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第1章 無法
優奈・岬の決意
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千郷が私を庇って捕まってしまった。私さえいなければこんなことにはならなかったのに。どうしてなの……。私なんかの為にあんなこと……。
警察は、千郷の行方を追っている最中だが、なかなか良い報告は期待できないかもしれない。千郷が私を助けるときに叫んでくれて、それを聞いた警察官がすぐに駆けつけてくれた。その時に発信機を犯人に付けたみたいだけれど、途中で気づかれて、路上に捨てられてしまった。それでも、少しは捜索範囲を絞れたという。しかし、それから随分と時間が経っている。
「千郷……」
「優奈……。大丈夫、絶対千郷ちゃんは帰ってくるから!あー見えてあの子は強そうな子でしょ」
「葵、ありがとう。そうだよね。千郷なら絶対大丈夫だよね」
私は、岬側の人生を1週間見送り、そのまま優奈側の人生を続けた。そして、今週の最後の日に警察の動きに進展が見られたようだ。
ーー警察の特別捜査隊本部ーー
「見つけたのか!」
「はい、アジトを発見しました。顔認証システムが犯人の顔をヒットし、検索したところ、ここがアジトだと判明。突入しますか?」
「慎重に行こう。相手は何を企んでいるのか分からない。もし、人質に危害を加えでもしたら危険だ」
「では、どうするおつもりですか?」
「1人、潜入させて、人質の安全を確保し、突入する。中森、いけるか!」
「了解です!」
警察がアジトを見つけてくれた!これから突入すると話している。お願い……。千郷を救って……。もう一度、会いたい。
「犯人グループは何人だ?」
「おそらく、5人と見られます。ここが犯人グループの本部ではない模様」
「人質は?」
「人質は……犯人グループ数人が座っている椅子の少し右側に座らされているのを発見!傷など目立った外傷は無し。しかし、なんだか様子がおかしいです」
「様子がおかしい?」
「何かを投与されている様です」
「何?!時間がない!すぐに突入するぞ!お前は人質の確保を最優先しろ!」
「了解!」
作戦は実行され、運良く犯人グループのトップが不在だったこともあり、そこにいた5人は確保。千郷も保護された。
タンカーで千郷が運ばれてくる。
「千郷!」
意識はないようだ。傷があるわけではなく、少しホッとした。このまま直接病院に向かって、検査をするとのことだ。
病院に到着し、検査室に入ってから約1時間経つ。何だか嫌な予感がする。
そう考えている内に検査室から先生が出てきた。
「せ、先生!千郷は……」
「中でお話します。どうぞお入りください」
私と葵、千郷のお母さんとで話を聞くことになった。千郷の状態は現在、脳が働いていない状態で、それは犯人グループに投与された薬のせいだという。その薬の解毒薬は、犯人グループが持っていると考えられるが、先ほど突入したアジトには無かったそうだ。しかし、このままの状態が続けば、千郷も千郷のもう1つの人生も終わってしまう可能性があると先生が言う。どうしたら良いの……。
「千郷……」
「ごめんなさい。私を庇って千郷は……」
「謝らないで。千郷はそんなに弱くないわ。あなただったのね。千郷を変えてくれたのは」
「え?」
「あの子、なんだかいつも上の空で生きている気がして、何か大切なものがこっちにはないのかなと思って、心配してたのよ。でも最近、すごく楽しそうで、生き生きしていた。あなた達が千郷の側にいてくれたからなのね。ありがとう」
「そんな、私のせいで千郷はこんなことになってしまって」
「違うわ。あなたのせいじゃないわ。悪いのは、犯人でしょ。自分を責めないで。それこそ千郷が悲しむわ」
「はい、、あ、ありがとうございます、、」
「ほら、泣かないで」
私は、悔しい気持ちでいっぱいになった。千郷は、私が絶対に助ける!
「おい、今反応があったよな!」
「ああ、この薬のこの成分を変えてやれば脳の流れが緩やかになるってことか」
「端末を見てください!この子のもう1つの人生の方への繋がりは確保できました!」
「じゃあ、あっちの人生には戻れたということか」
「ですが、これ以上他の成分を入れるのは危険です」
「くそっ!どうしたものか、、」
お医者さん達のやり取りの中で、千郷の端末がチラッと見えた。私は、驚きのあまり、言葉が出なかった。千郷のもう1つの人生は、綾人、なの……?!
「先生、千郷は今、もう1つの人生の方にいるんですか?!」
「その可能性は高いね」
タッタッタッタッ。
私は無我夢中で病院を飛び出し、自宅へ向かった。
「おい君!どこへ!」
一度、岬に戻り、千郷がもう1つの人生に戻れているか確認しないと!私のせいだ。私のせいで千郷も綾人もこんな目に遭って……。綾人にもしものことがあったら私……。
ーー綾人・岬側の人生ーー
はっ!綾人!綾人の元へ行かないと……!
ピンポーン、ピンポーン。
「綾人くんいますか!」
「岬ちゃん!どうして、綾人もあなたも1週間こっちに戻ってこないから、心配してたのよ!」
「はい、すみません、ちょっともう1つの人生の方で色々とあって。それで、綾人くんは目を覚ましましたか?!」
「綾人は、まだ眠ったままよ。でも、昨日までは、綾人の端末にエラーが出てたんだけど、今日はエラーは消えていたわ。もう1つの人生の方はまだエラー状態だけどね」
「ほんとですか!」
私は、綾人の部屋まで一直線で走った。部屋に入ると、綾人は眠ったままで、私は辛くて、泣かずにはいられなかった。
それから私は、毎日綾人の部屋に行き、目が覚めるのを待ち続けた。そして、今週の最終日、部屋に入ると、綾人が起き上がっていた!
「綾人!」
「岬?」
「あやどーー、、良かった、、良かった、、」
「どうしたんだよ。泣くなって」
「どうしたんだよじゃないわよ!どれだけ、心配したか、、もう、綾人に会えないんじゃないかって、、」
綾人がいる……目を覚ましてる。本当に良かった。無事で良かった……!私はこれでもう、安心してあっちに行ける。
「俺は大丈夫だよ!」
あなたはいつもそうやって言う。何も大丈夫じゃないくせに。そうやって、私の前だと強がって、大丈夫なふりをする。分かってる。それがあなたの優しさで、私はどうしようもなくそんな綾人が大好き。私は、綾人に救われてばっかりだ。でも、今度は私が綾人を救う番!絶対私が綾人も千郷も救う!絶対に。
警察は、千郷の行方を追っている最中だが、なかなか良い報告は期待できないかもしれない。千郷が私を助けるときに叫んでくれて、それを聞いた警察官がすぐに駆けつけてくれた。その時に発信機を犯人に付けたみたいだけれど、途中で気づかれて、路上に捨てられてしまった。それでも、少しは捜索範囲を絞れたという。しかし、それから随分と時間が経っている。
「千郷……」
「優奈……。大丈夫、絶対千郷ちゃんは帰ってくるから!あー見えてあの子は強そうな子でしょ」
「葵、ありがとう。そうだよね。千郷なら絶対大丈夫だよね」
私は、岬側の人生を1週間見送り、そのまま優奈側の人生を続けた。そして、今週の最後の日に警察の動きに進展が見られたようだ。
ーー警察の特別捜査隊本部ーー
「見つけたのか!」
「はい、アジトを発見しました。顔認証システムが犯人の顔をヒットし、検索したところ、ここがアジトだと判明。突入しますか?」
「慎重に行こう。相手は何を企んでいるのか分からない。もし、人質に危害を加えでもしたら危険だ」
「では、どうするおつもりですか?」
「1人、潜入させて、人質の安全を確保し、突入する。中森、いけるか!」
「了解です!」
警察がアジトを見つけてくれた!これから突入すると話している。お願い……。千郷を救って……。もう一度、会いたい。
「犯人グループは何人だ?」
「おそらく、5人と見られます。ここが犯人グループの本部ではない模様」
「人質は?」
「人質は……犯人グループ数人が座っている椅子の少し右側に座らされているのを発見!傷など目立った外傷は無し。しかし、なんだか様子がおかしいです」
「様子がおかしい?」
「何かを投与されている様です」
「何?!時間がない!すぐに突入するぞ!お前は人質の確保を最優先しろ!」
「了解!」
作戦は実行され、運良く犯人グループのトップが不在だったこともあり、そこにいた5人は確保。千郷も保護された。
タンカーで千郷が運ばれてくる。
「千郷!」
意識はないようだ。傷があるわけではなく、少しホッとした。このまま直接病院に向かって、検査をするとのことだ。
病院に到着し、検査室に入ってから約1時間経つ。何だか嫌な予感がする。
そう考えている内に検査室から先生が出てきた。
「せ、先生!千郷は……」
「中でお話します。どうぞお入りください」
私と葵、千郷のお母さんとで話を聞くことになった。千郷の状態は現在、脳が働いていない状態で、それは犯人グループに投与された薬のせいだという。その薬の解毒薬は、犯人グループが持っていると考えられるが、先ほど突入したアジトには無かったそうだ。しかし、このままの状態が続けば、千郷も千郷のもう1つの人生も終わってしまう可能性があると先生が言う。どうしたら良いの……。
「千郷……」
「ごめんなさい。私を庇って千郷は……」
「謝らないで。千郷はそんなに弱くないわ。あなただったのね。千郷を変えてくれたのは」
「え?」
「あの子、なんだかいつも上の空で生きている気がして、何か大切なものがこっちにはないのかなと思って、心配してたのよ。でも最近、すごく楽しそうで、生き生きしていた。あなた達が千郷の側にいてくれたからなのね。ありがとう」
「そんな、私のせいで千郷はこんなことになってしまって」
「違うわ。あなたのせいじゃないわ。悪いのは、犯人でしょ。自分を責めないで。それこそ千郷が悲しむわ」
「はい、、あ、ありがとうございます、、」
「ほら、泣かないで」
私は、悔しい気持ちでいっぱいになった。千郷は、私が絶対に助ける!
「おい、今反応があったよな!」
「ああ、この薬のこの成分を変えてやれば脳の流れが緩やかになるってことか」
「端末を見てください!この子のもう1つの人生の方への繋がりは確保できました!」
「じゃあ、あっちの人生には戻れたということか」
「ですが、これ以上他の成分を入れるのは危険です」
「くそっ!どうしたものか、、」
お医者さん達のやり取りの中で、千郷の端末がチラッと見えた。私は、驚きのあまり、言葉が出なかった。千郷のもう1つの人生は、綾人、なの……?!
「先生、千郷は今、もう1つの人生の方にいるんですか?!」
「その可能性は高いね」
タッタッタッタッ。
私は無我夢中で病院を飛び出し、自宅へ向かった。
「おい君!どこへ!」
一度、岬に戻り、千郷がもう1つの人生に戻れているか確認しないと!私のせいだ。私のせいで千郷も綾人もこんな目に遭って……。綾人にもしものことがあったら私……。
ーー綾人・岬側の人生ーー
はっ!綾人!綾人の元へ行かないと……!
ピンポーン、ピンポーン。
「綾人くんいますか!」
「岬ちゃん!どうして、綾人もあなたも1週間こっちに戻ってこないから、心配してたのよ!」
「はい、すみません、ちょっともう1つの人生の方で色々とあって。それで、綾人くんは目を覚ましましたか?!」
「綾人は、まだ眠ったままよ。でも、昨日までは、綾人の端末にエラーが出てたんだけど、今日はエラーは消えていたわ。もう1つの人生の方はまだエラー状態だけどね」
「ほんとですか!」
私は、綾人の部屋まで一直線で走った。部屋に入ると、綾人は眠ったままで、私は辛くて、泣かずにはいられなかった。
それから私は、毎日綾人の部屋に行き、目が覚めるのを待ち続けた。そして、今週の最終日、部屋に入ると、綾人が起き上がっていた!
「綾人!」
「岬?」
「あやどーー、、良かった、、良かった、、」
「どうしたんだよ。泣くなって」
「どうしたんだよじゃないわよ!どれだけ、心配したか、、もう、綾人に会えないんじゃないかって、、」
綾人がいる……目を覚ましてる。本当に良かった。無事で良かった……!私はこれでもう、安心してあっちに行ける。
「俺は大丈夫だよ!」
あなたはいつもそうやって言う。何も大丈夫じゃないくせに。そうやって、私の前だと強がって、大丈夫なふりをする。分かってる。それがあなたの優しさで、私はどうしようもなくそんな綾人が大好き。私は、綾人に救われてばっかりだ。でも、今度は私が綾人を救う番!絶対私が綾人も千郷も救う!絶対に。
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