芙蓉の喋り場

高城蓉理

文字の大きさ
30 / 31

29

しおりを挟む

 突然ですが、私が小説を書き始めたきっかけについてお話します。

 私の第一作は【ガールズ!ナイトデューティー】と言いまして、夜に働くアラサー女子四人組の恋に仕事に友情にをテーマにした、日本でも数少ない(と思われる)夜勤小説です。

 何故、夜勤をテーマにした小説を書いたんだい、とツッコミが聞こえてきそうですが、理由は単純で私が当時夜勤従事者だったからです。夜の担当になると数ヵ月単位で深夜勤務が固定だったので、本当に大変でした。

 当時の私は超夜型の生活が辛くて、毎日体調や精神面のコントロールに苦労していました。遮光カーテンをしても真っ暗にはなりきらない部屋で熟睡することに苦戦し、生活音で目が覚め、体内サイクルはメチャクチャだけど、身体は素直で昼間は起きろと謎のホルモンとも戦わなくてはならずで、挙げればキリがないくらい人類の法則に反した生活が苦手でした。
 それに加え最大出力が求められる職務の緊張感や重圧が凄かったので、精神も抉られるダブルパンチで、休日は毎週通院がルーティーンでした。

 前置きが長くなりましたが、そんな環境で働いていたときに、よく「誰か女性向けの夜勤の攻略法を教えてくれないかな」と思うことが多々ありました。

 世の中には、たくさんの夜勤のある職種があります。ただ当時は医療関係者の方に多い、一定のサイクルで昼帯と夜帯のシフトが混合するタイプの夜勤の情報はあったのですが、私のように固定夜勤の経験談があまりありませんでした。
 もちろん同僚との情報交換は欠かせませんでしたが、性別が違えば基礎体力が違うし、そもそもテレビ業界は鉄人と変人の集団なので、鋼の体力とメンタルの持ち主がゴロゴロいて、あんまり参考になりませんでした。同僚は夜勤明けに一泊二日で韓国に行き、帰国してそのまま夜勤という不眠不休の真の弾丸旅行をしていて、次元が違うといつも感じていました。

 というわけで、私は世の中に夜勤従事者のリアルな体験談がないならば、自分で発信すればいいじゃない!と思いつき、小説を書くことにしました。
 なんで小説なんでい!ブログでいいじゃん!とヤジが聞こえてきそうですが、私が小説に挑戦した理由はエンタメ性です。

 私の夜勤従事者時代はギリギリで生きていましたので、それをそのままリアルに書くことに抵抗がありました。私の生活自体が仕事中心だったので、キラキラ感がまるでなかったのです。
 私は元々夜勤で稼ぎたいわけではなく、夜勤をせざるを得ない職種に就きました。でもなりたい職業だったからこそ、なんとか踏みとどまり頑張っていました。夜勤は大変ではありますが、それが私の発信を見た人の職業選択の幅が狭まるような内容になるのは本末転倒だなあと思っていました。あくまでも「なりたいものになったら、夜勤があった。さてどうする」に対応した内容にするには、生活をエンジョイしていてリアリティもある理想のヒロインたちが必要でした。
 
 小説の中のヒロインたちは、夜勤をエンジョイしながら日々を生活しています。ここまで私自身は夜勤は大変だと連呼してきましたが、もちろんやりがいや楽しいこともありました。

 仕事終わりに帰路に眺める冬の東京の朝焼けは、写真でなくて肉眼で見るのが本当に美しくて、これは夜勤をしていなかったら出会えなかった風景だったし、夜中にタクシーで首都高に揺られて帰る背徳感は大人になったと感じさせてくれるちょっとしたご褒美でした。

 それに夜行性の生活をしていると、自分の中の幸せの基準が下がるので、日常生活が尊いものになります。
 例えば真っ暗な寝室で夜中に寝ることが、とてつもなく贅沢な時間になります。大半の人にとっては感動なんてほぼない当たり前の日常なわけですが、私にとっては月に数回しか味わえないとても貴重なことになりました。このように自分の常識や価値観がリセットされたことで、些細な幸せに気付くことができるようになったのは、私の人生観を構築していく上で確実にプラスになったと思います。

 以上の切り口で、私は【ガールズ!ナイトデューティー】という小説を書くことにしたわけです。
我ながら面白い切り口で小説を書き始めたなと感じます。
 今は実生活が多忙で、なかなか小説を書く時間はないのですが、ガールズ!の彼女たちは今も私の心の中にいる大事なお友達です。彼女たちがいなかったら、他の話も書かなかったし、それを鑑みると私は夜に煌々とするライトの中で働いて良かったんだなと思っています。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...