ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第3章 近づく距離

25. 微かな違和感 (ユーリ)

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食事処『カプリス』。同期の奴らが言ってたように、城下町の真ん中を南北に通る大通りを少し西に入ったところにその店はあった。

入り口を入ると一階と二階に分かれていて、一階は立ち飲みや短時間で食事をするスペースがあり、ちょっと仕事終わりに一杯ひっかけたり、これから仕事の人たちがその前に少しお腹を満たしたりと店内はなかなかの盛況ぶりだ。

一方、二階は少しゆっくり食事ができるよう、ソファや大きなテーブルに、開放感のあるスペースが広がっている。こちらは、家族連れやカップルなどが多く、一つの店だが一階と二階で全く雰囲気が違ってなかなか見ていて面白い店だなと思う。

俺たちはもちろん二階にあがり、奥の空いているスペースに対面で座った。

「なかなか面白い店だな」

レイ様が辺りを見渡しながら、ふと感想を口にする。

「はい、俺もそれ思いました。ここ、数ヶ月前にできたばかりなんだそうですよ。なのに、もうお客さんで溢れてるなんてすごいですよね。なんか、夜早く閉めちゃうのがもったいないなぁ」

俺はそう言いながら、早速メニューを見て今夜のメインを思案する。チラリと正面のレイ様を見ると、優雅にメニューに目を通していて、かっこいい人は何をしていても様になるなぁとこんな時でも見惚れてしまう。

そうしていると、メニューから顔をあげたレイ様とバッチリ目が合ってしまってドキリとする。

「ユーリ?もう決まった?」

レイ様が優しく問いかけて来て、俺は慌ててメニューにもう一度目を通す。

「いや、その、どれも美味しそうでなかなか決められなくて・・・、レイ様は決まりました?」

「いや、実は俺も悩み中なんだ。それならユーリ、色んな食材のものを少量ずつ頼んでふたりでわけないか?それならお互い色々楽しめるだろう?」

「あっ、いいですね!じゃぁそうしましょう!」

俺はレイ様の提案にすぐに賛成して、店員さんに声をかけて注文を済ます。

「ご注文は以上でございますね。最後にお飲み物はいかがなさいますか?」

「では俺はリィスティを一つ」

(ーーーー!?)

レイ様はすでに決めていたらしく、飲み物をすぐさま注文する。
しかも、その注文したものは・・・。

「じ、じゃぁ俺もそれ一つ下さい!」

「かしこまりました。それでは料理をお持ちするまでしばらくお待ちください」

店員さんが去ってから、俺はレイ様に気になったことを尋ねてみた。

「あの・・・レイ様」

「ん?どうした?」

「さっき注文していたリィスティってけっこう甘いお酒だと思うんですが、レイ様はよく飲まれるんですか?」

そう、レイ様が注文したリィスティで俺が反応したのはこのリィスティという飲み物が、今日ここに来る前にアランとの会話にも出たリィチとラスティの混合酒だからだ。

この国では、働くようになる16歳以上であれば飲酒は認められている。ただし、すべてにおいて自己責任なので大抵みんな若い子たちは、度数の低いお酒から始め、徐々に飲めるようになっていく。かく言う俺も、同期の奴らに誘われて最近少しずつ飲み始めたばかりなので、まだお酒についてはほとんど初心者だ。

その俺でも飲めるような、度数が低く、ジュースにも似た甘いお酒の一つがこのリィスティで、甘い口当たりだが後味はさっぱりしていて飲酒初心者には人気のとても飲みやすいお酒。・・・なので、レイ様がこのお酒を選んだことにまず驚いた。俺のイメージでは、もっと度数の高いお酒を普段から飲んでるイメージだったので。

「ん~、そうだな。よく飲む方かな?自分的にはリィスティの甘いところが気に入ってて。・・・今日は特に、ユーリのそばで飲みたくなったんだ」

「?・・・そ、そうですか」

「俺がリィスティを飲むのは意外?」

「い、いえ!あっ、いや、・・・そうですね。勝手なイメージですけど、レイ様はもっと度数が高めのお酒を好んで飲むんじゃないかなぁって思ってました。でも、美味しいですよねリィスティ!俺も最近飲み始めたんですが、すごく気に入ってて、どちらかというとラスティの甘みが勝ってるあの甘い感じが好きなんです!俺は果物では断然ラスティ派なんで!」

俺がそう言うと、レイ様はまた肩を震わせて笑っている。

「ハハッ。ラスティ“派”って、ユーリは面白いな」

「~~っ!もぅレイ様、俺は真面目です!そんなにしょっちゅう食べてるわけじゃないですが、レイ様と一緒で俺はラスティが果物の中で一番好きです!」

「ハハハッ、わかったわかった。俺と一緒でユーリはラスティが・・・・・・」

そこまで言って、レイ様が急に黙り込む。ちょっと驚いたようにレイ様の瞳が俺を見つめてくる。

「?・・・レイ様?」

「・・・あぁ、いや。何でもない。それにしてもユーリと好みが一緒なのは嬉しいな」

「フフッ、俺もです。友人たちは、ラスティは甘すぎるって言ってあの美味しさをわかってくれなくて・・・」

さっきのレイ様の間がなんだったのか、ちょっと気になるけど、すぐにいつも通りのレイ様だったので俺も深く考えることなく、ラスティの話題が思わぬところで出てきたので、ここがチャンスと思いレイ様にさっそくお誘いをかけてみることにした。

「あの!それで、ラスティの話ついでと言ってはなんですが、今日この後レイ様に俺の宿舎に少し立ち寄ってもらいたいんですが、いいですか?」

「?それは構わないが・・・?」

「フフッ。実は、今日同期の友人が自分の別荘から大量にラスティが送られてきたらしく、たくさんお裾分けしてもらったんです。そいつ、ラスティはそんなに好きじゃないんで、俺いっぱいもらったんですけど、さすがに一人じゃ食べきれないんでレイ様にも食べてもらいたいなぁと思って。今俺の部屋にあるんで、後で一緒に食べませんか?」

俺がそうお誘いすると、レイ様は優しい顔で微笑んだ。

「ありがとう。でもいいのか?俺がもらっても?」

「はい!・・・レイ様に食べてほしくてたくさんもらったから・・・」

「ん?」

「いえ!じゃぁ、後で楽しみにしておきます!」

俺がそう言うとレイ様はクスッと笑った。

「それは俺のセリフだな。俺こそ楽しみにしておくよ」

2人で笑いあっていると、ちょうど料理が運ばれてきたので早々に腹ごしらえをすることにした。お店の雰囲気を楽しみながら、俺たちはいつものように話しをし(主にレイ様が聞き役になって俺が日常の話をしていることが多いが)、そうして今日もレイ様との楽しい時間が過ぎていく。





まだレイ様とこうして会い始めて、期間は短いというのに、レイ様とのこんな時間がずっと前から続いていたような、そんな錯覚を時々起こしそうになる。

この感覚はいったい・・・?

“ドクンッ”

“ドクンッ”

以前にも増して鼓動がざわつく。
昔から見る夢といい、先日見た俺そっくりなやつが出てくる夢といい、何故か強く感情を揺さぶられる。
そして、少しばかりの焦燥感。


俺は・・・。

何か・・・。



ーーーー大事なことを

ーーーー忘れてる・・・?



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