2人分生きる世界

晴屋想華

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第1章 無法

綾人と岬

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 今日は、岬の誕生日。彼氏としては、少し緊張している。なぜなら、サプライズを用意していて、喜んでくれるか不安だからだ。

「おはよー!綾人!」
「お!おはよう!」
「あれ?なんか硬くない?」
「そ、そんなことねーよ」
「そう?じゃあ行こー!」
「おう!」

 今日の計画を話していくと、まずは岬の大好きな水族館へ行く。水族館を堪能し、岬の大好きなサメのぬいぐるみを密かに購入。その後、昼食を水族館内で食べる。次に、映画館へ行く。サメ映画が上映されているため、それを見に行く。そして、ホテルへ向かうのだが、そのホテルが半年前からでも予約が取れないと言われている、岬もずっと行きたがっていたホテル。それは、シャーク・ザ・ウィンドーズ・ホテル。名前の通り、サメや様々な魚たちが入っている水槽が客室内に設置されているホテルである。そこのレストランで夕食を食べ、その後客室へ戻り、戻ると客室が飾り付けされているというサプライズもある。前もって用意していたプレゼントを俺たちが食事している間にホテルの人に置いてもらう。水族館で購入したサメのぬいぐるみも一緒に。そして、最後のサプライズにサメの飾りがされているケーキを持ってきてもらい終了である。
 岬の好きなものを好きなだけ堪能してもらうという今日のコンセプト。何もなければ成功できる。というか大丈夫だろうと信じている。何がなんでも成功してみせる!

「あーやと!」
「どした?」
「見てみて!」
「ん?お!サメだ!でっけー!ホホジロザメか?!」
「違うわよー。あれはシロワニよ。普通、水族館ではホホジロザメは飼育されてないのよ」
「あ、そうなのか。なんでだ?」
「それは、意外とデリケートな子なのよ、ホホジロザメは~!」
「へーあんなに怖そうな顔してるのにな」
「そこも可愛いポイントよ~」
「なるほどなー。そろそろお腹空いてきたな!」
「そうだね!あ!ハンバーガー食べたいー!」
「りょーかい!」

 今のところ順調に進んでおり、昼食も終え、映画も見終わった。あとは、岬には内緒にしているあのホテルへと向かう。

「いや~サメ映画最高すぎた!久しぶりにガチリアルなバージョンきたーって感じ!もう、や、やばいわ!もう一回見に行きたいもん!あー、次いつ行くー?!」
「分かった分かったって!一旦落ち着きなさい」
「落ち着けないわよ!あんなにリアルなサメ見せられたら!」
「ほんとにサメ大好きだなー」
「大好きに決まってるじゃない!綾人と同じくらい」
「俺はサメと同ランクか」
「何よー!不満?」
「いや、悪くない!むしろ、光栄です」
「その心意気、良いぞ、綾人殿」
「ははーー!岬様ー!」
「ところで、今日のホテルどこー?」
「ふっふっふー!」
「勿体ぶっちゃって~」
「今日のお宿は、こちらです!」
「……え……えーー!!ここ?!ここって、シャーク・ザ・ウィンドーズ・ホテルじゃない!!」
「そうだよ」

 よっしゃ、狙いどおり喜んでくれてる!これはいけるぞ!

「や、やばすぎる。予約取れたの?!すごい、、感動、、」
「まだ感動するには早いぞ。ほら、中入るぞ」

 めっちゃ喜んでくれてるな。よし、このままサプライズ成功させるぞー!

「うわーやっぱすげーな」
「待って、やばすぎる。ロビーが、ロビーに水槽が。しかもめっちゃでかい!!」
「お!あれサメじゃねーか?」
「サメちゃんだ!」
「でっけー!」
「はあ~可愛い~~」

 めっちゃ嬉しそーだなー。てか、可愛いなおい。でも、まだまだ行くぜー!お部屋に到着っと。

「よし、着いたぞ。ドア開けるね」
「うんお願いします」
 ピッ、ガチャッ。
「はあーーー!やばい、、、まるで海の中にいるみたい」
「本当だな!」
「綾人、本当にありがとう、、、ぐすっ」

 岬は泣いてしまった。まだサプライズが残ってるけど、こんなに喜んでけれるとは。本当に良かった。

「ほら、泣くなって!メイク落ちちゃうよ?これからとびきり美味しくて、美しいレストランに行くんだからさ!ま、スッピンでも岬は綺麗だから良いけどさ」
「うん、ありがと」

 レストラン会場へ到着。ロビーから見えていた水槽の向こう側がレストラン会場だったらしく、水槽が円状になっていて、レストラン会場が囲われている形になっている。

「レストランがレストランじゃないみたい……!もう幻想的すぎる!!」
「すべてが完璧に作り込まれていて、言葉が出てこねー」

 前菜が到着。

「うわ、前菜からこれってもうどうなってるの、、」
「うまそー!」
「いただきます!(綾人、岬)」
「ふふっ、揃っちゃったね」
「だな!」

 思わず声が揃い、少し照れる。

「ん~おいし~!!いくらでもいけちゃうよこんなの~」
「だな!メインディッシュが楽しみだ」

 ほんとに美味しすぎるだろ。そして、岬の美味しそうに食べる表情がたまらなく可愛い……。来て良かった~。

「お!きたきたー!サメのステーキだ!」
「うわーー美味しそー!いただきます!」
「そういえば、大好きなサメだけど大丈夫か?」
「うん!サメちゃんをきちんと美味しく食べてあげることで私のサメ愛を証明できるのよ!」
「なるほど、ははっ、面白いなほんと」
「何それバカにしてるー?」
「いや、どちらかというと褒めてるよ」
「なんか嘘っぽいけど、今日は信じることにします」

 ちょっといじっぱりなんだよなー。そこがまた好きだけど。たわいもない話をしながら食事を終え、俺たちは部屋へと向かう。

「はあー幸せだったー。美味しすぎだよもう、、、。レストランの創りも素敵すぎてほんと住みたいくらいだし。なんかこんなに幸せな思いして良いの?って思うくらい素敵な1日だったよ」
「そう言ってくれると準備して良かったって思えるよ。とにかく幸せそうな岬が見れて俺も幸せになった」

 俺はさりげなく携帯をビデオカメラにして、動画を撮り始める。よし、ドアを開けよう。

 ガチャッ。
「え……何これ!え、え、えーーー!!まって、こんなの、、嬉しすぎてやばいよーーー」

 岬はすごい喜んでくれて、こっちを振り向くと涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。こんなに喜んでくれるなんて、そんな姿を見て、思わず俺も泣いてしまった。

「岬、泣くの早いんだよーー」
「綾人だって泣いてるじゃん!」
「岬につられたんだよ」
「も~可愛いんだから~」

 その後は2人でプレゼントを開けて、俺の手紙を読んでまた2人で泣いてしまった。ほんと涙もろいバカップルだなとつくづく思う。でも、幸せだ。

「綾人、本当にありがとう。私、綾人の彼女で本当に幸せです。大好き!」
「もういつでも死ねるわ俺」
「もー死んでもらっちゃ困るわよ」
「もちろん岬を残しては死にません!サメにも食べられません!」
「なにそれ~」

コンコンコン。
「フロントでございます」

「フロントの人?どしたんだろ。はーい」
「お誕生日おめでとうございます」
「え!すごい!可愛いーーー!」
「ありがとうございます!」
「それでは、失礼致します」
「飾り付けもありがとうございました!とても素敵で、感動しました」
「とんでもございません。それでは、素敵な夜をお過ごしくださいませ。失礼致します」

「ホテルマンってスマートでカッコ良いね!」
「そうだな!」
「こないだもう1つの人生の方で職場体験行ったんだけど、その時にホテルもいいなーって思ったんだよね!」
「そうなのか!俺も」

 言いかけたところで岬がケーキに飛びつき、話が変わる。

「ケーキまで用意してくれてたんだね!もう、素敵な誕生日すぎるよ!ありがと!チュッ」
「(カァー)こちらこそありがとな!」

 不意打ちはやばいわー。ほんと俺の彼女可愛すぎ。

「ん~ケーキおいし~。サメの形してて可愛い!」
「だろ!センス良いだろ!」
「そうね!褒めてあげる♡作ったの綾人じゃないけどね!」
「ま、まあな。改めて、お誕生日おめでとう。これからも俺と一緒にいてください!」
「もちろん!本当にありがとう。あ!そうだ!このケーキあっちに持っていって水槽の近くで食べたい!あっち行こー!」
「良いけど、気をつけろ」 

 最後まで言いきる前に岬がつまずき、ケーキがスローモーションのように手から離れて飛んでいくのが見えた。あーやったな。何かあると思っていたが、最後にあったか。ま、このくらい可愛いもんか。そう思った瞬間、ケーキは、俺のカバンに落ちた。

「あーーー!」
「わーー!あー!ごめんーー!」
「俺のカバンーーー!」

 岬はめちゃくちゃ謝ってきた。ま、中身は何も被害はないし、カバンのひとつやふたつくらい、岬の笑顔に比べたら余裕よ余裕。

「ほんとごめん、、」
「もう大丈夫だよ!その代わり、わしゃわしゃの刑だーー!わしゃわしゃー!」
「ちょっとー!やめ、あははははっ。ありがとう本当に」

 なんだかんだ、最高の誕生日に出来たと思う!サプライズ大成功!こんな幸せな日々がこれからも続きますように。
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