熱愛報道はご勘弁

アポロ18号

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転機

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石の上にも三年とよく言うが、つくづく都合のいい言葉だと思う。
我慢強いことは大事だが、見切りをつけて新たなスタートを切る方がよっぽど難しいからだ。
俺、支倉真太郎はADとして働いて3年。
石の上にも三年、の三年はクリアしているが疲弊していた。
新人のADなんて、人間扱いして貰えず、3年目にして何人の同期が辞めたか分からない。
ただ、そんな環境で3年も続いたのには訳がある。
推しという存在。
俺の推しは、アイドル練習生をしていたが今はモデルとして活動している。
練習生時代から応援していて、彼がアイドルになる事を願っていたが本人の意思なので仕方ない。
その推しは、絢瀬深月。
年上の男を推す成人男性と言うカオスな構図だが、推さずにはいられない。
何よりも顔が好きだった。
ドイツのクォーターで、緑がかったブラウンの瞳が特徴。
練習生時代からビジュアルで騒がれていた。
生きる彫刻なんて名前がつくくらい。
初めて彼の練習生時代のライブを見た時、その瞳に射抜かれてから虜だった。
だが、仕事では一緒になったことない。
でも推しと一緒の仕事なんて、俺が怒鳴られまくる様子が見られてしまう可能性があるので一緒にならなくて本当に良かった。
ただモデル活動がメインなので前ほどの接触イベントが減り、俺の推し活によるライフが減っていく一方だった。
もう辞めようかな、なんてのも思っていた。

そんなある日、姉から提案があった。
俺の姉は、支倉七海。誰もが知る女優だ。
そのため、芸能界は身近にあった。
俺も姉と同じ道を歩まないかと言われたが、裏方の方が好きでADを選んだ。
だが俺が支倉七海の弟である事は、姉の所属する芸能事務所の社長しか知らないことだ。
なるべく姉のコネなど使いたくなかったから。
ただADとしてこき使われて疲弊している俺をずっと心配してくれていたのだ。
「今日は、真太郎にお願いがあるの」
嫌な予感がした。
姉からのお願いはロクでもないと相場が決まっている。
「絢瀬深月ってわかる?」
わかるも何も推しだ。
しかし姉には言っていない。
そして、俺の推しは姉の事務所の後輩だ。
「絢瀬君のね、マネージャーさんが辞めることになっちゃって緊急でマネージャーが必要なんだけどあなたなってくれない?」
時が止まった。
絢瀬深月のマネージャー?
「まぁなってくれない?って言うか真太郎に拒否権は無いわ。もう社長にも話してあるし、絢瀬君にも新しいマネージャーがつきますって話してあるのよね。勿論ADも辞めますってのは上に伝えてるわ」
俺の姉は強引な所があるが、所謂コネを使って何かするというのは今まで無かった。
それは俺が嫌がるのを分かっていたから。
でも今回は、姉の力で俺は推しのマネージャーをすることになっている。
しかしこれはかなり有り難いことだ。
転職活動をせず、しかも推しのマネージャーになれるのだから。
そんなの拒否権なんて無くていい。
俺は二つ返事で承諾した。

マネージャー業務は初めてだが、テレビ局に入る前にマネージャーも考えたことがあるからある程度はわかる部分もある。
だが俺はわかっていなかった。
ADの仕事をしていたら、分かることなのに。
芸能人には裏があるということが。
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