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第二章
第二十七話 冤罪、そして
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「いい加減にして!!」
イリスが少女の首に剣を押し当てながら、叫ぶ。
「人の子よ。己が何をしているのか理解しておるのか?」
「してる! こうでもしないと、止まらないでしょ! 違う!?」
「何故、止める。お前も魔王の仲間だったのか!?」
人質にされながらも、少女はイリスにそう問いかける。
「違わないけど、違う! 殺し合う前にまず、話し合おうよ!」
「話し合うまでもなく、結論は出ている」
「わたし達は事情を知らないの。なんでフィアが悪いのか教えてくれない?」
何故、いきなり襲ってきたのか。不明だった動機をイリスが問い質す。
「言えば放してくれるんだろうな?」
「もちろん」
イリスが答えると、少女は動機を話し始めた。
「ボク達は森の異変を調査してた。村長を殺した犯人と精霊が狂い始めた原因を」
少女はそこからは語らない。
が、見てくる眼がその先を物語っている。
その最中に出会ったのが、魔王だと。
「冤罪過ぎるわ……」
怒りを通り越して、悲しくなってくる。
清々しいまでの言い掛かりだ。
「だがこのタイミングで魔王が居る理由はどうつける?」
「……」
限りなく黒い状況で、無実を証明しろとフェンは言う。
何を言っても逆効果になる状況の中、イリスが口を開く。
「森の異変はいつから?」
「三週間ほど前からだ」
「ならフィアには無理だと思う。数日前までフィアはアルウェウス王国に居たから」
「そう、なのか……」
「だが、紅い娘は魔王と親しいのだろう?」
第三者としての証明にはなり得ないとフェンが口にする。が、
「わたしは紅い娘じゃなくて、イーリス・ファン・ラーミナです。
今は亡きラーミナ帝国の第一皇女の名に於いて、この証言は絶対であると保証します」
「帝国の皇族か。虚偽であれば高くつくぞ」
「理解しております」
物怖じすることなく、イリスは頷く。
イリスの祖国の誇りに賭け、無実であると主張したことでフェンは落ち着きを取り戻し、矛を収めた。
「そうか。ではその主張をひとまず信じるとしよう」
「理解して頂きありがとうございます」
戦う意思を無くし、フェンの巨大化していた身体は空気が抜けたように小さくなっていった。
「フィアも魔法陣解いて降りてきて!」
なんとか場を収めたイリスが私を呼び戻す。
一方的に襲い掛かられた身としては腹の虫が治まらないけど、この場を収めたイリスの顔を立てるため地に降りていく。
「いきなり襲って悪かった」
地に足が着いてすぐ、少女がそう言って頭を下げた。
「フェンも謝るんだ」
少女の後ろで距離を取っている灰狼に謝罪を促すが、
「待て。おかしいと思わんのか?」
「何がだ?」
冷静に、そして未だ警戒の色を滲ませながら灰狼は口を開く。
「イーリスとやらの言ったことが事実であったとしても。
何故、魔王がここに居るのかの理由にはなっていないだろう?」
「あっ」
少女は確かに、といった顔で声を上げる。
「何故、魔王がここに居るのか説明してもらおうかの?」
「……」
ようやく収まったと思った場に重い沈黙が流れる。
口を開きたい感情に駆られるが、ここから先は理由の説明。
イリスに任せると言った以上、成り行きを見守るしかない。
「わたし達がここに来た理由は争いを止めたいから」
沈黙を破り、イリスがフェンの問いかけに答えた。
「わたしがフィアに協力してる理由でもあるんだけど、
フィアの魔王という名を使って争いを終わらせたい」
偽ることなくイリスは理由を語る。
「意志は理解した。して、お主らはこの地に何を望む?」
これは私への問い。
元より諍いが少なく、閉鎖的な国に求める条件は一つだけ。
「名目上の支配だ」
「はっは。面白いことを言う。理由を聞こうか」
イリスから会話を引き継ぎ、少女と灰狼に理由を語る。
「魔王の支配下として統一すれば過激派の同胞も納得するしかない。
仮に手を出した者がいれば処罰する大義名分が生まれる」
「ほう? 成る程のう。だが、過激派とやらも含めての魔界。
それを纏め上げられていない者に世界を纏める力は無いと思うが?」
「フェン。さっき危うく死ぬ所だったのに、それは負け惜しみにしか聞こえないぞ……」
「魔王以外にできる者が居ないから、私がやってるのよ」
他に成せる者が居るのなら、今頃私はグレイシーと紅茶を飲みながら隠居している。
「だが―――」
「フェン。もういい。理由は分かった」
少女が灰狼の声を遮り、話を終わらせる。
「さっきの話、代理の村長に掛け合ってみてもいい。代わりにボク達のことも手伝ってくれ」
「手伝うって調査のこと?」
聞き手に回っていたイリスが少女に問う。
「あぁ、森全体がおかしなことになっていてな」
「フィア、手伝おう!」
「はぁ……分かったわ。ただもう一つ条件をつけさせて」
断われない状況にため息を吐きつつ、この状況を有効活用すべくもう一つの条件を口にする。
「もう一人の同行者。グレイシーの捜索。それが私からの条件よ」
「分かった。人探しなら慣れている」
心強い返答により、光明が差し込む。
「交渉成立ね」
「あぁ、ボクはテュール。よろしく頼む、フィア」
少女はそう名乗り、手を差し出してきた。
「よろしくね。それで森の異変って何が起こっているの?」
差し出された手を握り返し、テュールに問いかける。
「未曽有の大厄災だ」
「……え?」
やっぱり早く滅ぼすべきだったかもしれない。
手を握り返しながら、そう後悔したのだった。
イリスが少女の首に剣を押し当てながら、叫ぶ。
「人の子よ。己が何をしているのか理解しておるのか?」
「してる! こうでもしないと、止まらないでしょ! 違う!?」
「何故、止める。お前も魔王の仲間だったのか!?」
人質にされながらも、少女はイリスにそう問いかける。
「違わないけど、違う! 殺し合う前にまず、話し合おうよ!」
「話し合うまでもなく、結論は出ている」
「わたし達は事情を知らないの。なんでフィアが悪いのか教えてくれない?」
何故、いきなり襲ってきたのか。不明だった動機をイリスが問い質す。
「言えば放してくれるんだろうな?」
「もちろん」
イリスが答えると、少女は動機を話し始めた。
「ボク達は森の異変を調査してた。村長を殺した犯人と精霊が狂い始めた原因を」
少女はそこからは語らない。
が、見てくる眼がその先を物語っている。
その最中に出会ったのが、魔王だと。
「冤罪過ぎるわ……」
怒りを通り越して、悲しくなってくる。
清々しいまでの言い掛かりだ。
「だがこのタイミングで魔王が居る理由はどうつける?」
「……」
限りなく黒い状況で、無実を証明しろとフェンは言う。
何を言っても逆効果になる状況の中、イリスが口を開く。
「森の異変はいつから?」
「三週間ほど前からだ」
「ならフィアには無理だと思う。数日前までフィアはアルウェウス王国に居たから」
「そう、なのか……」
「だが、紅い娘は魔王と親しいのだろう?」
第三者としての証明にはなり得ないとフェンが口にする。が、
「わたしは紅い娘じゃなくて、イーリス・ファン・ラーミナです。
今は亡きラーミナ帝国の第一皇女の名に於いて、この証言は絶対であると保証します」
「帝国の皇族か。虚偽であれば高くつくぞ」
「理解しております」
物怖じすることなく、イリスは頷く。
イリスの祖国の誇りに賭け、無実であると主張したことでフェンは落ち着きを取り戻し、矛を収めた。
「そうか。ではその主張をひとまず信じるとしよう」
「理解して頂きありがとうございます」
戦う意思を無くし、フェンの巨大化していた身体は空気が抜けたように小さくなっていった。
「フィアも魔法陣解いて降りてきて!」
なんとか場を収めたイリスが私を呼び戻す。
一方的に襲い掛かられた身としては腹の虫が治まらないけど、この場を収めたイリスの顔を立てるため地に降りていく。
「いきなり襲って悪かった」
地に足が着いてすぐ、少女がそう言って頭を下げた。
「フェンも謝るんだ」
少女の後ろで距離を取っている灰狼に謝罪を促すが、
「待て。おかしいと思わんのか?」
「何がだ?」
冷静に、そして未だ警戒の色を滲ませながら灰狼は口を開く。
「イーリスとやらの言ったことが事実であったとしても。
何故、魔王がここに居るのかの理由にはなっていないだろう?」
「あっ」
少女は確かに、といった顔で声を上げる。
「何故、魔王がここに居るのか説明してもらおうかの?」
「……」
ようやく収まったと思った場に重い沈黙が流れる。
口を開きたい感情に駆られるが、ここから先は理由の説明。
イリスに任せると言った以上、成り行きを見守るしかない。
「わたし達がここに来た理由は争いを止めたいから」
沈黙を破り、イリスがフェンの問いかけに答えた。
「わたしがフィアに協力してる理由でもあるんだけど、
フィアの魔王という名を使って争いを終わらせたい」
偽ることなくイリスは理由を語る。
「意志は理解した。して、お主らはこの地に何を望む?」
これは私への問い。
元より諍いが少なく、閉鎖的な国に求める条件は一つだけ。
「名目上の支配だ」
「はっは。面白いことを言う。理由を聞こうか」
イリスから会話を引き継ぎ、少女と灰狼に理由を語る。
「魔王の支配下として統一すれば過激派の同胞も納得するしかない。
仮に手を出した者がいれば処罰する大義名分が生まれる」
「ほう? 成る程のう。だが、過激派とやらも含めての魔界。
それを纏め上げられていない者に世界を纏める力は無いと思うが?」
「フェン。さっき危うく死ぬ所だったのに、それは負け惜しみにしか聞こえないぞ……」
「魔王以外にできる者が居ないから、私がやってるのよ」
他に成せる者が居るのなら、今頃私はグレイシーと紅茶を飲みながら隠居している。
「だが―――」
「フェン。もういい。理由は分かった」
少女が灰狼の声を遮り、話を終わらせる。
「さっきの話、代理の村長に掛け合ってみてもいい。代わりにボク達のことも手伝ってくれ」
「手伝うって調査のこと?」
聞き手に回っていたイリスが少女に問う。
「あぁ、森全体がおかしなことになっていてな」
「フィア、手伝おう!」
「はぁ……分かったわ。ただもう一つ条件をつけさせて」
断われない状況にため息を吐きつつ、この状況を有効活用すべくもう一つの条件を口にする。
「もう一人の同行者。グレイシーの捜索。それが私からの条件よ」
「分かった。人探しなら慣れている」
心強い返答により、光明が差し込む。
「交渉成立ね」
「あぁ、ボクはテュール。よろしく頼む、フィア」
少女はそう名乗り、手を差し出してきた。
「よろしくね。それで森の異変って何が起こっているの?」
差し出された手を握り返し、テュールに問いかける。
「未曽有の大厄災だ」
「……え?」
やっぱり早く滅ぼすべきだったかもしれない。
手を握り返しながら、そう後悔したのだった。
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