ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第4章 秘められしもの

33. 温もりを感じて (ユーリ)

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朝日が眩しい。閉じた瞳の上から、明るい光が嫌でも覚醒を促してくる。

「う・・・んっ・・・」

「ユーリ?起きたのかい?」

すぐそばで愛しい人の声が聞こえる。それと同時にシャッと音がして、眩しい光が遮断された。

「ん~・・・レイ?」

「そうだよ。昨日のことは覚えている?少し力を使い過ぎたみたいだね。今日は陛下もゆっくり休養をとるようにとのことだから、もう少し寝てて大丈夫。私も今日はお休みを頂いたから一日ユーリのそばにいられるよ」

レイはそう言って微笑みながらチュッと軽く僕の額にキスをくれた。僕は寝惚けながらもニコッと笑い返す。


ーーーフフッ、嬉しいなぁ。
ーーー今日はレイを独り占めできるんだ。
ーーーだったら寝るのはもったいないなぁ。


頭ではそう思っているけれど、なかなか身体が言うことを聞いてくれない。ベッドの中でもごもごしていると、隣に優しい香りがする温かいものが潜り込んできた。
それは僕を優しく包み込んで、起きようとしていた僕をまた夢の中へと誘う程の魅惑的な力を持っている。

トン、トン、と僕の背中を包み込んだ逞しい腕が、柔らかくゆっくりと優しいリズムを刻む。

「もう少し、一緒に眠ろう。大丈夫。まだ今日は始まったばかりだから時間はたっぷりある。君が再び起きるまで、ずっとこうしているから」

レイはそう言って、僕の隣でそっと目を閉じた。僕は完全に眠りに落ちる前に、愛しい人の顔を目に焼き付ける。どうか、夢の中でもレイといられますように。そうして再び目を閉じて、優しい温もりに包まれながら深い眠りへと落ちていく。


ねぇ?レイ。どんな時でも、僕はレイがそばにいてくれるならそれだけで幸せだよーーー。






太陽の光が眩しい。もう朝なのか?
俺はまだ眠たい目をなんとかこじ開けて、ゆっくりと身を起こす。
夢を見た。いつものように内容までは覚えていないけれど、優しい温もりに包まれた幸せな夢だった。

(ハァ~、出来ればもう一度見たいけど・・・)

と、そこで俺は現在の状況にハッとする。みるみる頭が覚醒していき、ザッと血の気が引いた。

「レイ様っ!!」

ガバッと起き上がり、俺は寝室の扉を勢いよく開けて隣の部屋へと駆け出した。そこに俺の探している人はおらず、視線をテーブルの上にやると、そこは綺麗に片付けられ、ラスティの入った箱だけが置かれていた。中身を見ると、もともと入っていた量の半分のラスティが無くなっている。

(俺、どうしたんだっけ?ラスティをレイ様と一緒に食べようとしたところまでは覚えてるけど、その後の記憶がない・・・)

俺はレイ様と最後挨拶をして別れたのか?
それともーーー?

(うわぁ!ヤバイ!自分からレイ様を呼んでおいて途中から記憶がないなんて!)

俺はかなりパニックになりながら、とにかくもう時間も時間なので、出かける支度をする為に再び寝室へと舞い戻る。

すると部屋へと入った瞬間に、さっきは慌てていて見えていなかったが、ベッドの横の小さなテーブルの上に何やら手紙らしきものが置いてあるのが目に入った。俺は急いで駆け寄りその手紙を手にする。そこには、流麗な文字で俺へのメッセージが綴られていた。



ユーリへ

おはよう。これを読んでいる頃にはもう朝になっているかもしれないな。昨日はユーリおすすめの店でユーリの友人たちとの色んな話が聞けて楽しかったよ。ラスティもありがとう。とても美味しかった。
ところで最近無理はしていないか?お酒の飲み過ぎもあったかもしれないけれど、途中で力が抜けたように眠ってしまったから、驚いたよ。頑張り屋の君だから、何事も無理をしていそうで心配だけど、本当に大変な時やしんどい時は昨日話していた友人たちにも頼るように。もちろん俺も何かあれば駆け付けるから。

ユーリのことだから、起きてすぐに慌ててるかもしれないけど、大丈夫。本当に昨日は楽しい時間をありがとう。俺は朝が早いから宿舎に帰るけれど、また図書館に会いに行くから。あと、お言葉に甘えてラスティを半分頂いていくよ。じゃぁ、今日もユーリにとって良い一日となりますように。

レインロード・バスティード



「・・・レイ様」

俺は読み終えた手紙をテーブルに戻してベッドのふちに腰を下ろす。
ハァ~っと盛大に溜息をついて俺はそのまま後ろのベッドに背中から沈み込む。

(あぁ~、やっぱりあの後眠り込んじゃったんだ俺・・・)

後悔しても、もはや後の祭り。レイ様には次に会った時にお詫びしよう。とりあえず先に俺も手紙を書こうかな?
チラリとレイ様の手紙の方を向いて、むくっと起き上がり、再度レイ様の手紙を手にする。もう書き終えてからかなり時間は経っているはずなのに、微かにレイ様の温もりを感じる気がした。

(本当にレイ様は優し過ぎるよね・・・。普通部屋に呼んでおいて、勝手に眠り込んだ相手に対してこんな手紙残すかな?俺ならイタズラの一つや二つして帰りそう)

「・・・・・・。フゥ、よし!」

(やってしまったことは仕方がない。気持ちを切り替えて、前に進もう!レイ様が今日も良い日になるようにって言って下さってるんだから、今日も一日頑張らなきゃ!えっと、程々に?)

俺は気持ちも新たに、まずは仕事に行く準備を始める為に本格的に行動を開始した。





「あっ・・・!」

そうしていつものように宿舎の部屋を出る直前、俺は慌てて寝室のベッドの横へと走り込む。小さなテーブルの上に置いてあるその手紙を俺は小さく折り畳み、上着の内ポケットへと入れ込んだ。自然と笑みがこぼれてきて、俺は勝手に赤面する。ブンブンと顔を振っては前を向き、ようやく俺は改めて宿舎の部屋を後にしたのだった。



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