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ウイリアム殿下は自分に臣籍降下の話が出たので焦った。
優秀な自分が何故と悩んだ末に出した答えは、母親の身分が低いからだと。ウイリアムは歴史に倣い聖女を娶れば王族でいられると踏んでカランと婚約を結んだ。
聖女と王族の婚姻を奨励された歴史は確かにあった。だが弊害も多かった。だから現在は奨励されていない。にも拘らずウイリアム殿下と聖女候補のカランとの婚約は成立してしまった。
好からぬお節介をする輩がいたのだろう。企てた輩がいたのだ。
デア家に政治的圧力がかかったのも事実。
◇
「もう、これ以上縛りつけられるのは嫌よ。殿下が私を好きでいてくれたなら、耐えれるかと思ったけど。私を大事にしないとわかった以上、もう耐えられない。やってられないわ」
ウイリアムは王子属性と顔の良さで日頃からモテモテだった。
婚約者がいてもお構いなく女が群がる。
カランはウイリアムを毛嫌いすることはあっても恋心を抱くことはない。
なのにウイリアムに秋波を寄せるご令嬢達からやっかみと苛めを受けていたのだ。
「貴女みたいな人がウイリアム殿下のお側にいるなど‥‥図々しいわ」
「聖女候補の立場で殿下に迫まるなんて!卑しい人ね。恥を知りなさい!」
「貴女では殿下の寵愛を得るのは、ふふ。無理ではないかしら」
「貴女がいるお陰で、わたくし、殿下と添い遂げられないの。さっさと婚約者から退きなさいよ」
「わたくしと殿下は、もう男女の仲ですの。貴女はお飾りね。ああ、惨めな女」
これには自称『温厚』なカランでも流石に苛ついた。
カランは気性の荒い面も持ち合わせている。黙ってやられる性分ではない。あくまで『温厚』と言い切るカランは直接反撃はしない。間接的にやる女だ。
「ねえ、面白い遊びを考えたの。一緒に遊ばない?」
『『『『 わ~やるやるやる! あそぶ~~ 』』』』
いつだって精霊達と遊ぶカランは、ここぞとばかりに攻撃してきた女達を遊び道具に見立てるのが上手い。
精霊の扱いに長けているのだ。
「ねぇ、あの子はいつもツンツンして笑わないから、私達が笑わせてあげましょう。眉毛と鼻毛と耳毛を伸ばしに伸ばして結んだら面白いわよ? どうかしら」
「あの人はいつも何かの匂いを体中に振り撒くのよ。匂わないと不安になる人なの。可哀想だから身体の匂いを強くしてあげましょう。きっと泣いて喜ぶわ。そうね、脇とか口とか足とかからきつい匂いさせればいいのよ。どう?」
「彼女、頭に巣を作るのが好きみたい。だけどセンスがイマイチなの。貴方達で飾ってあげたら喜ぶわよ。小枝とか毛虫とか、そうね子ネズミなんていいかも。どうかしら」
カランと精霊達の遊びは尽きない。
遊びでカランは溜飲を下げている。
◇
『聖女』選別の日まであと半月。
『わ~い、カラン、なにする?』
『カラン、なにしてあそぶ~』
『こんやくかいしょうってなに?』
『おやつ~おやつ~』
わらわら集まる精霊達に
「いい遊び、教えてあげるわ。皆で協力して遊びましょうね」
カランは黒く微笑んだ。
カランの婚約解消の日までのカウントダウンが今始まった。
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