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第十五話 血路
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「――ッ!?」
反射的にソロンは障壁を間に創り出す。が、そんなものに意味はなく易々と斬り捨てたグレイシーの刃が胸元へと届く――。
直前、ソロンの身体が何かに弾かれるようにして後退したことで間一髪、回避した。
「危なかった……やはり保険は掛けておくべきですね……」
一定以上の距離を取りながら十以上の魔法陣を展開することで、ソロンは迎撃の構えを取る。
「それにしてもフィアという名前……。なるほど、魔王でしたか」
「末期の言葉はそれだけですか?」
その言葉と共に再びグレイシーが動きソロンへと迫る。
「いえいえ。まだ死ぬつもりもないので逃げたいところですが、
魔王に付き従っている貴女にも興味が湧いてきました」
ソロンがそう答えると魔法陣に光が灯り、光線が射出される。
それを必要最低限の動きだけで躱し、グレイシーはソロンの正面に陣取った魔法陣を光線ごと斬り捨てた。
「魔王と共にする魔族。この力、六魔将の一人かと思いましたが、私の識る情報のいずれとも合致しない。吸血種の特徴を持ちながら、鬼のような力を振るう。これは……?」
魔法陣を盾に後退し続けるソロンは思考を整理しながら、仮説を垂れ流していく。
「紅い角から微かに放出されている血の様なマナの粒子。
本来、鬼族の角はマナを吸収し自己強化を促す器官であるはず。逆であることに何の理由が?
それに吸血種であるならば何故、他に血を操らない?
偽装している可能性は?」
様々な推測を立てるソロンへと、光線を掻い潜り斬り捨てることで肉薄するグレイシーが迫る。
グレイシーの剣が首を捉える瞬間、ソロンは一つの結論へと辿り着く。
「そうか。鬼族と吸血種の混血種……!」
「――ッ!?」
動揺からグレイシーの剣の軌道が微かにずれる。
首を捉えていたはずの剣は肩を切り裂き、虚空を鮮血が彩った。
「ぐッ! はははは!!」
苦悶の声が漏れ出るが、すぐさま笑い声へと変わる。
「なるほど。図星ですか。
吸血種は純血を貴ぶと聞いていましたが。なるほど、私もまだまだ常識に囚われていたようです」
自身の出した結論に答えを得たことで満足そうにソロンは頷く。
「混血種はその中途半端さ故に種族本来の力を引き出すことができず、実力至上主義の魔界では忌み嫌われている存在であるはずですが。まさか魔王と共に行動しているのが、その混血種とは」
そう言って再びグレイシーを観察しながら、さらに推測していく。
「吸血種の血を操る力で作った角で鬼族の力も引き出している、といったところですか。
考えを改める必要がありそうですね」
少ない情報から見事に推察してみせたソロンの観察眼に舌を巻く。
人間にグレイシーの扱う力の本質を見抜かれるとは思っていなかった。
「すぐに死ぬのですから意味のない推察です」
「いえ、意味はありました。それと分が悪いようですのでここまでと致しましょう」
グレイシーが次で仕留めると構えた直後、ソロンの背後の空間が歪み始めた。
「それではまた、お会いましょう。魔王様?」
ソロンは背後の歪みに身を委ね、グレイシーが逃がすまいと追いすがる。
「グレイシー!!」
刃が歪みに届く直前。呼びかけに応えたグレイシーの動きが止まる。
空間の歪みが消え、ソロンが居なくなったことを確認するとグレイシーが降りてくる。
「よかったのですか?」
「罠の可能性もあるから仕方ないわ。……一杯食わされたわね」
もちろん、グレイシーの力を疑っている訳ではない。
悔しいけど今回は相手が一手上手だった。
「それと、ありがとう。助かったわ」
「いえ、間に合ってよかったです」
グレイシーに感謝しつつ、次の行動へと移ろうとした瞬間。
強烈な眠気と共に浮遊感に襲われる。
「あっ……」
力が抜け、倒れる身体をグレイシーが抱き留める。
「また、これ……。ごめん……少しねむ――」
そう言い終わらぬうちに意識が深い闇へと落ちていく。
「はい。おやすみなさい」
消えゆく意識の中で聴いたグレイシーの優しい声音はどこか心地よかった。
反射的にソロンは障壁を間に創り出す。が、そんなものに意味はなく易々と斬り捨てたグレイシーの刃が胸元へと届く――。
直前、ソロンの身体が何かに弾かれるようにして後退したことで間一髪、回避した。
「危なかった……やはり保険は掛けておくべきですね……」
一定以上の距離を取りながら十以上の魔法陣を展開することで、ソロンは迎撃の構えを取る。
「それにしてもフィアという名前……。なるほど、魔王でしたか」
「末期の言葉はそれだけですか?」
その言葉と共に再びグレイシーが動きソロンへと迫る。
「いえいえ。まだ死ぬつもりもないので逃げたいところですが、
魔王に付き従っている貴女にも興味が湧いてきました」
ソロンがそう答えると魔法陣に光が灯り、光線が射出される。
それを必要最低限の動きだけで躱し、グレイシーはソロンの正面に陣取った魔法陣を光線ごと斬り捨てた。
「魔王と共にする魔族。この力、六魔将の一人かと思いましたが、私の識る情報のいずれとも合致しない。吸血種の特徴を持ちながら、鬼のような力を振るう。これは……?」
魔法陣を盾に後退し続けるソロンは思考を整理しながら、仮説を垂れ流していく。
「紅い角から微かに放出されている血の様なマナの粒子。
本来、鬼族の角はマナを吸収し自己強化を促す器官であるはず。逆であることに何の理由が?
それに吸血種であるならば何故、他に血を操らない?
偽装している可能性は?」
様々な推測を立てるソロンへと、光線を掻い潜り斬り捨てることで肉薄するグレイシーが迫る。
グレイシーの剣が首を捉える瞬間、ソロンは一つの結論へと辿り着く。
「そうか。鬼族と吸血種の混血種……!」
「――ッ!?」
動揺からグレイシーの剣の軌道が微かにずれる。
首を捉えていたはずの剣は肩を切り裂き、虚空を鮮血が彩った。
「ぐッ! はははは!!」
苦悶の声が漏れ出るが、すぐさま笑い声へと変わる。
「なるほど。図星ですか。
吸血種は純血を貴ぶと聞いていましたが。なるほど、私もまだまだ常識に囚われていたようです」
自身の出した結論に答えを得たことで満足そうにソロンは頷く。
「混血種はその中途半端さ故に種族本来の力を引き出すことができず、実力至上主義の魔界では忌み嫌われている存在であるはずですが。まさか魔王と共に行動しているのが、その混血種とは」
そう言って再びグレイシーを観察しながら、さらに推測していく。
「吸血種の血を操る力で作った角で鬼族の力も引き出している、といったところですか。
考えを改める必要がありそうですね」
少ない情報から見事に推察してみせたソロンの観察眼に舌を巻く。
人間にグレイシーの扱う力の本質を見抜かれるとは思っていなかった。
「すぐに死ぬのですから意味のない推察です」
「いえ、意味はありました。それと分が悪いようですのでここまでと致しましょう」
グレイシーが次で仕留めると構えた直後、ソロンの背後の空間が歪み始めた。
「それではまた、お会いましょう。魔王様?」
ソロンは背後の歪みに身を委ね、グレイシーが逃がすまいと追いすがる。
「グレイシー!!」
刃が歪みに届く直前。呼びかけに応えたグレイシーの動きが止まる。
空間の歪みが消え、ソロンが居なくなったことを確認するとグレイシーが降りてくる。
「よかったのですか?」
「罠の可能性もあるから仕方ないわ。……一杯食わされたわね」
もちろん、グレイシーの力を疑っている訳ではない。
悔しいけど今回は相手が一手上手だった。
「それと、ありがとう。助かったわ」
「いえ、間に合ってよかったです」
グレイシーに感謝しつつ、次の行動へと移ろうとした瞬間。
強烈な眠気と共に浮遊感に襲われる。
「あっ……」
力が抜け、倒れる身体をグレイシーが抱き留める。
「また、これ……。ごめん……少しねむ――」
そう言い終わらぬうちに意識が深い闇へと落ちていく。
「はい。おやすみなさい」
消えゆく意識の中で聴いたグレイシーの優しい声音はどこか心地よかった。
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