ある物語

１3

結衣のゆうゆう自適生活は長くは続かなかった。
結衣は最近は仕事も減ってきた。AVの撮影の仕事の依頼も受けていた感じだった。
よしはるや自分との思い出を思い出し、苦笑した。
ここ最近、賢治と同棲していた。
結衣が仕事で手にいれたお金は賢治に貢いでいた。
自分は幸せになれる・・・結衣はそう信じていた。
結衣は裏で業界内で賢治の結衣のあだ名はペット呼ばわりしていた。

結衣は少し体に流れる寒気を感じ、毛布に包まり、自分の体を抱きしめた。
賢治が帰ると、結衣は電気もつけずに部屋にいた。

「電気ぐらいはつけろよ」賢治は言う。

そう言って、部屋のスイッチを賢治はつける。
結衣の姿が映しだされた。金髪で後遺症でくまだらけの顔、面影は薄れていた。

・・・沈黙は続く・・・

「愛しているの？私の事？」
「ああ。ああ。」賢治は答えた。

賢治にとっては、遊びの女、代わりの売れない女はいくらでもいた。
売れなくなってきてから賢治は結衣に冷たくなってきた。
クスリのおかげで、男にたいしてプライド高い、きつめの結衣の賢治をあしらう性格もおとなしくなっていく。
腹ペコの犬のようにクスリを求める自分。

「貴方がここまでしたんじゃない。責任とってよ」
「馬鹿言うな」

結衣は陶酔しながら、レコードの音楽をかける。

「ダンスしたいの、賢治が教えてくれた」

賢治は笑い、ダンスの仕方を教えてくれた。
その時、結衣はこのままでいいと思った。
そう言って賢治は、

「ごめん。別に好きな女ができたんだ」

それを聞いて、「どうゆう事よ」と賢治に詰め寄る。

「別れようと思う」
「捨てないで」そういうと、賢治を抱きしめようとした。
「ふん。本気だって」
「こんな毎日嫌」自制心が結衣を動かした。結衣は泣きながら、賢治の体に触れた。

賢治はその時、結衣の頬を勢いよく張り飛ばした。音楽の音量は下がってく。雑音が増えていく。
暗い中、結衣はナイフを手にとった。

「殺してやる・・・」

賢治はたじろぐ。
ナイフの手を掴むと、結衣を跳ね除け、

「ばかじゃね～本気になんてしやがって、付き合いだよ、この業界いい女なんていくらでもいるんだよ、飽きたんだよ」

結衣はそれを聞くと黙って理解した。

「クスリで終わった女あさり、最低」
そう言った後結衣は、
「ごめんなさい。どうかしてるよね」と倒れる。

賢治は笑って言った、

「クスリは渡すから、これまでどうり金は振り込んどいてくれ」賢治は言う。
結衣は「もう貴方とは縁をきりたい」
「へえ～俺がいないとどうなるんだ。おまえはもう俺のものだ。俺なしじゃ生きられない。クスリも手に入らなくなるぞ、俺が全てなんだよ、お前の」

それを聞くと結衣は声を振り絞って答えた。

「貴方なしでも生きていける！生きてやるわよ！」

結衣は賢治を突き飛ばし、マンションの扉を開けて、雨の降る夜に出て行った。音楽はそこで途切れた。
そして、結衣は走るのに疲れて、どしゃぶりの大雨の中、道端で泣いた。