【異世界ラブコメ】勇者のわたしと魔王湊山くん

舞波風季

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第7話 もやもや魔王

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「うーーん……なんだか体がだるいなぁ……」

 今日は朝から調子が今ひとつだ。
 最近お気に入りのロイヤルミルクティーを飲んでも元気が出ない。

(色々あって疲れたのかなぁ……)

 なんて思っていると、ドアにノックがあった。

「王様がお呼びです、勇者様」
 と、メイドのレギナがにこやかに告げた。

 ――――――――

「勇者ミリア、魔王を討伐するのだ」
 いつものセリフをのたまう王様。
「了解、またぶっ飛ばしてくればいいのね」
(調子はイマイチだけど、まあ、なんとかなるでしょ……)
 そんなことを考えながら私が答えると、どうやらまた協力者がいるようで、

「今回は、王国騎士隊長が同行します」
 と、魔法使いじいさんが長身で中々のイケメンを紹介した。

「僕は騎士隊長のギール、もう心配はいらないよ、お嬢さん」
(お嬢さん?てか心配なんかしてないけど)

「君のような麗しい女性に魔王討伐などという野蛮な任務は相応しくないからね」
(野蛮……て言えば野蛮か。何度もぶっ飛ばしてるし、私が)

「僕がいれば魔王なんて恐れるに足らず、さ」
 そう言うと、ギールは前髪をかき上げながら私にウインクを飛ばしてきた。

(うわ、なんだコイツ……!)

 にわかに不安になってきたので、私は魔法使いじいさんに聞いた。
「あの、コイツ、じゃなかった、騎士隊長さんは強いの?」
「はい、隊長ですから」
「じゃ、単に身分が高いからなれた、ていうわけではないんだね」
「……」
(て、なんでそこで黙る!)

「ふ、騎士隊長は代々僕の家から出るしきたりなのさ」
(えらい自慢げだな)
 ということは弱くてもなれるということか。

(ま、いっか。当てにはしてないし)

「じゃあ、行きましょう」

 ――――――――

「あ、あの、勇者ミリア……」
「なに?」
「そこにいる人は……」
 私と騎士隊長が魔王の間に入ると、早速魔王湊山くんが聞いてきた。

「ああ、えっとね……」
 と、言いかけた私の言葉を遮るように騎士隊長が進み出た。
「君が魔王だね。僕は王国騎士隊長のギールだ」
「はあ、どうも……」
「勿論、僕のことは知っているね?」
「いや……」
「なっ……!」

(あ、今の結構効いたな)
 いいとこのお坊ちゃんらしく、チヤホヤされるのに慣れきってしまっているのだろう。

「代々騎士隊長という要職を預かる我がアント家を知らぬとは、なんたる不心得者だ!」
「不心得者って言っても奴は魔王だから当然でしょ、てか私だって知らなかったし」
 私は思わず口に出して突っ込んでしまった。

「ぐっ……まあいい、とにかく今後は君の相手は僕がすることになるだろうから覚悟しておくがいい、魔王!」
 と、ギールはビシッと魔王湊山を指差して言い渡した。
「いや、それはよく考えてからにしたほうがよくない?魔王は強いよ」

 そう、魔王は強い。バレンタインデーの時に私は魔王の強さの一端いったん垣間見かいまみた。

「勇者ミリア!あなたはどっちの味方なのですか!?」
「いや、どっちの味方とかじゃなくて、私は客観的事実を言っただけで……」
「それではまるで僕が魔王の相手にならないと言ってるみたいじゃないですか!」
「あ、うん、端的に言うと……そうかなぁって」
「なんですと!」

 なんて具合に私とギールが言い合っている間も、
「あ……あの……その……」
 と魔王が私たちの会話に間に入ろうとしていた。
「魔王様、落ち着いてください」
 隣の黒ローブ男が魔王をなだめている。
「でもさぁ……もしかしたらあの人……」
「その時はその時。諦めるのです」
「ええ……!?」

 なにやら魔王湊山くんと黒ローブ男がコショコショ話している。

「あ、ごめん、魔王。今日はこの騎士隊長が相手するから」
 私が言うと、
「あの、それより、その……」
「なに?」

(うーーん、また得意のもじもじが始まったな)

「騎士隊長さんは……その、カッコいいですね……
「え?そうか……」
「おお、話が分かるじゃないか、魔王!」
 私が疑問を呈する前にギールが被せてきた。
「なに、喜んでるのよ」
 おだてに喜ぶギールにツッコミを入れる私。

「とすると、勇者ミリアと騎士隊長は……」
「「?」」
「お、お、お付き合いとか、してるんですかっ!?」

「いや、なんでそうな……」
「いやぁーー君の慧眼けいがんには恐れ入るよ、魔王」
「って、おい!何言ってんの!」
「まあ、正式なお付き合いはまだだけど、これが終わったらすぐにでも勇者ミリアに交際を申し込もうと……」
「勝手に話を進めるなぁああーーーー!」

「やっぱり……」
 玉座でガックリとうなだれる魔王湊山くん。
「魔王様、お気を確かに!」
 なだめる黒ローブ男。
「お前らも鵜呑うのみにするなぁーー!」
 調子がイマイチだったところにこの展開で、私はかなり疲れてしまった。

「はぁ……とりあえず、今日は騎士隊長が相手をするから」
 ため息をつきながら私が言った。
「ふふふ、覚悟するがいい、魔王!」
 自信満々でギールが進み出た。

「あ、はい……」

(ふう……これで少し休めるかな)
 私は手近な柱に寄りかかって体を休めた。
 それにしても、ギールを見た魔王湊山くんがあんな反応をするなんて、私は思ってもみなかった。

(もし私がギールに気があるような匂わせをしたらどうするのかな……)

 などとふと、いたずら心が湧き上がってきたが。

(多分、真に受けてそのまま受け取っちゃうんだろうなぁ……)

 魔王湊山くんは駆け引きが通じる相手ではなさそうだ。

「いくぞ、魔王!」
 威勢だけは一人前のギールが、掛け声とともに魔王に斬りかかった。
 ギールにすれば渾身の一撃なのだろうが、魔王の剣を手にした魔王湊山くんに軽々とさばかれてしまった。

「中々やるな……だが、これならどうだぁーー!」
 ギールが連続攻撃で打ち込むが、魔王湊山くんは動じる様子もなく、全てを軽々と捌いている。

(やっぱあいつじゃ相手にならないよねぇ……)

 その気になればギールなんて簡単にぶっ飛ばせるはずだが、なぜか魔王湊山くんは攻撃しようとしない。

(しゃあない、私が一発打って終わらせちゃうか……)

 私は寄りかかっていた柱から離れ、戦っている二人の方へ踏み出した。

(……あれ私、ふらついてる……?)
 足元が覚束おぼつかないのが自分でも分かった。

「ごめん魔王、今日はぶっ飛ばしてあげられそうに……」

(ないかも……)

「勇者ミリア!」
 魔王湊山くんが物凄い勢いで私に向かって来た。

「何をする、魔王!」
 ギールが立ち塞がると、
「どけぇ!」
 と魔王湊山くんは腕の一振りでギールを壁まで吹っ飛ばした。

(はは……やっぱ強いわ、魔王……)

 そんなことを思っているうちにも、私は頭がボーっしてきた。

(やば……倒れるな、これ……)

 そう思った時、目の前に魔王湊山くんが来て、私の両肩を支えた。

「桜川さん!!」

(だから、本名で呼ぶなって……)

 そして、私の視界は真っ白になった。

 ――――――――
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