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第6章 魔獣殲滅作戦
50. 衝動(ユーリ)
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「ハァ~・・・・・・」
魔導士たちが集う訓練棟の一角で、俺はついつい深い溜め息を吐いていた。何かやたらと最近溜め息を吐くことが多い。
というのも、つい先日アランの実家に泊まりに行かせてもらって、そこでアランにレイ様とのことを相談すると同時に改めて自分の気持ちに向き合い、今の気持ち全てをレイ様にぶちまけよう!と、決意を新たにしたにもかかわらず、それ以降ぱったりとレイ様に会う機会がなくなってしまったのだ。
相手がおらず吐き出せない気持ちがグルグルと胸の内側で回っていて、恋をするってこんなにエネルギーを使うものなんだなぁと近頃しみじみ感じている。
(レイ様が不足してる・・・。レイ様に癒されたい)
もともとそこまで頻繁に会っていた訳ではないが、会いたいと思った時にしばらく会えないのは結構ツライ。こう思うのも、自分のレイ様への意識が少し変化したからかもしれない。それにーーー。
『好きだという気持ちが、怖いという気持ちに負けてしまうのは、なんだか・・・癪に障るし』
先日のアランの言葉。アランはきっと深い意味は無かったんだと思うけど・・・。
改めて自分自身レイ様への気持ちに向き合った時に、何故かやっぱりまだ心の奥に不安や怖いって気持ちがあるんだけど、あの言葉を聞いて確かにそうだなって思った。
レイ様が好きだって、レイ様の事を考える度にレイ様への気持ちがどんどん大きくなるのに、怖いって気持ちが邪魔して前に進めないなんて。
これからもレイ様のそばにいたいって強く思うのに、その想いが何かわからない不安に負けてしまうなんて。
なんかそれってすごく悔しい。
(こういう事に改めて気付かせてくれたアランには本当に感謝だな)
アランが背中を押してくれたおかげで自分の気持ちがはっきりした。遠回りしちゃったけど、たぶん自分ですぐに認められなかっただけで、レイ様と初めて会った時から俺はレイ様に惹かれていたんだと思う。なんてことはない、お互い一目惚れだったってことか。
一度腹をくくってしまえば、もともとそんなにクヨクヨするタイプではないので(恋愛面では駄目みたいだけど)、あとは成るように成る!と思ってるんだけど。
(まだ、遅くはないよね・・・!)
そんなこんなで気持ちは前向きなのに、なかなか上手くいかないもので、仕事中にこんなことを考えてること自体駄目駄目なんだけど。だいたいレイ様と会う機会がなくなったのは、今俺たち新人王宮専属魔導士が直面している問題に大きく関わっている事柄のせいだ。
『魔獣殲滅の為の後方支援』
そう、どうやら例の噂は本当だったらしく、本来ならこの時期の俺たち新人魔導士は、近くの街外れへと恒例の魔獣探査に出かけるはずだったのだが、いつ隣国に現れた噂の魔獣が国境を越えて、この国に現れるかわからないとのことで、今から新しくパーティーを組み、後方支援の為の準備(訓練)を進めているのだ。
同期の奴らは、俺と同じく予想外の出来事に少々落ちつかない様子なのだが、その中でアランだけは後方支援ということに少々不満があるようだ。
(全く、アランの奴普段は面倒くさいって言ってあまり喜怒哀楽を表に出さない癖に、どうしてこう魔法での実戦とかがある時には人一倍やる気でいるんだろう?)
アランが強いのはわかっているが、今回はさすがにレイ様たちが厳戒体制を敷くほどの案件だ。頼むから無茶だけはしないでほしい。
とはいえ、アランがいくら不満を持とうと俺たち新人はもう後方支援と役割が決まっているので、余程のことがない限り出番はなさそうだけど。
(レイ様・・・ちゃんと休息取られてるかなぁ?きっと騎士団の師団長たちはこの件で色々と忙しいに違いない。少しでも何かレイ様の助けになれればいいんだけど、後方支援のパーティー内でも俺、ほとんど役立たずだしなぁ・・・)
俺の使用可能魔法は、治癒と修復の2つ。攻撃系の魔法はもちろんのこと、防御魔法すら使えない。これでどうやって魔物と戦うの?って感じだけど、今回は後方支援なのでとにかく自分の出来ることを探して今後に繋げていこうと思う。
「あっ、そういえば・・・」
思わず声に出てしまったが、そういえばレイ様とは、同期の奴らの話とか普段の生活のたわいもない話をした覚えはあるが、魔法についての話は今までしたことがなかったなと今更ながらに思い出す。
レイ様は、俺が王宮専属魔導士の中でも属性が2つしかなく、魔力量も少ないってことを知っているだろうか?
属性に関しては仕事上わかることなので、同じ魔導士たちには俺が2属性だということは周知されている。だが、王宮専属魔導士として、いや、魔法を扱う者として、2属性などこの国では前代未聞であり、何故俺なんかが王宮専属魔導士の職につけたのか、俺自身未だにもって不可解ではある。そして当たり前に、その疑問は他の王宮専属魔導士たちも持っているはずなのだが、今までそのことについて誰かに問い詰められたり、邪険にされたりしたこともなく、王宮専属魔導士として、とても平和な日々を送っている。
ふとこの平和な日々が逆に気になって、アランに一度この話をしてみたところ、どうやら俺は特記事項持ちということになっているらしかった。
特記事項持ちとは、火、水、風、雷、防御、治癒、修復の7つの魔法の中で自分の属性魔法を最高レベルに極めていたり、通常の魔法とは違った使い方ができたり、とにかく他者とは違った形で魔法を行使できる者に使われる名称だ。これについては、特に誰が何をできるなどの公表義務はなく、王宮専属魔導士では個々の能力を全て知っているのは団長、副団長のみである。別に能力自体秘密という訳ではないので、自らの能力を公表している者もいれば、特記事項持ちだとだけわかるようにしている者もいる。
いずれにしても、特記事項持ちはその能力から一目おかれる存在で、どうやら俺がその特記事項持ちになっているというのだ。
どおりで誰からも俺が2属性だということに対して問い詰めてこないと思ったら、そんな設定になっていたとは。俺自身が知らずに、周りにその情報が周知されているということは、おそらくマティス先輩が何かしら操作をしてくれていたのだろう。
俺を王宮専属魔導士に推薦してくれたのは、マティス先輩だ。まさか本当に王宮専属魔導士になれるとは思っていなかったが、先輩は俺が周囲の人の目を心配する度に“大丈夫、大丈夫”とそれだけ言い続けて来た。きっと、俺が気付かないうちに早々に手を打ってくれていたのだ。
だいたい、特記事項なんてものは俺にはない。2属性の本当にただ魔力量の低いだけのパッとしない人間なのだ。自分の力は自分がよく知っているから今更卑屈になるつもりはないが・・・。
きっとレイ様は、俺の全てを知っても今と変わらず、優しく受けとめてくれると思う。でもやっぱり、これは自分の我儘だが、レイ様を想う今だから、こういう大きな事柄を前に、考えてしまう。ずっと以前に納得して、心の奥にしまい込んだ想いを。そうーーー。
ーーー力が。俺にもっと力があれば・・・
魔導士たちが集う訓練棟の一角で、俺はついつい深い溜め息を吐いていた。何かやたらと最近溜め息を吐くことが多い。
というのも、つい先日アランの実家に泊まりに行かせてもらって、そこでアランにレイ様とのことを相談すると同時に改めて自分の気持ちに向き合い、今の気持ち全てをレイ様にぶちまけよう!と、決意を新たにしたにもかかわらず、それ以降ぱったりとレイ様に会う機会がなくなってしまったのだ。
相手がおらず吐き出せない気持ちがグルグルと胸の内側で回っていて、恋をするってこんなにエネルギーを使うものなんだなぁと近頃しみじみ感じている。
(レイ様が不足してる・・・。レイ様に癒されたい)
もともとそこまで頻繁に会っていた訳ではないが、会いたいと思った時にしばらく会えないのは結構ツライ。こう思うのも、自分のレイ様への意識が少し変化したからかもしれない。それにーーー。
『好きだという気持ちが、怖いという気持ちに負けてしまうのは、なんだか・・・癪に障るし』
先日のアランの言葉。アランはきっと深い意味は無かったんだと思うけど・・・。
改めて自分自身レイ様への気持ちに向き合った時に、何故かやっぱりまだ心の奥に不安や怖いって気持ちがあるんだけど、あの言葉を聞いて確かにそうだなって思った。
レイ様が好きだって、レイ様の事を考える度にレイ様への気持ちがどんどん大きくなるのに、怖いって気持ちが邪魔して前に進めないなんて。
これからもレイ様のそばにいたいって強く思うのに、その想いが何かわからない不安に負けてしまうなんて。
なんかそれってすごく悔しい。
(こういう事に改めて気付かせてくれたアランには本当に感謝だな)
アランが背中を押してくれたおかげで自分の気持ちがはっきりした。遠回りしちゃったけど、たぶん自分ですぐに認められなかっただけで、レイ様と初めて会った時から俺はレイ様に惹かれていたんだと思う。なんてことはない、お互い一目惚れだったってことか。
一度腹をくくってしまえば、もともとそんなにクヨクヨするタイプではないので(恋愛面では駄目みたいだけど)、あとは成るように成る!と思ってるんだけど。
(まだ、遅くはないよね・・・!)
そんなこんなで気持ちは前向きなのに、なかなか上手くいかないもので、仕事中にこんなことを考えてること自体駄目駄目なんだけど。だいたいレイ様と会う機会がなくなったのは、今俺たち新人王宮専属魔導士が直面している問題に大きく関わっている事柄のせいだ。
『魔獣殲滅の為の後方支援』
そう、どうやら例の噂は本当だったらしく、本来ならこの時期の俺たち新人魔導士は、近くの街外れへと恒例の魔獣探査に出かけるはずだったのだが、いつ隣国に現れた噂の魔獣が国境を越えて、この国に現れるかわからないとのことで、今から新しくパーティーを組み、後方支援の為の準備(訓練)を進めているのだ。
同期の奴らは、俺と同じく予想外の出来事に少々落ちつかない様子なのだが、その中でアランだけは後方支援ということに少々不満があるようだ。
(全く、アランの奴普段は面倒くさいって言ってあまり喜怒哀楽を表に出さない癖に、どうしてこう魔法での実戦とかがある時には人一倍やる気でいるんだろう?)
アランが強いのはわかっているが、今回はさすがにレイ様たちが厳戒体制を敷くほどの案件だ。頼むから無茶だけはしないでほしい。
とはいえ、アランがいくら不満を持とうと俺たち新人はもう後方支援と役割が決まっているので、余程のことがない限り出番はなさそうだけど。
(レイ様・・・ちゃんと休息取られてるかなぁ?きっと騎士団の師団長たちはこの件で色々と忙しいに違いない。少しでも何かレイ様の助けになれればいいんだけど、後方支援のパーティー内でも俺、ほとんど役立たずだしなぁ・・・)
俺の使用可能魔法は、治癒と修復の2つ。攻撃系の魔法はもちろんのこと、防御魔法すら使えない。これでどうやって魔物と戦うの?って感じだけど、今回は後方支援なのでとにかく自分の出来ることを探して今後に繋げていこうと思う。
「あっ、そういえば・・・」
思わず声に出てしまったが、そういえばレイ様とは、同期の奴らの話とか普段の生活のたわいもない話をした覚えはあるが、魔法についての話は今までしたことがなかったなと今更ながらに思い出す。
レイ様は、俺が王宮専属魔導士の中でも属性が2つしかなく、魔力量も少ないってことを知っているだろうか?
属性に関しては仕事上わかることなので、同じ魔導士たちには俺が2属性だということは周知されている。だが、王宮専属魔導士として、いや、魔法を扱う者として、2属性などこの国では前代未聞であり、何故俺なんかが王宮専属魔導士の職につけたのか、俺自身未だにもって不可解ではある。そして当たり前に、その疑問は他の王宮専属魔導士たちも持っているはずなのだが、今までそのことについて誰かに問い詰められたり、邪険にされたりしたこともなく、王宮専属魔導士として、とても平和な日々を送っている。
ふとこの平和な日々が逆に気になって、アランに一度この話をしてみたところ、どうやら俺は特記事項持ちということになっているらしかった。
特記事項持ちとは、火、水、風、雷、防御、治癒、修復の7つの魔法の中で自分の属性魔法を最高レベルに極めていたり、通常の魔法とは違った使い方ができたり、とにかく他者とは違った形で魔法を行使できる者に使われる名称だ。これについては、特に誰が何をできるなどの公表義務はなく、王宮専属魔導士では個々の能力を全て知っているのは団長、副団長のみである。別に能力自体秘密という訳ではないので、自らの能力を公表している者もいれば、特記事項持ちだとだけわかるようにしている者もいる。
いずれにしても、特記事項持ちはその能力から一目おかれる存在で、どうやら俺がその特記事項持ちになっているというのだ。
どおりで誰からも俺が2属性だということに対して問い詰めてこないと思ったら、そんな設定になっていたとは。俺自身が知らずに、周りにその情報が周知されているということは、おそらくマティス先輩が何かしら操作をしてくれていたのだろう。
俺を王宮専属魔導士に推薦してくれたのは、マティス先輩だ。まさか本当に王宮専属魔導士になれるとは思っていなかったが、先輩は俺が周囲の人の目を心配する度に“大丈夫、大丈夫”とそれだけ言い続けて来た。きっと、俺が気付かないうちに早々に手を打ってくれていたのだ。
だいたい、特記事項なんてものは俺にはない。2属性の本当にただ魔力量の低いだけのパッとしない人間なのだ。自分の力は自分がよく知っているから今更卑屈になるつもりはないが・・・。
きっとレイ様は、俺の全てを知っても今と変わらず、優しく受けとめてくれると思う。でもやっぱり、これは自分の我儘だが、レイ様を想う今だから、こういう大きな事柄を前に、考えてしまう。ずっと以前に納得して、心の奥にしまい込んだ想いを。そうーーー。
ーーー力が。俺にもっと力があれば・・・
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