恋って難しい

舞波風季

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第6話 恋バナタイムがやってきた

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 第1位 朝比奈あさひな瑠花るか
 …………
 第4位 高津川たかつがわ梨絵りえ
 …………
 第12位 楠原くすはら茉美まみ
 …………
 …………
 …………
 第98位 市之瀬いちのせ祐実ゆみ

 中間テストが終わり結果が貼り出された。
 2年生は40人クラスが5組の計200人。
 そのうち上位100名までの成績が貼り出される。

「瑠花に負けたぁーー!」
 頭をかきむしりながら悔しがる梨絵。それを見て茉美が言う。
「梨絵だってスゴいよ……」
 そう、梨絵は見かけによらず(と言ったら怒られそうだけど)秀才なのだ。
「てか、茉美だって12位だし!私なんてトホホだよ……」
 と私は言った。
 が、実のところ初の100位以内で内心は結構嬉しかったりする。

「それにしても瑠花はすごいよねぇ、転校してきて以来ずっと1位でしょ?」
 私がそう言ってると向こうから瑠花がやってきた。

 すかさず梨絵が瑠花に抱きついて拳骨げんこつで横腹をグリグリしつつ、
「うりうり、またトップ取りやがってぇ。さては家じゃ勉強ばっかしてるガリ勉少女だな」
 と、ニヤニヤしながら言った。
「そんなことないけど……」
 まとわりつく梨絵を振りほどこうとしながら瑠花が言った。

「またまたぁ、そう言いながらこっそり勉強してるタイプたよね瑠花って」
 と、梨絵が冷やかすと、
「そう言いながら梨絵だってガッツリ勉強してるんじゃない?」
 と瑠花も負けじと切り返す。
「私は一夜漬け派だよ、天才だから」
 と、しれっと言う梨絵。

「じゃあ、テストの結果も出たし、みんなでカフェに行こうよ」
 と、私が提案した。
「「「さんせーーい!」」」
 ということで4人で帰りにカフェに行くことにした。

 練習試合でのお弁当騒動?以来こんな感じで瑠花とも仲良くなって、一緒に野球部の練習を見たり、時には一緒に帰ったりするようになった。
 クラスは違うものの、今ではすっかり打ち解けている。
 そうすると気になるのが瑠花と小谷君との関係だ。
 とはいえ、いざとなるとなかなか聞きづらいものである。

 カフェへの道すがらもうすぐ始まる野球部の地区大会の話で盛り上がった。
 カフェの席に着き、
「みんなで応援に行こうね!」
 と、私が言い、
「うんうん、できるだけたくさんで応援したいよねぇ」
「うん……一生懸命応援する」
 梨絵と茉美も賛成してくれた。
「私もクラスの子に声をかけてみるわ」
 瑠花もそう言ってくれた。

 そうして、小谷君の話を中心にひとしきり地区大会の話で盛り上がったあと、いきなり梨絵が直球ど真ん中の質問を瑠花にした。

「瑠花はさぁ、小谷君のことが好きなの?」
「ええ?!」 
 いきなりど直球の質問をされて瑠花は驚いたまま固まってしまった。

 (だよねぇ……いきなりそんなこと聞かれたらそうなるよね)
 私も気になっていた事ではあるが……。

「えっと……その……」
 と、いつものキリッとした調子が無くなって、顔を赤くしてしどろもどろになる瑠花。
「無理に答えなくてもいいんだよ、瑠花。梨絵も直球過ぎたし」
「そうだったね、ごめんね、瑠花」

「ううん……いいの。でも……私ってそんなに分かりやすい?」
 瑠花が恐る恐る聞いてきた。
「うん、小谷君と話してる時の瑠花って本当に幸せそうな顔してるしね」
「うぅ……」
 梨絵にズバッと言われて言葉に詰まる瑠花。
「もうそのくらいにして、梨絵。瑠花が可愛そうだよ」
 そう言う私を見る梨絵の目はもの問いたげであった。

 確かに瑠花の反応を見てかすかに、ほんの微かにチクリという痛みが私の胸に走った。
 だが、今では瑠花も大切な友達だ。その瑠花が問い詰められて苦しむさまは見たくなかった。

「自分でもはっきりとは分からないんだけど……」
 少し間をおいてから瑠花が話し始めた。
「もちろん好きではあるんだけど、それが恋って言っていいのかどうか……」

「小谷君とはいつ頃知り合ったの?」
 佐々君情報ではあまり詳しくは分からなかったので、いい機会と思って私は聞いてみた。
「アメリカの日本人学校で一緒だったの。父親同士が同じ支店勤務だったから」

 そうして、瑠花はぽつぽつと話してくれた。
 瑠花の話を聞く限り、小谷君とは仲のいい同級生同士といったところだったようだ。
 瑠花は淡い恋心のようなものを持っていたのかもしれない。
 しかし、明るくて屈託なく誰とでも仲良くできる小谷君からすれば、瑠花も仲の良い同級生の一人という認識だったのだろう。
 そして、今もそれは変わっていない、と瑠花は感じているようだ。

 ひと通り話して、瑠花は少し落ち着いたようだ。
「なんか、すごく恥ずかしかったけど……でも、話したら少し気持ちが軽くなったかも」
 その言葉通り瑠花の顔に晴れやかさが戻ってきていた。
「でも、このことは他の人には絶対に言わないでね」
 瑠花がそう言うと、梨絵がギュッと彼女を抱きしめた。
「もちろんだよ、瑠花。ごめんね、こんな話させちゃって」
「ううん……大丈夫」
 梨絵を抱き返した瑠花の目に微かに光るものがあった。
 私もウルウルしてきて、隣の茉美を見たら目を拭っていた。

「じゃあ、私も白状しちゃおうかな!」
 瑠花から離れた梨絵も目を拭いながら言った。
「私も小谷君が好き!でもね……」
「でも?」
「うん、でも恋というよりはアイドルの追っかけ的な気持ちかな」
 とニカッと歯を見せて笑った。

「「「何それぇー!」」
 私達は4人で大爆笑した。

 私達のあまりの大声に、周りのお客さんも何事かといった顔でこっちを見ている。
 私達は慌てて口を抑えたが、すぐには笑いは止まらず、しばらく4人でくすくす笑いをしていた。

「で、祐実はどうなの?」
 ひとしきり笑ったあとに梨絵が私に聞いた。
「えっ、私?……ええと……」
 急に振られて私は言葉に詰まった。

『何のこと?』と言おうとしたが、さすがに白々しいと思ったので素直に答えることにした。
「私も、小谷君が好きよ」
 できる限りさり気なく言ったつもりだったが、顔が火照ってるのが自分でも分かった。

(((おおぉー)))
 さっきの二の舞いにならないようみんなの反応はヒソヒソ声レベルだった。

「でも、彼と付き合いたいかどうかと言えば……そのへんは私も分からない……」
 これは嘘ではない、と思う。
 瑠花の気持ちを聞いて微かに痛みを感じたけれど、かと言って私自身が彼を独占したいかというと、正直なところ分からない。

「うまく誤魔化したわね」
 瑠花が非難がましい顔を作って言った。
「まあ、私もそんな感じだけれど」
 と、すぐに訳知り笑顔で言う瑠花。

「で、茉美はどうなの?」
 矛先を変えたくて私は話を茉美に振った。
「え……私……?」

 4人の中では比較的熱量が少なく、傍観者的な立ち位置を決め込んでいたふしがある茉美は、いきなり自分に振られて驚いていた。
「私は……カッコいいなって思って見てるのが好きかな……」
 と、茉美らしい答えが返ってきた。

「うんうん、茉美はそうだよねぇ」
 私がそう言うと梨絵と瑠花もうなづきながらクスクスと笑った。

「……もう……」
 と、いつもの超絶可愛いプンスカ顔になった茉美だったが、やがてみんなにつられてクスクス笑い出した。

 そんなこんなで、ガッツリ恋バナをした私達は、再び地区大会の応援の話をして帰路についた。

 自分の部屋に帰ってきて、私は今日みんなと話したことを思い返してみた。
 小谷君が好き、それは間違いない。初めて彼を見たときに感じた気持ちは恋心なのだろう。
 けれど、そのことが即ち彼とお付き合いをして彼氏として独占したいということではないとも思うのだ。

 みんなで「小谷君、カッコいい!」と騒いだり、たまに友達として話したり。
 そんな距離感が、今の私にはちょうどいいように思う。

 いつか、この気持ちが本当の恋に変わる時が来るのかもしれない。
 けれど、梨絵たちとも小谷君たちとも楽しい時間を共有したいという今の気持ちを大切にしよう。

 そんなことを考えながら、中身の濃い充実した一日を送れた今日という日を噛みしめた。
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