「ほんとに?」
説明を聞きながら銃を握ったスカリは疑念を抱きながらも銃口を蒼穹へと向けた。グラスを片手に銃口と目を合わせた蒼穹は静かに苦笑いを浮かべた。
「ちょっと止めてくれない? 普通に怖いし」
「えぇー? メーナさん信じないの? ……あとあたしも」
「信じる信じないじゃなくてさ……というかスカリはただ撃つだけじゃん」
「でも大丈夫なんですよね?」
スカリは銃を構えたまま顔をメーナへと向けた。
「部品足りなかったからね。なんなら私に撃ってもいいわよ」
人差し指を挑発するように動かし自信満々な様子。
「じゃあ手にしとこうかな」
そう言うとスカリは自分の反対の手で銃口を覆い、恐怖も迷いもなく引き金を引いた。
だがメーナの言う通り掌に穴が開くことも銃が声を上げることもなかった。連続して何度も引き金を引くが、何度やっても結果は同じ。
「もしかしてイカれてる?」
「人を狂人呼ばわり止めてよ。あたしはただ先生を心の底から信じてるの」
「普通は弾が入ってないって知ってても嫌だよ」
「つまりどっちもたま無しってこと?」
上手く掛けたとドヤ顔を浮かべるスカリとカウンター越しで笑みを零すメーナ。
そんな二人に対し蒼穹は少し多めにお酒を呑み込んだ。
「その発言は今の時代にっていうのは置いておいて――そこまで言われたら僕も黙ってる訳にはいかないかな。メーナさんの前じゃね」
「あたしは?」
「なに? カッコいいとこでも見せてくれるの?」
「おーい。あたしは?」
「僕だって度胸は持ち合わせてますよ」
そう言うと蒼穹は体ごとスカリの方へ向けた。
「さっ、いいよ。頭でもどこでも」
全てを受け入れると両手を広げて見せる蒼穹の表情は悠然としていた。
「でもこれもうあたしが試したから絶対に安全って分かるじゃん」
安全と言う言葉を口にしながらスカリは、自分の蟀谷と銃口に口付けを交わさせ引き金を引いた。嫌がらせのように連続で何度も。
「はい残念。あなたは最早ただの二番煎じで何の意味もありませーん」
「分かった。僕の負けでいいよ」
「という事で奢りでさっきの高いのをもう一杯」
「どうぞ」
自分では絶対に呑まないお酒は二杯目だが、タダで呑めている事を考えれば二勝目だろう。一口目から連続で二口目まで呑んだスカリはコースターの隣に置いた銃を見つめていた。
「でもこれって壊れてた訳じゃないんだよね?」
「細工かジャンクでも掴まされたかでしょうね。少なくとも運悪くでそうはならないわ」
「それってもしこれで誰かを殺そうとしても無理ってことか……」
「まぁ殴ってなら弾は関係ないけどね」
「昨日ので何か面倒事?」
「どーだろう。もう関係ないって言えばそうだし」
煮え切らない表情の顔を僅かに傾げながらスカリは銃を手に取り封筒へと仕舞った。
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