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すると次の瞬間――天井を貫き、無数の雷の雨が王の間へと降り注いだ。破壊した天井の破片と共に降り注ぐが、床へ到達すると黒く焦がす程度で罅すら入らない。一方で床までの間に王座や装飾品に触れればそれは一瞬にして砕散。
不規則に降り注いでいるように見える雷だったが、それはアストルとロベットだけを綺麗に避けていた。その中を通りアストルはロベットの元へ。そして肩を貸し立ち上がらせると丁度、落ちてきた雷が開けた壁の穴から城を飛び出した。
頭上から襲い掛かる落雷を刀で悠々と防ぐルシフェルは、それを見るとすぐには動き出さず指示を仰ぐ視線をペペの方へ。依然と王座に腰掛けているペペは隣のアルバニアが魔力で作り出した傘の下、ルシフェルと目を合わせた。
丁度そのタイミングで降り止んだ雷。
ペペはすぐには返事をせずに一度、部屋中へ目をやり、最後に王座の後ろを魔王を崩さずに確認した。それから再び視線をルシフェルへと戻した。
「まぁ別に目的って訳じゃないし追う必要は無いでしょ。それに多分もう追えないだろうし」
そう言って王座から立ち上がると大きく伸びをひとつ。
「この国にクラガンの兵士は?」
「いえ。あの二人以外は全て排除致しました」
「ここの王様とか兵士の人はどこにいるんだろう」
ペペは最悪の場合に胸がざわつくのを感じながら一度見た王の間を見回す。
「ルシフェルが戦闘をしている間に魔力を使用し探索致しましたが、地下の牢に閉じ込められているようです。王と王妃、そして数名の兵士を確認出来ました」
「良かった。無事だったんだね」
言葉と共に零したそれは魔王とは相反するような安堵の溜息。
「じゃあ鍵だけ開けて僕らはさっさと帰ろうか」
「承知いたしました」
それからアルバニアは魔力で(探索した時と同じ)小さな虫を生み出すと地下牢へと飛ばし、その間にゲートを創り出すと魔王城と繋げた。そして魔王城へと戻ると、ルシフェルは夕食の準備に取り掛かりペペは少し休憩した後にお風呂へ。アルバニアには次の為に様々な準備を整えていた。
「そう言えばルシフェル。手、怪我してたのにこれ作ったの?」
三人で並び夕食を食べている途中、なんとなく今日という日を思い返していたペペはミシェルとの戦いを思い出し自分が食べている料理を指差した。
ペペからの質問にルシフェルは食べる手を止めてはナイフとフォークを置き、左手を上げて見せた。
「魔力を使用しましたので傷は塞がっています」
その言葉通り掌に開いていた穴は塞がりほぼ完治したと言っても過言ではない状態。
「なら良かった」
「心遣い感謝します」
座ったまま深く頭を下げるルシフェル。
「いやいや。今日はご苦労様。あと美味しい夕食も」
それに対し軽く頭を下げ返すペペ。
それから夕食を食べ終わり三人はデザートを楽しんでいた。
「あのミシェルって人はどうだった? 魔力与えたら結構いけるかな?」
その質問は当然ながら実際に戦ったルシフェルへ。
「人間としては悪くないとは思いますが、まだ先があるかと。ですが、現状でもそこら辺の兵よりは使えるかと思います」
「んー。確かにあそこの国王様もこれからもっと騎士団団長として成長するって言ってたしなぁ」
悩みながらもデザートを食べる手は止まらないペペ。
だがその甘さによる効果なのか食べた直後、ペペの脳内でアイディアの電球が灯った。
「じゃあ、ルシフェルが鍛えるってのはどう? いい感じまで鍛えてからだったら結構な戦力になるんじゃない? それとも先に魔力注いでそれから鍛える方が良い?」
「やはり基盤を整えてからの方が確実ではあると思います。下手に魔力へ逃げられては厄介ですので。ですが全てはペペ様のご判断のままに」
「それじゃああの子はルシフェルに任せようかな。四天王の一人になれるぐらい鍛えちゃってよ」
「はい」
「期待してるからね」
「お任せ下さい。必ずやペペ様のご期待にお答えします」
深々としたお辞儀を見ながらペペは満足気にデザートを口へ運ぶ。
「ではペペ様。次はどのように致しましょうか?」
そんなペペにアルバニアは次の行動について尋ねた。
「そうだなぁ。やっぱり暫くは陣取り合戦みたいになってくるだろうね」
「では次なる目的地は、テラース創会という場所がよろしいかと」
「テラース創会? 何だか国っぽくない名前だね」
「はい。少々特殊な場所になります。そこら辺も含め、また後日ご説明させて頂きます」
「うん。お願い」
そして今日もデザートまで堪能したペペは夜の時間を過ごし、眠りに就いた。いつの日かこの世界を征服するその時を夢見て。
<魔王となり初めての任務。それは全てがペペにとって思わぬ方向へと進む事になったが、アルバニアとルシフェルという新たな仲間と共に異例の征服を果たそうとペペは再び立ち上がった。
人形だったはずの二人は一体何者なのだろうか? そして冒険をする側となった魔王ペペは無事、勇者を倒しこの世界を征服する事が出来るのだろうか?>
不規則に降り注いでいるように見える雷だったが、それはアストルとロベットだけを綺麗に避けていた。その中を通りアストルはロベットの元へ。そして肩を貸し立ち上がらせると丁度、落ちてきた雷が開けた壁の穴から城を飛び出した。
頭上から襲い掛かる落雷を刀で悠々と防ぐルシフェルは、それを見るとすぐには動き出さず指示を仰ぐ視線をペペの方へ。依然と王座に腰掛けているペペは隣のアルバニアが魔力で作り出した傘の下、ルシフェルと目を合わせた。
丁度そのタイミングで降り止んだ雷。
ペペはすぐには返事をせずに一度、部屋中へ目をやり、最後に王座の後ろを魔王を崩さずに確認した。それから再び視線をルシフェルへと戻した。
「まぁ別に目的って訳じゃないし追う必要は無いでしょ。それに多分もう追えないだろうし」
そう言って王座から立ち上がると大きく伸びをひとつ。
「この国にクラガンの兵士は?」
「いえ。あの二人以外は全て排除致しました」
「ここの王様とか兵士の人はどこにいるんだろう」
ペペは最悪の場合に胸がざわつくのを感じながら一度見た王の間を見回す。
「ルシフェルが戦闘をしている間に魔力を使用し探索致しましたが、地下の牢に閉じ込められているようです。王と王妃、そして数名の兵士を確認出来ました」
「良かった。無事だったんだね」
言葉と共に零したそれは魔王とは相反するような安堵の溜息。
「じゃあ鍵だけ開けて僕らはさっさと帰ろうか」
「承知いたしました」
それからアルバニアは魔力で(探索した時と同じ)小さな虫を生み出すと地下牢へと飛ばし、その間にゲートを創り出すと魔王城と繋げた。そして魔王城へと戻ると、ルシフェルは夕食の準備に取り掛かりペペは少し休憩した後にお風呂へ。アルバニアには次の為に様々な準備を整えていた。
「そう言えばルシフェル。手、怪我してたのにこれ作ったの?」
三人で並び夕食を食べている途中、なんとなく今日という日を思い返していたペペはミシェルとの戦いを思い出し自分が食べている料理を指差した。
ペペからの質問にルシフェルは食べる手を止めてはナイフとフォークを置き、左手を上げて見せた。
「魔力を使用しましたので傷は塞がっています」
その言葉通り掌に開いていた穴は塞がりほぼ完治したと言っても過言ではない状態。
「なら良かった」
「心遣い感謝します」
座ったまま深く頭を下げるルシフェル。
「いやいや。今日はご苦労様。あと美味しい夕食も」
それに対し軽く頭を下げ返すペペ。
それから夕食を食べ終わり三人はデザートを楽しんでいた。
「あのミシェルって人はどうだった? 魔力与えたら結構いけるかな?」
その質問は当然ながら実際に戦ったルシフェルへ。
「人間としては悪くないとは思いますが、まだ先があるかと。ですが、現状でもそこら辺の兵よりは使えるかと思います」
「んー。確かにあそこの国王様もこれからもっと騎士団団長として成長するって言ってたしなぁ」
悩みながらもデザートを食べる手は止まらないペペ。
だがその甘さによる効果なのか食べた直後、ペペの脳内でアイディアの電球が灯った。
「じゃあ、ルシフェルが鍛えるってのはどう? いい感じまで鍛えてからだったら結構な戦力になるんじゃない? それとも先に魔力注いでそれから鍛える方が良い?」
「やはり基盤を整えてからの方が確実ではあると思います。下手に魔力へ逃げられては厄介ですので。ですが全てはペペ様のご判断のままに」
「それじゃああの子はルシフェルに任せようかな。四天王の一人になれるぐらい鍛えちゃってよ」
「はい」
「期待してるからね」
「お任せ下さい。必ずやペペ様のご期待にお答えします」
深々としたお辞儀を見ながらペペは満足気にデザートを口へ運ぶ。
「ではペペ様。次はどのように致しましょうか?」
そんなペペにアルバニアは次の行動について尋ねた。
「そうだなぁ。やっぱり暫くは陣取り合戦みたいになってくるだろうね」
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