1 / 16
第1話 転校生がやってきた
しおりを挟む
「小谷翔太です。野球をやってます。よろしく!」
(あ、やばい……)
前の日にクラスのみんなの前で「恋なんて考えられない」と言った私は、その翌日にあっさりと恋に落ちてしまった。
そう、転校生の小谷翔太君に恋してしまったのだ。
いわゆる一目惚れというやつだ。
彼の爽やかな笑顔はクラスの女子の心を完全に射抜いてしまった。
もう女子全員目がハートである。
休み時間になると早速梨絵が私のところに来た。
「ねぇねぇ、小谷君カッコよすぎじゃない?もう私今すぐにでもコクっちゃいそうだよ!」
「ええ?それはちょっと極端じゃないかな……確かにカッコいいとは思うけど」
興奮状態の梨絵をなだめるように私は言った。
実のところ内心は私も似たような状態だったのだけれど……。
「祐実は冷静だねぇ」
「そう?」
「うんうん、さすがは『まだ恋なんてって考えられない~』って言うだけあるよ」
と梨絵が昨日のことを思い出して言った。
「あはは……あれはまあ言葉の文というかその場のノリというか……」
忘れててくれたらいのにと思っていたが、考えが甘かった。
「最強のライバルが参加しなければ私にだってワンチャンあるかもだし」
梨絵は机に両肘をついた手の上に顎を載せてニッコリと笑った。
「梨絵は可愛いからワンチャンどころか有力候補だと思うよ」
これは本当だ。
「祐実がそう言ってくれるとなんだか本当にうまくいきそうな気がする」
少し照れながら笑う笑顔がまた眩しい。
「私も応援するよ!」
と私もニッコリ笑顔で梨絵に言った。
「あっ、もう小谷くんに接近しようとしてる子がいる。私も負けてらんない!また後でね、祐実!」
そう言って梨絵は女子に囲まれつつある小谷君のところへ飛んでいった。
(墓穴……掘っちゃったかな……)
梨絵はアイドル級の美少女である。
私なんて引き立て役以外の何者でもないと言っていい。
小谷君が私なんかより迷わずに梨絵を選ぶ光景が目に見えるようだ。
(だよね、小谷君が私を選んでくれるなんてあり得ないからこれで良かったのかも)
梨絵は女子の壁をかき分けてアイドル級の笑顔全開で楽しそうに小谷君と話している。
(いいなぁ……)
素直に「前言撤回!」とか言って梨絵と一緒に小谷君のところに行けばよかった。
そう心で思いつつ梨絵を見ていたら、ちょっとした瞬間に小谷君が私の方を向いた。
その一瞬、小谷君と目が合った。
別に珍しいことではない。クラスメイトと目が合うことなどよくあることだし、いつもの私なら、こういう場合ごく自然に笑顔を返していたところだ。
だが、このときはそれができなかった。
私はとっさに目を逸してしまったのだ。
(なんで?なんで私、目を逸らしたの?)
とんでもない失敗をしたときに体から血の気が引いていく、あの嫌な感覚が私を襲った。
かなり長いこと(そう私は思った)目を逸らしていた後、恐る恐る小谷くんの方を見た。
彼は梨絵たち数人の女子と談笑していて、その周りには男子も集まっていた。
(ほっ……)
また目が合ったりしても気まずくなりそうなので、私は窓の外に目をやった。
すると、かたっ、と隣の椅子を動かす音がした。
「祐実ちゃん」
茉美だった。
「茉美は行かないの?」
小谷君の方に視線をやりながら私は茉美に聞いた。
「うん、行かない」
「茉美もカッコいいと思うでしょ?小谷君のこと」
「うん、カッコいいと思う……でも」
「でも?」
「私、カッコいい男の子は遠くから見てるほうが好きなんだ」
ああ、そうだ。茉美はそういう女の子だった。
茉美はマンガとアニメが大好きな大人しい性格の女の子で、2年になって同じクラスになった子だ。
彼女が休み時間に読んでいたマンガ雑誌が私も読んでいる雑誌だったのがきっかけで、あっという間に仲良くなった。
「茉美だって可愛いんだから、思い切って小谷君に話しかけてみたら?」
茉美も、梨絵とはまた違うタイプだが間違いなく美少女だ。
髪は女子なら誰もが一度は憧れるさらさらストレートヘア。
色白小顔で『まるでお人形さんみたい』という形容がピッタリな女の子だ。
「え…?そ、そんなの無理、絶対無理」
茉美は顔を赤くして縮こまって頭を振った。
「でも小谷君優しそうだよ。周りの子みんなに目を配って話も聞いてるみたいだし」
小谷君を見ながら何気なく私が言った。
「わぁ、さすが祐実ちゃん、しっかり見てるんだねぇ」
茉美が驚いたように言った。
(うっ!や、やばぁぁーーい!)
私は焦った。めちゃくちゃ焦った。
「い、いや、それは……えと」
バレた?バレちゃった?
「祐実ちゃんはいつもそうだもんね。回りの子のことをちゃんと見ててくれるんだよね」
茉美は控えめとはいえ破壊力抜群の笑顔で言った。
「え……?」
どうやらバレてはいなかったようだ。
「友達を作るのが下手な地味な私を見ててくれて、梨絵ちゃんたちみんなの中に連れて行ってくれたのは祐実ちゃんだから」
「そうだったかな……?」
私は単純に友達は一人でも多い方が楽しいって思ってるだけなんだけど。
「だからね、もし祐実ちゃんが誰かを好きになったら私、精一杯協力するね!」
茉美は両手の拳を握って胸の前で可愛くガッツポーズをした。
「私が誰かを好きになったら……」
なった!今まさに!
「あ……でも祐実ちゃんはまだ恋なんて考えられないって言ってたっけ」
頬に人差し指を当てて心持ち首を傾げる茉美。なんか無駄に可愛いぞ!
「ああ、うん、そんなことを言ったような気がしないでもないかも……ははは……」
またしても自分の首を自分で締めてしまった。
茉美は控えめながら優しい笑顔で私を見てくれている。
私も自然と笑顔になる。
うん、今の私には恋より友達だ!
「じゃ、その時は協力よろしくね、茉美!」
「うん!」
(あ、やばい……)
前の日にクラスのみんなの前で「恋なんて考えられない」と言った私は、その翌日にあっさりと恋に落ちてしまった。
そう、転校生の小谷翔太君に恋してしまったのだ。
いわゆる一目惚れというやつだ。
彼の爽やかな笑顔はクラスの女子の心を完全に射抜いてしまった。
もう女子全員目がハートである。
休み時間になると早速梨絵が私のところに来た。
「ねぇねぇ、小谷君カッコよすぎじゃない?もう私今すぐにでもコクっちゃいそうだよ!」
「ええ?それはちょっと極端じゃないかな……確かにカッコいいとは思うけど」
興奮状態の梨絵をなだめるように私は言った。
実のところ内心は私も似たような状態だったのだけれど……。
「祐実は冷静だねぇ」
「そう?」
「うんうん、さすがは『まだ恋なんてって考えられない~』って言うだけあるよ」
と梨絵が昨日のことを思い出して言った。
「あはは……あれはまあ言葉の文というかその場のノリというか……」
忘れててくれたらいのにと思っていたが、考えが甘かった。
「最強のライバルが参加しなければ私にだってワンチャンあるかもだし」
梨絵は机に両肘をついた手の上に顎を載せてニッコリと笑った。
「梨絵は可愛いからワンチャンどころか有力候補だと思うよ」
これは本当だ。
「祐実がそう言ってくれるとなんだか本当にうまくいきそうな気がする」
少し照れながら笑う笑顔がまた眩しい。
「私も応援するよ!」
と私もニッコリ笑顔で梨絵に言った。
「あっ、もう小谷くんに接近しようとしてる子がいる。私も負けてらんない!また後でね、祐実!」
そう言って梨絵は女子に囲まれつつある小谷君のところへ飛んでいった。
(墓穴……掘っちゃったかな……)
梨絵はアイドル級の美少女である。
私なんて引き立て役以外の何者でもないと言っていい。
小谷君が私なんかより迷わずに梨絵を選ぶ光景が目に見えるようだ。
(だよね、小谷君が私を選んでくれるなんてあり得ないからこれで良かったのかも)
梨絵は女子の壁をかき分けてアイドル級の笑顔全開で楽しそうに小谷君と話している。
(いいなぁ……)
素直に「前言撤回!」とか言って梨絵と一緒に小谷君のところに行けばよかった。
そう心で思いつつ梨絵を見ていたら、ちょっとした瞬間に小谷君が私の方を向いた。
その一瞬、小谷君と目が合った。
別に珍しいことではない。クラスメイトと目が合うことなどよくあることだし、いつもの私なら、こういう場合ごく自然に笑顔を返していたところだ。
だが、このときはそれができなかった。
私はとっさに目を逸してしまったのだ。
(なんで?なんで私、目を逸らしたの?)
とんでもない失敗をしたときに体から血の気が引いていく、あの嫌な感覚が私を襲った。
かなり長いこと(そう私は思った)目を逸らしていた後、恐る恐る小谷くんの方を見た。
彼は梨絵たち数人の女子と談笑していて、その周りには男子も集まっていた。
(ほっ……)
また目が合ったりしても気まずくなりそうなので、私は窓の外に目をやった。
すると、かたっ、と隣の椅子を動かす音がした。
「祐実ちゃん」
茉美だった。
「茉美は行かないの?」
小谷君の方に視線をやりながら私は茉美に聞いた。
「うん、行かない」
「茉美もカッコいいと思うでしょ?小谷君のこと」
「うん、カッコいいと思う……でも」
「でも?」
「私、カッコいい男の子は遠くから見てるほうが好きなんだ」
ああ、そうだ。茉美はそういう女の子だった。
茉美はマンガとアニメが大好きな大人しい性格の女の子で、2年になって同じクラスになった子だ。
彼女が休み時間に読んでいたマンガ雑誌が私も読んでいる雑誌だったのがきっかけで、あっという間に仲良くなった。
「茉美だって可愛いんだから、思い切って小谷君に話しかけてみたら?」
茉美も、梨絵とはまた違うタイプだが間違いなく美少女だ。
髪は女子なら誰もが一度は憧れるさらさらストレートヘア。
色白小顔で『まるでお人形さんみたい』という形容がピッタリな女の子だ。
「え…?そ、そんなの無理、絶対無理」
茉美は顔を赤くして縮こまって頭を振った。
「でも小谷君優しそうだよ。周りの子みんなに目を配って話も聞いてるみたいだし」
小谷君を見ながら何気なく私が言った。
「わぁ、さすが祐実ちゃん、しっかり見てるんだねぇ」
茉美が驚いたように言った。
(うっ!や、やばぁぁーーい!)
私は焦った。めちゃくちゃ焦った。
「い、いや、それは……えと」
バレた?バレちゃった?
「祐実ちゃんはいつもそうだもんね。回りの子のことをちゃんと見ててくれるんだよね」
茉美は控えめとはいえ破壊力抜群の笑顔で言った。
「え……?」
どうやらバレてはいなかったようだ。
「友達を作るのが下手な地味な私を見ててくれて、梨絵ちゃんたちみんなの中に連れて行ってくれたのは祐実ちゃんだから」
「そうだったかな……?」
私は単純に友達は一人でも多い方が楽しいって思ってるだけなんだけど。
「だからね、もし祐実ちゃんが誰かを好きになったら私、精一杯協力するね!」
茉美は両手の拳を握って胸の前で可愛くガッツポーズをした。
「私が誰かを好きになったら……」
なった!今まさに!
「あ……でも祐実ちゃんはまだ恋なんて考えられないって言ってたっけ」
頬に人差し指を当てて心持ち首を傾げる茉美。なんか無駄に可愛いぞ!
「ああ、うん、そんなことを言ったような気がしないでもないかも……ははは……」
またしても自分の首を自分で締めてしまった。
茉美は控えめながら優しい笑顔で私を見てくれている。
私も自然と笑顔になる。
うん、今の私には恋より友達だ!
「じゃ、その時は協力よろしくね、茉美!」
「うん!」
0
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
義父の連れ子から逃れたい。猛勉強して志望校変更したら、家庭内ストーカーになった義弟
東山 庭子
恋愛
親の再婚で姉弟となった南と蓮。女癖の悪い蓮と離れたくてこっそり志望校を変えた南は、その後蓮の歪んだ溺愛に悩まされていく。
続編「義母の連れ子と結婚したい♡ 追いかけて追いかけて、やっと捕まえた義姉と俺のイチャラブ日記♡」
→https://www.alphapolis.co.jp/novel/440565753/636968278
佐久間 蓮(さくま れん)
佐久間 南(さくま みなみ)
椿→南の友達
亜耶→椿のハトコ
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない
白神ブナ
恋愛
高校一年一学期から三年三学期まで続く長編です。気になるサブタイトルを見つけて途中からでもお楽しみいただけます。
女子校あるあると、先生あるある、受験あるあるを描く学園恋愛ドラマ。
佐藤サトシは30歳の独身高校教師。
一度は公立高校の教師だったが心が折れて転職し、私立白金女子学園にやって来た。
一年A組の受け持つことになったサトシ先生。
その中の一人、桜井美柑はガチでサトシ先生に恋してしまった。
サトシ先生は、桜井美柑という生徒の存在を意識してしまいつつ、あくまで職務に忠実であろうと必死に適度な距離を保とうとするが……
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
猫になった悪女 ~元夫が溺愛してくるなんて想定外~
黒猫子猫
恋愛
ディアナは欲深く、夫にも結婚を強いた悪女として知られた女王だ。当然のように人々から嫌われ、夫婦仲は悪く、病に倒れた時も誰も哀しまなかった。ディアナは、それで良かった。余命宣告を受け、自分の幸せを追い求める事などとうに止めた。祖国のためにできる事は全てやった。思うままに生きたから、人生をやり直せると言われても、人間などまっぴらごめんだ。
そして、《猫》になった。日向でのんびりと寝ている姿が羨ましかったからだ。いざ、自堕落な生活をしようと思ったら、元夫に拾われてしまった。しかも、自分が死んで、解放されたはずの彼の様子が妙だ。
あなた、隙あらば撫でようとするの、止めてくれる? 私達は白い結婚だったでしょう。
あなた、再婚する気がないの? 「お前を愛したりしない」って嬉しい事を言ってくれたのは誰よ!
猫になった孤高の女王×妻を失って初めて色々気づいてしまった王配の恋のお話。
※全30話です。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる