おさがり彼氏〜おさがりして良いのはモノだけじゃない?!〜

晴屋想華

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花凛の想い

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「花凛ちゃーん!同じ班になれて嬉しいよ!楽しもうね」
「う、うん」

 まだちょっと緊張してるのかな?そうだよね。話すのほとんど初めてだし、少しずつ仲良くなろっと。


ーー林菜花凛の話ーー

 森川緑。一ノ瀬海くんと最近すごく仲が良い。このままじゃ、負ける。私は、海くんとまともに話したことすらない。とりあえず、海くんに近づくためにも森川緑と仲良くならなくちゃ!

 私が海くんに興味を持つようになったのは、あの事件がきっかけ。
 私は、いわゆる陰キャである。教室ではいつも本を読んでいたり、休み時間は図書館に行っていることが多い。親しい友達も同じクラスにはいない。というか、この学校にいない。だから、いつもお弁当はぼっちで食べているし、なんなら体育とかでも組む人を見つけるのがすごく困難である。そんな感じで、ご想像通りの度陰キャな為、ある陽キャ集団によく絡まれていた。
 そんなある日のことだった。私はいつもながら陽気に絡まれていた。いつもなら軽い絡みは受け流していたのだが、なぜだかその日は私も腹の虫どころが悪かったのか、抵抗してしまった。そうしたことで、陽キャ集団がさらに突っかかってきて、押し倒されそうにまでなっていた。その時ちょうど通りかかった海くんが私を助けてくれた。海くんからしたら、私を助けたというよりは道を妨げる邪魔なやつらをねじ伏せたに近いのだと思うけれど、私はそれが嬉しかった。海くんがあいつらに放った言葉が私の心を動かしたのだ。その言葉を再生させてもらう。

「お前ら害虫が林菜の時間を奪う権利なんてねーんだよ。うせろ」

 何度でも脳内再生できる……。それくらい私の心を救った言葉だった。私の名前を知ってくれていたことに一番感動したのかもしれない。私は、一人でいることに慣れているつもりだったけれど、誰にも名前すら覚えられていないと感じる日々に自分でも知らないうちに落ち込んでいたのかもしれない。それに、最初は森川さんの名前すら覚えてなかったような気がするけど、私の名前は覚えたいたってことにさらに嬉しさを感じた。
 でも私の名前、どうして覚えてくれてたんだろう。ほんと、そういうところがずるい。


「森川、お前はどこ行きたいんだ?」
「私はー、清水寺とか?」
「お、お前、そんなに慈悲深い人間だったんだな、、ありがとな」
「え、え?なんか勘違いしてない?」
「え、鳳蝶さんとのことを応援するためだろ?(小声)」
「あんた、意外とポジティブなのね」
「はいはい、そこの2人、イチャつかない!話進めるわよ」
「い、イチャついてなんか!」
「緑どーどー、どこ行くか決めちゃうわよ!早くしないと時間終わるわよ~」
「む~」

 私たちは、修学旅行について話し合っている。自由時間を与えられている日が2日間だけあり、そこはどこに行っても良いことになっている。私たちは、京都と東京の日程をそれぞれ1日ずつ組む必要がある。意外と修学旅行までの時間がなく、早急に行きたいところを決めて、スケジュールを考えなくてはならない。

「一ノ瀬くんと吉川くんはどこ行きたいの?」
「俺は緑ちゃんと一緒ならどこでも!」
「はあ、一ノ瀬くんは?」
「俺は、嵐山かな。食べ歩きしたい」
「食べ歩きいいね!一ノ瀬くんもそういうの興味あったのね」
「まあ美味いもんは食いたいよな」
「林菜さんはどこ行きたい?」
「私も食べ歩き、したいかな」
「よし、じゃあ嵐山で食べ歩きは決定ね!仕方ないから緑の清水寺に私も1票入れて、清水寺も行っていい?」
「ああ、じゃあ大体決定だな」
「そうね。京都に関してはそんな感じで大丈夫そうね。あとは細かいことを決めるのと、東京観光についてって感じだね。とりあえず今日はここまでかな」

 キーンコーンカーンコーン。

「じゃ、各自色々考えておいてねー!」
「「はーい!(全員)」」

 美波がいると話がまとまるからありがたい。
 さてと、今日はお姉ちゃんと私と一ノ瀬でご飯だっけ。あー、演技かー。大変だなー。ま、協力するって決めたんだからやるしかないわよね!

「ねえ、お姉ちゃんの前で苗字で呼ぶのはおかしいわよね」
「確かにそうだな。じゃあ、緑でいいか?」
「え、ええ。私は、海って呼ぶわね」
「おう」

 何動揺してるのよ私。た、ただ名前で呼ぶだけじゃない。

「あ!いたー!おつかれー!」
「お姉ちゃん!は、早かったね」
「今日は残業なっしー!海ちゃんおひさー!」
「お久しぶりです」

 お店に入って食事を始める。姉から食事に誘ってきたわけなのだが、一ノ瀬と会わせるチャンスだと思い、3人で食事することにした。そういえば、姉からご飯に誘うなんて珍しいわね。何も考えてなかったけど、何か話があるってことか。

「遅いわねー」
「あれ?誰か来るの?」
「うん!あ!きたきた」
「鳳蝶!ごめんな、遅れて」
「全然!紹介します!私の彼氏、秋元咲夜さんです!」
「えー!」
「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」
「海ちゃん大丈夫?」
「海、これ使って」
「あ、ありがとう」

 嘘でしょ!?彼氏を紹介する為の食事会だったなんて……。

「それでお姉ちゃん、秋元さんとはいつから?」
「実は、連絡取れなくなって別れたって言ってた元彼?なのよ」
「あ、あのお姉ちゃんがぞっこんの?!」
「ちょ、緑その言い方、なんか恥ずかしいじゃない」
「鳳蝶は俺にぞっこんだったの?嬉しいな。緑さん、ご挨拶が遅れましたが、鳳蝶さんと結婚を前提にお付き合いしている秋元です。これからよろしくね。彼氏さんもよろしくね」

 めっちゃ一ノ瀬睨んでる、よね。

「はい、よろしくお願いします。でも、僕は緑の彼氏じゃなくて友達です」

 あれ?意外と普通。我慢してくれてるのかな。

「今回は、彼に会わせたくて食事に誘ったのよー!」
「そうだったんだね」
「そういえば、あなたたち、下の名前で呼び合うようになったのね!」
「あはは。まあね」

 うわー。めっちゃ気まずいー。一ノ瀬、絶対大丈夫じゃないよね。私のせいだ。ほんとごめん、一ノ瀬。

 食事会兼、姉の彼氏紹介会は終了し、それぞれ分かれて帰ることになった。姉と秋元さんはこの後行くところがあるらしいから、私は一ノ瀬と帰ることになった。

「一ノ瀬、ごめんね、こんなことだなんて知らなくて。ほんとごめん」
「いや、森川が謝ることなんて何もねーよ」
「でも、まさかあの人がお姉ちゃんの……」
「でも俺、あいつ気に入らねーし、諦めねーわ」
「意外。すごい強気じゃない。よっ!それでこそ一ノ瀬だね!私も秋元さんのことはまだ信用できないし、私、一ノ瀬のこと全力で応援するよ」
「おう」

 応援か。なんとなく、心が痛いような気持ちになったのはなんだろうか。まあ、何はともあれ、私はなんとも言えない立場よね。お姉ちゃんが好きな人といれるのは嬉しいことだけど、一ノ瀬の恋も応援したいし。でも、どちらにせよ秋元さんはまだ信用できないわね。連絡取れなかった時期があったことも気になるし。ちょいちょい探りを入れてみる必要はありそうね。



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