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2度目の告白
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『体は、大丈夫? 違和感とか、ない...?』
優しくておっとりした、低く甘い声。極上のカクテルリキュールのように、甘さで蕩けている間に酩酊させられそう。
(あぁ...。おれ、この声が好きだ。ずっと...ずっと聞いていたい....)
『...櫻?』
「あ、はい。大丈夫、デス。...朝は、驚いて...起きてすぐホテル出ちゃいました。スミマセン...」
『良いよ。体平気なら、良かった』
思考がとろとろ溶け出していく。考えなくても解った。この電話口の向こうに居る人が、今朝、おれと一緒にベッドで寝ていた“誰かさん”であると同時に...困ったことに、多分有名人の“ZERO”さんでも在るって。
(テレビで流れてた歌声と、同じだもん。一瞬しか聞いてないのに、間違いないって思える。そりゃ、アナウンサーのオネーサンも、ファンの子達も、キャーキャー言うよな。....声を聞いただけでこんな気持ちになるなんて....。“おれ加害者”説が濃厚だ...。どうしよう、正直に言って、謝っちゃう?)
生まれて初めての感覚なので、どう表現したら良いのか解らない。でも....。
「...おれ、貴方の声が.....すきです」
気付けば、思いを伝えていた。電話口の相手は呆れた様子もなく、楽しそうに笑っている。その音も、耳を擽ってヤバかった。
『2回目の告白、ありがとう。...昨日のコト、覚えてる?』
「いえ、申し訳無いんですが、全く...」
『やっぱり。じゃあ、俺のコトも忘れた?』
「.....すみません...」
『謝らなくて良いよ。でも...そうだな。話したい。今日、休みだよね? 昨日は『予定無い』って聞いたけど』
「え、あ。はい」
『うん。じゃあ、風呂入ってちゃんと温まってから、今櫻のスマホに送った地図の場所まで、来て』
「....解りました」
『敬語は要らないよ。俺はInfinityのボーカル、ZERO。本名は杉浦 遼平。改めてよろしく』
「は...うん。よろしく」
『じゃあ、またね』
ZEROこと遼平さんは、そう言うと電話を切った。
「はぁ~~~~~~......」
緊張で詰めていた息を、思いきり吐き出す。想定していた通りおれが忘れてる昨日の夜のことも、遼平さんは全部覚えているらしかった。
ただし、思っていた内容とは少し異なり、慰謝料を要求される事態とはならなかったが───。
(いや、まだ解んないか。『話したい』って言ってたもんな。それがどういう内容か....。聞くまでは、気が抜けない。.....あーーーーーーあの声で話し掛けられて、酔ってたおれが遼平さんを強引にお持ち帰り、しちゃったのかなぁ.....? 『2回目の告白、ありがとう』って...昨日も告白したのかよ、おれぇ....。でも、有名人でイケメンだからお誘いも多いだろうに、おれみたいなのに連れ込まれるかぁ? ....はぁ...)
メールを確認すると、遼平さんが言ったように場所の地図が着ていた。指定先は、有名な5つ星ホテル。もちろんおれは、足を踏み入れたこともない。ついでに、『今日は1日此処に居る。準備は急がなくて良いけど、必ず来て』と、メッセージも添えられていた。
(正直、あの脳内犯される感覚を、何度も味わうのは....よくないと思う。でも....遼平さんが昨日のことを水に流してくれないのなら...当事者のおれにも、責任はあるし。何より、昨日の夜、何があってあんなことになったのか....確認したい)
気持ちを固めたおれは、遼平さんに言われたようにゆっくり風呂に浸かって色々な部分をしっかりと洗ってから、お昼過ぎに指定されたホテルまで、電車で向かった。
優しくておっとりした、低く甘い声。極上のカクテルリキュールのように、甘さで蕩けている間に酩酊させられそう。
(あぁ...。おれ、この声が好きだ。ずっと...ずっと聞いていたい....)
『...櫻?』
「あ、はい。大丈夫、デス。...朝は、驚いて...起きてすぐホテル出ちゃいました。スミマセン...」
『良いよ。体平気なら、良かった』
思考がとろとろ溶け出していく。考えなくても解った。この電話口の向こうに居る人が、今朝、おれと一緒にベッドで寝ていた“誰かさん”であると同時に...困ったことに、多分有名人の“ZERO”さんでも在るって。
(テレビで流れてた歌声と、同じだもん。一瞬しか聞いてないのに、間違いないって思える。そりゃ、アナウンサーのオネーサンも、ファンの子達も、キャーキャー言うよな。....声を聞いただけでこんな気持ちになるなんて....。“おれ加害者”説が濃厚だ...。どうしよう、正直に言って、謝っちゃう?)
生まれて初めての感覚なので、どう表現したら良いのか解らない。でも....。
「...おれ、貴方の声が.....すきです」
気付けば、思いを伝えていた。電話口の相手は呆れた様子もなく、楽しそうに笑っている。その音も、耳を擽ってヤバかった。
『2回目の告白、ありがとう。...昨日のコト、覚えてる?』
「いえ、申し訳無いんですが、全く...」
『やっぱり。じゃあ、俺のコトも忘れた?』
「.....すみません...」
『謝らなくて良いよ。でも...そうだな。話したい。今日、休みだよね? 昨日は『予定無い』って聞いたけど』
「え、あ。はい」
『うん。じゃあ、風呂入ってちゃんと温まってから、今櫻のスマホに送った地図の場所まで、来て』
「....解りました」
『敬語は要らないよ。俺はInfinityのボーカル、ZERO。本名は杉浦 遼平。改めてよろしく』
「は...うん。よろしく」
『じゃあ、またね』
ZEROこと遼平さんは、そう言うと電話を切った。
「はぁ~~~~~~......」
緊張で詰めていた息を、思いきり吐き出す。想定していた通りおれが忘れてる昨日の夜のことも、遼平さんは全部覚えているらしかった。
ただし、思っていた内容とは少し異なり、慰謝料を要求される事態とはならなかったが───。
(いや、まだ解んないか。『話したい』って言ってたもんな。それがどういう内容か....。聞くまでは、気が抜けない。.....あーーーーーーあの声で話し掛けられて、酔ってたおれが遼平さんを強引にお持ち帰り、しちゃったのかなぁ.....? 『2回目の告白、ありがとう』って...昨日も告白したのかよ、おれぇ....。でも、有名人でイケメンだからお誘いも多いだろうに、おれみたいなのに連れ込まれるかぁ? ....はぁ...)
メールを確認すると、遼平さんが言ったように場所の地図が着ていた。指定先は、有名な5つ星ホテル。もちろんおれは、足を踏み入れたこともない。ついでに、『今日は1日此処に居る。準備は急がなくて良いけど、必ず来て』と、メッセージも添えられていた。
(正直、あの脳内犯される感覚を、何度も味わうのは....よくないと思う。でも....遼平さんが昨日のことを水に流してくれないのなら...当事者のおれにも、責任はあるし。何より、昨日の夜、何があってあんなことになったのか....確認したい)
気持ちを固めたおれは、遼平さんに言われたようにゆっくり風呂に浸かって色々な部分をしっかりと洗ってから、お昼過ぎに指定されたホテルまで、電車で向かった。
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