ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第6章 魔獣殲滅作戦

51. 新たな出会い (ユーリ)

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夢の中。今日は何故かこれが夢だと理解している。幼い頃から繰り返し見る、いつも目覚めると忘れてしまう、うたかたの夢。


周りには何もない。真っ白な空間の真ん中で一人の青年が泣いている。


ーーーど・・・して。

ーーーどぅ・・して?

ーーーどうして!?


俺の心が彼の慟哭とシンクロするように、痛みを放つ。


ーーー僕に。

ーーー僕に力が。

ーーー僕にこんな力があるから!!


その叫びは、誰に向けてのものなのか。この空間に応えるものなど存在しない。彼の嘆きを止めたくて、手を伸ばせば伸ばすほど、何か見えない力によって、俺は彼からどんどんどんどん離されていく。


ーーーいらない。

ーーーこんな力いらないっ。

ーーー僕が欲しいのは。

ーーー僕が願うのは、一つだけ!!

ーーー・・・・・・・・・!!!



彼の叫びと共に、真っ白な空間がさらにまばゆい光を放ち、俺は目を開けていられなくなる。




しばらく目を閉じたまま、どれくらいの時間が経ったのだろうか。俺は恐る恐るゆっくりと再び目を開けてみる。

「あっ・・・」

そこはいつも通りの自分の部屋だった。
俺は顔と目線だけをあちこち動かし、 昨晩と変わらない部屋の様子に夢から覚めたのを実感する。

(あれは・・・)

俺は今見た夢の中の人物を思い返しながら、ゆっくりとベッドから起き上がった。

幼い頃から、切ない気持ちで目覚めることは多々あった。その都度、夢の内容を覚えていなくて何とももどかしい想いをしたものだが・・・。

今回夢の中で、懇願し、叫ぶ青年が最後に見せた姿。俺が見た、その姿はーーー。

「あれは・・・俺?」


いや。俺、というか、俺のそっくりさんと言えばいいだろうか?彼の顔を見た時にドキッとした。顔は確かにそっくりなのだが、夢の中の彼は、俺とは雰囲気や纏う空気感からして何か異質だった。

年齢も今の俺とそれほど変わらない気がしたが・・・どのような生き方で、何があって彼はあそこまでの悲愴感、絶望感を抱いているのか。同じ顔なだけあって、なんだか落ち着かない。

(そういえば以前にも、俺そっくりな青年が出てくる夢を見たっけ?)

その時夢に出てきた青年も、夢の終わりは悲しみに満ちていた。それまでは、恋人?だろうか、相手の人物と幸せそうにしていたのに。

これは偶然だろうか?ここ最近になって、俺そっくりな青年の夢を度々見るなんて。しかもどちらも目覚めた後、夢の感情にしばらくシンクロするように俺の心が痛みを放つ。

俺は胸に手を当てて、大きく深呼吸をした。何度か繰り返すと、気持ちもだいぶ落ち着いてきた。最近、自分自身に色々あるんで気付かず神経質になっているのかもしれない。こないだ少し無い物ねだりみたいな事を考えてしまったから、自分を戒める意味でこんな夢を見てしまったのだろうか?

「ゔ~~。・・・・・・よしっ!!」

俺は勢いよくベッドから離れて出かける準備をする。グダグダと考えていても、自分の経験上こういう事に関してはいつまでたってもすっきりした答えは出てこない。ならば、こういう時は体を動かすのが一番だ。ちょうどいい事に、仕事が始まるまでにはまだ時間があるので久々に訓練場で汗を流してこようと、俺はさっそく行動を開始した。









王宮には、騎士団と魔導士団それぞれに分かれた訓練場と、もう一つ合同で使用可能な訓練場が存在する。基本は今のような騎士団と魔導士団がパーティーを組んだ時によく利用されるが、訓練場自体が広く、フリースペースは常に開放してあり、個々に区分けもされているので使いやすく、仕事前や仕事後など体を動かす為に多くの隊員達が個々に利用している。
俺はそんなにしょっちゅう使うわけではないので、区分けされたフリースペースを一つずつ覗きながら自分が入れそうなスペースを探す。自分の身の丈に合わないレベルのところに入るとちょっと体を動かすどころではなく、その日の仕事に支障をきたすからこの選択はとても重要だ。

少しして俺は、ようやく自分が入れそうなスペースを見つけた。中にいるのは三人ほど。騎士団の、おそらく俺と同じ今年の新人隊員たちだろうと予測を立てる。

「ごめん、ここ一緒にいいかな?あんまりこの訓練場には来ないんだけど、今朝はちょっと体を動かしたくなっちゃって」

俺がそう言って中のメンバーに声をかけると、全員キョトンとした表情で俺を見たが、すぐに返答が返ってくる。

「かまわないよ。俺たちもそんな感じだし」

「まぁ、今はみんな魔獣のことでピリピリしてるから体も動かしたくなるってね~」

こちらに近づいてきた二人がそれぞれ口にする。

「とりあえずよろしく。俺は騎士団第七師団に属してるイーサン・レコード。こいつは・・・」

「はいはぁい!僕は騎士団第六師団に属してますヴィヴィアン・ライトフット。ヴィーって呼んでね~」

「うん、よろしく。俺は王宮専属魔導士団に属してるユーリィ・ブランシュ。お手柔らかに頼むよ」

俺たちは互いに自己紹介しながら、軽く握手を交わす。

「へぇ。僕たちと同じくらいの年齢っぽいのにあんまり見たことないなと思ったら魔導士かぁ。ここは合同の訓練場だけど魔導士って普段はここ使うのやっぱり珍しいんだよね~」

ヴィーは人懐こそうに俺の顔を覗き込みながらニコニコしている。

「うん。俺らは基本魔法がメインだからね。余程じゃないと普段、騎士団みたいな訓練に参加しようとは思わないかなぁ。とはいえ、魔導士も結構体力ないとキツイんだけど」

俺は先輩のスパルタ訓練を思い浮かべながら心の中で苦笑いしていた。すると今度は不思議そうに声がかかる。

「ブランシュは同じ魔導士たちの訓練に参加しないのか?」

「俺も魔法の訓練はするけど、いざという時の為に体も動くようにしときたいからさ。あぁ、名前はユーリィでいいよ。俺もイーサンって呼んでいい?」

「あぁ」

俺たちは話すうちに同期だということ(俺の予想が当たってた)もありすっかり意気投合していた。そうしてふと俺は気になってイーサンたちのもといた場所にまだいるあと一人の人物に目をやる。それにいち早く気付いたヴィーが、その人物のもとへと走って行った。


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