目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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呪夢ー➀

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   ‥…ここは?
 
 目を開けると何処かのガーデンで独りテーブル席に座っていた。
 見慣れない場所で目を覚ますのも慣れてしまえば対応に問題はない。
 慌てず、騒がず、状況を把握‥‥そう思い視線を心持下に向けるとテーブルの上にはお菓子が所狭しに並べてあるではないか。
 
 (うわお! 美味しそうな焼菓子が! アイナになって初めてお菓子を見たよ! イヤッホー!)
  
 スンと鼻を吸えばバターの香ばしい香りが鼻孔を擽る。その匂いが『食べて食べて!』と私を誘惑しているではないか。 

 (これは‥‥食べろってことだよね? じゃなきゃお皿に出さないよね?!)

 久し振りのお菓子に涎がダラダラ止まらない(気持ち的に)ご丁寧に紅茶セットまで。完璧だ。
 バター風味の焼き菓子と紅茶の香りに食指が動く。

 (あ~いい匂い~これ、食べちゃっていいよね?! 誰もいないし、誰もいないし、誰もいないし、誰も見てないし!!)

 状況の理解が覚束ないが上げ膳据え膳的なシチュに私のお腹も臨戦態勢だ。

 右見て左見て正面見て。指差し確認バッチシ!

 「よし! 誰もいない!」

 今ならつまみ食いしても誰も見てない!

 「い・た・だ・き・まぁ~すぅ」

 口に頬張る気満々で右手をマドレーヌっぽい焼き菓子に手を伸ばす。

 
 「お義姉様。何をしていらっしゃるの?」

 (ヒュッ!!)

 不意に背後から聞こえた甲高い女の子の声に心臓が縮むかと思った。別に咎めたわけではないと思うが非難めいた冷たさが滲む声色だ。

 (‥‥姉? 私じゃないよね?)

 面倒な気配しかしないが私はお菓子のガン見で乾いた目を声の主に向けた。

 (誰だろう? 知らない子だ)

 アイナより年上な12、3歳ぐらいの少女だ。どう見ても妹には見えない。可愛らしい顔の子供だが、太々しさも垣間見える。

 「やだ~お義姉様ったら。お菓子を食べようとしていたの?」

 しつこく姉呼びを止めない彼女は目ではなく頭が悪いのか。
 ちょっとこの子怖いな~と引き気味で様子を窺っていたらキレられた。  

 「もう! 何よ! お義姉様ったらまた私を無視して! そういう態度が嫌われるのよ!」

 ‥‥何故に君はキレるのだ。

 ヒス気味な声色に耳を傷めそう。何とかして距離を取ろうと考える間に図々しくも隣に座られてしまった。

 (えー、どうして隣に!?)

 少女の厚かましさに正直ドン引きだ。
 自分は厄介な子に目を付けられたのだ、お菓子の摘まみ食いどころでない。内心舌打ちしたくなる。
 まじまじと顔を見るもやはり記憶にない子なのだが見ていると胸がモヤつく。
 私は初対面でありながらこのモヤる気持ちを持て余しながら途方に暮れた。


 「仲良く話をしないか。折角のお茶が冷めてしまうぞ」

 雰囲気の悪いこの場の空気をぶった斬る男子の声が。
 驚いて振り返るとそこには15、6歳の少年が不機嫌を隠さないで座っていた。

 (えっ? えっ? 誰もいなかったよね? 何時の間に現れたの!?)

 「あ、******様! 申し訳ございません。私が悪いのです。お義姉様のご機嫌を損ねてしまって…‥」

 自称妹と宣う女の子は、頭に何か沸いたのだろうか。
 急にしおらしい声で弱々しい少女を演じる。この少年に媚る気なのだろう。

 自称妹ちゃん、性格に難有りか?
 
 やれやれと自称妹に目をやると12、3歳の女の子の彼女が見た目は15、6歳に可愛さもマシマシで成長していた。

 「へぇぁ!?」

 顎が外れる程の驚きってこんな感じなんだと、まさかの実体験。

 「な、なななななな何がどうなって…‥‥??」

 吃驚し過ぎで動揺が激しいのは無理ないよね。

 「お義姉様酷いですぅ、またそうやって私を除け者にしようとなさるのね。ううう。そんなに私がお嫌なのですか。うう、ぐすぅ」
 「へっ? は?」
 「またか。いい加減仲良く出来ないのか? そうやって義妹を虐めて何が楽しいのだ。‥‥もうよい、気分を悪くした」
 「すみません、私が至らぬばかりに******様にはご不快な思いを‥‥ぐすぅ」
 「ああ××××嬢の所為ではない。自分を責めるな」
 「あ、ありがとうございますぅ…ぐすぐす」

 (何だろうこの茶番劇。お茶が不味くなるよね、って言うより君達誰よ?)

  私を前にして繰り広げる拙い寸劇。

  ‥…おひねり要るかな? 手持ちないんだけど。

 何処からどう突っ込むのが正解か誰か私に突っ込んで欲しい。

 突如姿を現した事か急成長を遂げた事か。それとも謎の茶番劇か。
 戸惑うアイナを置いて二人の茶番はイチャコラへ。
 お菓子を乗せたテーブルで見知らぬ男女のいちゃつきを眺めなきゃならんとは一体どんな罰ゲームなのか。

  悩むアイナを無視で不機嫌だった少年は自称妹に甘えられて上機嫌でお菓子を頬張る。二人してお菓子やお茶をどんどん平らげていくのだ。

 「******様、このお菓子お口に合いまして?」
 「ああ、とても美味しいよ」

 仲睦まじく振る舞う姿は微笑ましい‥‥のだろうが。心底どうでもいい。

 おい、ちょっと待って。

 (そのお菓子、私が狙ってたやつじゃん! ひどっ!)

 サクッと横取りされた焼き菓子は私が食べようと狙っていたやつだ。後からやって来た二人にパクパクと食べられていく焼き菓子ちゃん。おまけに紅茶もグビグビ。お替りまで! 出遅れた私の食べる分が‥‥‥ない! 軽く二人に殺意が湧いた。
 
(ぐぬぬぬ‥…お菓子の恨み許すまじ!)

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