ある物語

しんたろう

文字の大きさ
21 / 21

19

しおりを挟む
唯一の肉親の母が倒れてからは、実家で細々とやっていた。
親の面倒を見ながら生活を送っていた。
僕は仕事帰りに、厨房を片付けた。その夜は一人の寂しさから酒を飲んでいた。
酒を飲むながら、ぼうっとしていた。疲れたな・・・。僕はそう思う。
毎日、公園の近くの喫茶で、飲み物を飲み、景色をぼうっと見ている生活が何ヶ月も続いた。
そんな中、霧の残る静かな朝に僕はいた。日曜日である。
僕は自分で家事をこなし、台所椅子にもたれた。朝は静かだった。
僕は椅子にもたれ、物思いにふけっていると、玄関の靴置き場の自分が子供の頃買ってくれた一度も壊れた事のない鳩時計がチクチクと時間をきずむ音が聞こえた。
朝は静寂に包まれていた。
その音は自分い安堵感を教えてくれた。
僕はその音に合わせて指でリズムを刻んだ。
静寂と鳩時計が刻む中、僕は外出しようとして、家を出た。
階段を降りて行くと声が聞こえた。

「じゃ~ん、ひさしぶり」といった声だった。

僕はそちらに顔をやった。
結衣だった。
まさか都会からこんな地元まで来てくれないとは思っていた。
少し、戸惑った。

「ひさしぶり、会いたくなって来ちゃった。」
「へぇ、久々。」
少し戸惑いとも混じって不機嫌そうに僕は答えた。
「自分自身、気持ちの整理がこの半年つかなかった.]

「俺もだ、だんだんこの生活にも慣れてきたよ」
「少し歩かない。」
「近くで買い物しようとしていたんだ。いくよ。」
「頑張っているのね。」
「結衣もこんな遠くまで。僕自身もう会えないかと思ってた。」
「貴方のラジオ番組ありがとう。」

僕は少し笑った。

「気持ちが届けばそれでいい。」
「仕事大変?」
「ここの警察署の仕事も大変だ、ただ僕は今の人生落ち着けばそれでいい。ただ、たまに少し寂しくなる。」
「いきなり実家にかえるなんて。」
「その時は?」
「戸惑った、その時は。」その後結衣は言う。
「私、冷たい女で有名。とにかく会いたかった。
私、力になれるならなるのに。」
「バカだなぁ結衣も。」
「やり直さない2人で。」
「僕は気持ちを全部受け止めたい。結衣の全部を。」

僕は少し笑顔を見せた。

「好きだから。それ以上の関係になりたい。ここに住もうと私も思う」と結衣は言言った。

僕と結衣は笑顔で抱き合った。
朝やけの光が雲の切れ間から立ち込み、美しい世界をかもしだしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...