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第24話 綻び
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(来たね、湊山くん)
私は薄い緑色の防護結界越しに魔王軍を見ている。
魔王軍の中には既に防護結界の壁に攻撃を仕掛けてくるものも出始めた。
魔王軍の背後に現れた黒い靄は、今では前線にいる魔物にまで達しようかというところまできている。
(湊山くんはあの黒い靄の中にいるのかな)
「エルファ様、防護結界は大丈夫そうですか?」
「ええ、まだ大丈夫ですわ」
穏やかな笑顔で答えるエルファ。
結界を維持するためには妖精が一定量の魔力を注ぎ込み続けなければならない。
今のところ妖精たちに疲労などは見られないようだ。
「もしもの時は妖精さんたちを守ってあげてね、ギール」
「お任せあれ!」
そう言ってギールは既に配置している騎士隊員達に指示を出しに行った。
そうしているうちにも、じわじわと黒い靄は迫ってきた。
やがて緑色だった防護結界が靄で黒く染められていった。
ガン!
ガン!!
ガン!!!
魔物が防護結界を攻撃する音が段々と大きくなっていく。
そして、
ズン!
ズン!!
ズン!!!
と地面を揺らすような衝撃も伝わってくる。
「皆さん、ここが頑張りどころですわよ!」
自らも防護結界に魔力を注ぎながらエルファが叫ぶ。
「「「「「はい!!」」」」」
妖精十二使徒たちも全力で魔力を注ぎながら答える。
「エルファ様、あの黒い靄のせいで魔物が強くなってない?」
私はエルファに聞いた。
「……ですわね。思っているより早く破られてしまうかもしれません」
じんわりと汗をかきながらエルファが答えた。
(今のうちになんとかしなきゃ)
と思ったところでグルヌが言った。
「トーラ、俺達で結界が弱くなっているところを見て回るぞ」
「結界が弱く……そうか!」
グルヌの提案にトーラが何かに気づいたようだ。
「何かいい考えがあるの?」
私が聞くと、
「ああ、もし結界が破られたら逆にそれを利用するんだ」
「利用する?」
グルヌの言わんとすることが私には今ひとつ分からなかった。
「闇妖精部隊を投入して幻影魔法で撹乱するんだね」
「そういうことだ」
「できるの?」
トーラとグルヌに私が聞いた。
「やってみて損はないと思うぜ」
「そうだよ、できるだけのことをやるんだ」
「そうね……うん、お願いするわ」
グルヌとトーラの言葉に元気付けられて私は言った。
(うん、大丈夫、大丈夫……!)
間もなくすると闇妖精部隊から報告があった。
「結界が破られそうなところがあります!」
「よし、行くぞ!」
「おう!」
グルヌとトーラはそれぞれ指示を出して、自身も向かった。
どうしようかと迷ったが、私もグルヌとトーラについて行った。
「闇妖精部隊は突入して魔物を無力化するぞ!」
と、グルヌ。
「無力化って眠らせるの?」
私が聞くと、
「ああ、それか麻痺だな。前線に出てきているのはゴブリンやオーク達だ。それほど知力は高くない。無力化できるだろう」
「知力が高い魔物相手だと効かないの?悪魔とか」
「多分睡眠も麻痺も効かないだろう」
渋い顔でグルヌが言う。
「それと、こっちがかけた魔法を無効化してくるかもしれないよ」
そう言うのは闇の女帝トーラだ。
「それじゃ、悪魔が来たら一気に攻め込まれちゃうんじゃない?」
「その時はあたし達、闇妖精部隊レディースが出ていくよ」
「レディース!」
(なんかすごいネーミングね)
「闇の女帝」といい「天下無双の男たらし」といい、トーラのネーミングセンスはちょっと変わっているようだ。
「ダークエルフは女のほうが魔力が高いからね。対抗魔法で応戦するよ」
そう言ってトーラは闇妖精部隊レディース達に指示を飛ばした。
皆の頼もしい姿を見ていると、このまま魔王軍を後退させられるのではないか、という気持ちになる。
(それで魔王湊山くんが正気に戻ってくれれば……)
また元の王国と魔王国の関係に戻れる。そして今までどおり仲良くできる。
(そうだわ!そうすれば湊山くんを倒す必要もなくなる!)
程なくして、結界に綻びが出始めたと、妖精十二使徒の一人から報告があった。
「よし、魔物が出てくる前に突入だ!」
グルヌの号令で次々と闇妖精部隊が防護結界を超えていった。
「あたし達も行くよ!」
トーラが闇妖精部隊レディースを引き連れて突入していった。
妖精たちは後方に下がり、魔物の突入に備えて騎士隊が壁を作った。
「魔物の侵入に備えろ!」
ギールの命令に騎士隊が槍を構えた。
(みんな、お願い……!)
しばらくすると防護結界を攻撃する音が止んだ。
闇妖精部隊員が戻ってきて、
「前線まで来ていた魔物はほぼ無力化できました」
と報告してくれた。
「悪魔はどこまできているか分かる?」
「今グルヌ様とトーラ様が魔王軍の奥まで進んで調べています」
「え?二人だけで行ったの」
「はい」
背筋が寒くなるような嫌な予感がした。
(あの二人なら大丈夫だよね……)
トーラはエルファに匹敵する魔力の持ち主だ。魔王湊山くんの魔力の圧にも耐えることができた程だ。
「トーラなら大丈夫ですわ」
「……ですよね」
私が暗い顔をしていたのだろう、エルファが励ますように言ってくれた。
いざとなればグルヌがいる。魔力はさほどでもないが、彼の速さはついさっき私自身が経験した。
防護結界への攻撃が止んでから随分経った頃、綻んだ箇所を監視していた騎士隊がざわついた。
綻びから次々と闇妖精部隊とレディース隊員達が出てきたのだ。
その顔には明らかな焦燥感《しょうそうかん》が表れていた。
「何かあったの!?」
私は駆け寄って、今出てきたばかりの隊員に聞いた。
「トーラ様が……」
そう答える彼の表情も疲労と焦燥の色が濃い。
「トーラさんが……」
一気に血の気が引いた。
そこにグルヌがトーラを抱きかかえて出てきた。
「……トーラを、頼む……」
息も絶え絶えでそう言うと、グルヌは地面に膝をついた。
「グルヌさん!」
私は倒れそうになるグルヌを膝をついて支えた。
グルヌに抱きかかえられたトーラの顔には血の気がない。
「トーラさん……」
重い石のような恐怖がみぞおちに落ちてきた。
エルファがすぐに駆けつけてきた。そして、トーラの額や胸に手を当てた。
「魔力が枯渇しかかってますわ」
そう言うとエルファの魔力が膨れ上がり、トーラの胸に当てていた手が緑色に光った。
「これは応急の処置です。すぐに救護所で休ませないと」
そう言ってエルファが周囲を見た時、
「あたしに任せてくれ」
そう言って一人のダークエルフの女性が駆けつけてきた。
「ナアシュさん……!」
エルファの表情が明るくなった。
「世話になったね、エルファ様。あとはあたしがこの子を診るよ」
そう言って、ナアシュと呼ばれたダークエルフは軽々とトーラを抱え上げた。
そして、座り込んでいるグルヌを見た。
「小言は後にしてやるか」
そう呟くと小走りで後方に駆けていった。
私はもの問いたげにエルファを見た。
「グルヌさんの奥様ですわ。トーラさんの義理のお姉様ですわね」
とエルファが教えてくれた。
「あの人が」
(キリッとしてて頼もしい感じの人だな……)
「勇者様……」
ヨロヨロとしながら立ち上がったグルヌが私の方に歩いてきた。
「グルヌさん、まだ立ち上がっちゃ……」
妖精がグルヌに寄り添いながら言った。
グルヌは妖精に応急で回復してもらったようだが、まだ回復が足りないのは明らかだった。
「グルヌさん、フラついてるじゃない!」
私も駆け寄ってグルヌを支えた。
「勇者様、ここはもう、保《も》たないかも……」
「え……?」
「前線を下げて、王城で守りを……」
肩で息をしながら話すグルヌ。
「グルヌさん、無理をしたらいけません」
そう言って妖精がグルヌに治癒魔法をかける。
「エルファ様、前線を王城まで下げることはできそうですか?」
私が聞くと、
「かなり困難ではありますけれど……」
エルファはしばらく真剣な表情で考えてから答えた。
「私の考えだけど、グルヌさんとトーラさんに何があったのか詳しく聞いたほうがいいと思うんです」
私はエルファを真正面から見て言った。
「なんでトーラさんがあそこまで弱ってしまったのか。
グルヌさんが王城まで前線を下げるべきだと考える根拠は何なのか。
二人が回復して話を聞ける状態になるまで時間を稼ぐためにも、前線を下げるのはありだと思うんです」
エルファは私の言葉を真剣に聞いて吟味《ぎんみ》してくれている。
「前線を下げるために何をしなければならないのか、どういう困難があるのか、それを教えてください、エルファ様」
「……分かりましたわ」
やっとのことでエルファが答えてくれた。
「前線を下げるということは‘、今ある防護結界を一時的に解かなければならないということなのです」
「今ある防護結界を残したまま後方に新たな防護結界を張ることはできないのでしょうか?」
「防護結界を維持するためには多くの魔力を注入し続ける必要があります。二つの防護結界を同時に維持することは大変危険です」
「妖精さんたちの魔力が枯渇してしまうかもしれない、ということなのですね」
「ええ……」
先程のトーラの様子を見れば、魔力の枯渇がどれほど危険なことなのかいやでもよく分かる。
「ということは、防護結界を張り替える間に魔王軍が攻めてきたら、真正面から戦わなければならないということですね」
「ええ、そうなります……」
答えるエルファは苦しげだ。
「分かりました」
私は迷いなく答えた。
「え……?」
エルファにしたら、私の反応は明らかに予想外だったようだ。
「私が魔王軍の侵攻を防ぎます」
「ええ!?」
「だって、私は勇者ですから」
私は自分でも不思議なくらいスッキリとした気持ちでそう言った。
私は薄い緑色の防護結界越しに魔王軍を見ている。
魔王軍の中には既に防護結界の壁に攻撃を仕掛けてくるものも出始めた。
魔王軍の背後に現れた黒い靄は、今では前線にいる魔物にまで達しようかというところまできている。
(湊山くんはあの黒い靄の中にいるのかな)
「エルファ様、防護結界は大丈夫そうですか?」
「ええ、まだ大丈夫ですわ」
穏やかな笑顔で答えるエルファ。
結界を維持するためには妖精が一定量の魔力を注ぎ込み続けなければならない。
今のところ妖精たちに疲労などは見られないようだ。
「もしもの時は妖精さんたちを守ってあげてね、ギール」
「お任せあれ!」
そう言ってギールは既に配置している騎士隊員達に指示を出しに行った。
そうしているうちにも、じわじわと黒い靄は迫ってきた。
やがて緑色だった防護結界が靄で黒く染められていった。
ガン!
ガン!!
ガン!!!
魔物が防護結界を攻撃する音が段々と大きくなっていく。
そして、
ズン!
ズン!!
ズン!!!
と地面を揺らすような衝撃も伝わってくる。
「皆さん、ここが頑張りどころですわよ!」
自らも防護結界に魔力を注ぎながらエルファが叫ぶ。
「「「「「はい!!」」」」」
妖精十二使徒たちも全力で魔力を注ぎながら答える。
「エルファ様、あの黒い靄のせいで魔物が強くなってない?」
私はエルファに聞いた。
「……ですわね。思っているより早く破られてしまうかもしれません」
じんわりと汗をかきながらエルファが答えた。
(今のうちになんとかしなきゃ)
と思ったところでグルヌが言った。
「トーラ、俺達で結界が弱くなっているところを見て回るぞ」
「結界が弱く……そうか!」
グルヌの提案にトーラが何かに気づいたようだ。
「何かいい考えがあるの?」
私が聞くと、
「ああ、もし結界が破られたら逆にそれを利用するんだ」
「利用する?」
グルヌの言わんとすることが私には今ひとつ分からなかった。
「闇妖精部隊を投入して幻影魔法で撹乱するんだね」
「そういうことだ」
「できるの?」
トーラとグルヌに私が聞いた。
「やってみて損はないと思うぜ」
「そうだよ、できるだけのことをやるんだ」
「そうね……うん、お願いするわ」
グルヌとトーラの言葉に元気付けられて私は言った。
(うん、大丈夫、大丈夫……!)
間もなくすると闇妖精部隊から報告があった。
「結界が破られそうなところがあります!」
「よし、行くぞ!」
「おう!」
グルヌとトーラはそれぞれ指示を出して、自身も向かった。
どうしようかと迷ったが、私もグルヌとトーラについて行った。
「闇妖精部隊は突入して魔物を無力化するぞ!」
と、グルヌ。
「無力化って眠らせるの?」
私が聞くと、
「ああ、それか麻痺だな。前線に出てきているのはゴブリンやオーク達だ。それほど知力は高くない。無力化できるだろう」
「知力が高い魔物相手だと効かないの?悪魔とか」
「多分睡眠も麻痺も効かないだろう」
渋い顔でグルヌが言う。
「それと、こっちがかけた魔法を無効化してくるかもしれないよ」
そう言うのは闇の女帝トーラだ。
「それじゃ、悪魔が来たら一気に攻め込まれちゃうんじゃない?」
「その時はあたし達、闇妖精部隊レディースが出ていくよ」
「レディース!」
(なんかすごいネーミングね)
「闇の女帝」といい「天下無双の男たらし」といい、トーラのネーミングセンスはちょっと変わっているようだ。
「ダークエルフは女のほうが魔力が高いからね。対抗魔法で応戦するよ」
そう言ってトーラは闇妖精部隊レディース達に指示を飛ばした。
皆の頼もしい姿を見ていると、このまま魔王軍を後退させられるのではないか、という気持ちになる。
(それで魔王湊山くんが正気に戻ってくれれば……)
また元の王国と魔王国の関係に戻れる。そして今までどおり仲良くできる。
(そうだわ!そうすれば湊山くんを倒す必要もなくなる!)
程なくして、結界に綻びが出始めたと、妖精十二使徒の一人から報告があった。
「よし、魔物が出てくる前に突入だ!」
グルヌの号令で次々と闇妖精部隊が防護結界を超えていった。
「あたし達も行くよ!」
トーラが闇妖精部隊レディースを引き連れて突入していった。
妖精たちは後方に下がり、魔物の突入に備えて騎士隊が壁を作った。
「魔物の侵入に備えろ!」
ギールの命令に騎士隊が槍を構えた。
(みんな、お願い……!)
しばらくすると防護結界を攻撃する音が止んだ。
闇妖精部隊員が戻ってきて、
「前線まで来ていた魔物はほぼ無力化できました」
と報告してくれた。
「悪魔はどこまできているか分かる?」
「今グルヌ様とトーラ様が魔王軍の奥まで進んで調べています」
「え?二人だけで行ったの」
「はい」
背筋が寒くなるような嫌な予感がした。
(あの二人なら大丈夫だよね……)
トーラはエルファに匹敵する魔力の持ち主だ。魔王湊山くんの魔力の圧にも耐えることができた程だ。
「トーラなら大丈夫ですわ」
「……ですよね」
私が暗い顔をしていたのだろう、エルファが励ますように言ってくれた。
いざとなればグルヌがいる。魔力はさほどでもないが、彼の速さはついさっき私自身が経験した。
防護結界への攻撃が止んでから随分経った頃、綻んだ箇所を監視していた騎士隊がざわついた。
綻びから次々と闇妖精部隊とレディース隊員達が出てきたのだ。
その顔には明らかな焦燥感《しょうそうかん》が表れていた。
「何かあったの!?」
私は駆け寄って、今出てきたばかりの隊員に聞いた。
「トーラ様が……」
そう答える彼の表情も疲労と焦燥の色が濃い。
「トーラさんが……」
一気に血の気が引いた。
そこにグルヌがトーラを抱きかかえて出てきた。
「……トーラを、頼む……」
息も絶え絶えでそう言うと、グルヌは地面に膝をついた。
「グルヌさん!」
私は倒れそうになるグルヌを膝をついて支えた。
グルヌに抱きかかえられたトーラの顔には血の気がない。
「トーラさん……」
重い石のような恐怖がみぞおちに落ちてきた。
エルファがすぐに駆けつけてきた。そして、トーラの額や胸に手を当てた。
「魔力が枯渇しかかってますわ」
そう言うとエルファの魔力が膨れ上がり、トーラの胸に当てていた手が緑色に光った。
「これは応急の処置です。すぐに救護所で休ませないと」
そう言ってエルファが周囲を見た時、
「あたしに任せてくれ」
そう言って一人のダークエルフの女性が駆けつけてきた。
「ナアシュさん……!」
エルファの表情が明るくなった。
「世話になったね、エルファ様。あとはあたしがこの子を診るよ」
そう言って、ナアシュと呼ばれたダークエルフは軽々とトーラを抱え上げた。
そして、座り込んでいるグルヌを見た。
「小言は後にしてやるか」
そう呟くと小走りで後方に駆けていった。
私はもの問いたげにエルファを見た。
「グルヌさんの奥様ですわ。トーラさんの義理のお姉様ですわね」
とエルファが教えてくれた。
「あの人が」
(キリッとしてて頼もしい感じの人だな……)
「勇者様……」
ヨロヨロとしながら立ち上がったグルヌが私の方に歩いてきた。
「グルヌさん、まだ立ち上がっちゃ……」
妖精がグルヌに寄り添いながら言った。
グルヌは妖精に応急で回復してもらったようだが、まだ回復が足りないのは明らかだった。
「グルヌさん、フラついてるじゃない!」
私も駆け寄ってグルヌを支えた。
「勇者様、ここはもう、保《も》たないかも……」
「え……?」
「前線を下げて、王城で守りを……」
肩で息をしながら話すグルヌ。
「グルヌさん、無理をしたらいけません」
そう言って妖精がグルヌに治癒魔法をかける。
「エルファ様、前線を王城まで下げることはできそうですか?」
私が聞くと、
「かなり困難ではありますけれど……」
エルファはしばらく真剣な表情で考えてから答えた。
「私の考えだけど、グルヌさんとトーラさんに何があったのか詳しく聞いたほうがいいと思うんです」
私はエルファを真正面から見て言った。
「なんでトーラさんがあそこまで弱ってしまったのか。
グルヌさんが王城まで前線を下げるべきだと考える根拠は何なのか。
二人が回復して話を聞ける状態になるまで時間を稼ぐためにも、前線を下げるのはありだと思うんです」
エルファは私の言葉を真剣に聞いて吟味《ぎんみ》してくれている。
「前線を下げるために何をしなければならないのか、どういう困難があるのか、それを教えてください、エルファ様」
「……分かりましたわ」
やっとのことでエルファが答えてくれた。
「前線を下げるということは‘、今ある防護結界を一時的に解かなければならないということなのです」
「今ある防護結界を残したまま後方に新たな防護結界を張ることはできないのでしょうか?」
「防護結界を維持するためには多くの魔力を注入し続ける必要があります。二つの防護結界を同時に維持することは大変危険です」
「妖精さんたちの魔力が枯渇してしまうかもしれない、ということなのですね」
「ええ……」
先程のトーラの様子を見れば、魔力の枯渇がどれほど危険なことなのかいやでもよく分かる。
「ということは、防護結界を張り替える間に魔王軍が攻めてきたら、真正面から戦わなければならないということですね」
「ええ、そうなります……」
答えるエルファは苦しげだ。
「分かりました」
私は迷いなく答えた。
「え……?」
エルファにしたら、私の反応は明らかに予想外だったようだ。
「私が魔王軍の侵攻を防ぎます」
「ええ!?」
「だって、私は勇者ですから」
私は自分でも不思議なくらいスッキリとした気持ちでそう言った。
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