目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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お湯をください。

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 捕獲と思われた行動は部屋とは反対方向に向かっていた私を引き戻すつもりで手を繋いでくれたデイジーちゃん。面倒見のいい子だね。


 「アイナちゃん、お湯欲しいんでしょ? 夕食の準備の時に分けて貰えるか頼んであげる。どれぐらい要るの?」

 (おお~デイジーちゃん天使か! ごめんね頭良くなさそうって思って)

 私は彼女の素敵な提案に容積の単位が分からないから控えめに全身浸かれる量でと言ってみた。ごめんねアバウトになっちゃて。

 彼女が再び変な顔で見下ろす。
 
 (間近で見るとデイジーちゃん薄汚れてる。わぁお、汚いな)

 彼女は呆れた感じで、当番の人に頼んでみるけど期待しないでとちょっと投げやりだ。そこは頑張って欲しいなぁ



 デイジーちゃんの申し出によって私の気分は浮上した。そう高い高い所迄。おかげで逃げ出す算段するのをすっかり忘れていました。

 気分が高揚した私は暇を持て余していたこともあって掃除を励もうと思った。お湯が貰える前提で私の行動は決ったので汗をかいてもまあ大丈夫だろうと甘く考えてしまっていた。


 「さっ、おっそーじ、おっそーじ、ふんふんふーん」もうノリノリだ。

 掃除道具は部屋にあったのでそれを使うことにして、問題は私の身体のサイズが小さいことだった。

 (私、何歳? 見下ろしても身長はわかんないんだよね‥‥手足はちっこい。うう~む、鏡ないかな?)


 取り合えず鏡は後回しでお掃除が先決だ。この身体のサイズでも必死になれば自分のお部屋ぐらいは何とか掃除が出来るだろうと高を括っていた私は、早々断念せざる得なくなった。


 (ぐぬぬぬ、何よ、この身体、へっぽこじゃない!)


 箒は柄が長すぎでバランスをとるのが難しいしやり辛い。塵取りを持つと箒が持てない。箒を持つと塵取りが持てない。もどかしい。仕方がないので固絞りで水拭きをすることにした。


 (…‥‥え、このボロいの、雑巾?)


 ボロボロの汚い端切れみたいなモノが雑巾? これで拭くと余計汚れそう。早くも自力での掃除は断念した。


 (これは人に頼まないと無理! 幼児サイズを甘く見てた!)


 このままならないボディに物言いたいが、成長過程の身、我慢我慢。  

 掃除を諦めきれない私は誰か頼めないか人を探すことにした。諦めたらそこで終わりだ、頑張ろう。 

 私は人のいそうな場所を探して歩いているが、誰にも出会わない。あれ? 数人の子供がいたよね、何でいないんだろう‥…デイジーちゃんは何処かな? 大人もいない。ちょっと不気味なんですけどぉ…‥

 まるでこの世界には私だけしかいないと錯覚させるほどの静寂に襲われた。音がしない。聞こえるのは私の息遣いだけだ。この静けさが嫌でも己に目を向けさせる。ここには「私一人だよ」と誰かが囁いてくる。


 人気のない廊下がまるで私の行く手のようだ。心細い思いが胸を刺す。
 心細さから会えなくなった家族や友達が気に掛かる。彼等は今どうしているのか、私の身体はどうなったのか。私は生きているのか死んでいるのか。どちらなんだろう。

 
 (死んだなんて思えないよ。それより私、両親より先に逝ったの?)

 お父さんお母さん、ごめんなさい。望まぬまま違う人生を歩みそうです。

 目を覚ましたら幼児だったなんて、ほんっと、ごめんなさい。覚えてないけどうっかり死んじゃったのかもしれない。お父さん、お母さん。お兄ちゃんお姉ちゃんも…‥‥家族の顔の横に友人たちの呆れた顔まで浮かんで来た。笑えない話だけど、笑われそう。『愛奈らしいね~うっかり生まれ変わっちゃって』とか言って笑われそうだ。

 
 (もう会えないのかな‥…)

 ちょっとセンチになっちゃたと気分を変えるためにほぼ競歩で人探ししたら汗かいちゃった。


 (しまったね、汗臭い子供の出来上がりだよ)


 デイジーちゃ~ん、お湯下さ~~い。
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