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『選ばれた聖女。ウイリアム王子殿下の伴侶』
どう見ても陛下と同じ年齢、下手すれば上かも知れない。
お相手は親より年上っぽいのだ。
社交界で浮名を流す未亡人。
ぼってりしたボディに体臭を誤魔化す香水。
若作り感のあるドレスに身を包み、厚くベッタリ塗ったお化粧。
若い男が好みで金に任せて侍らす様は、お世辞にも淑女の素行とは言い難い。
社交界のゴシップをかっさらうレディなのだ。
今はウイリアムの腕をがっしりホールド。執着の権化だ。鍛え抜かれたウイリアムでも振り払うことが出来ないでいた。恐ろしや。
『ご愁傷様』と、どこからかひっそりと投げられた言葉。
それはカランだったかも…‥。
歴代聖女とは似ても似つかぬ今代の聖女。
築き上げられた聖なる象徴の聖女像をぶち壊す新たな聖女の誕生だ。
聖女とは真逆の『悪女』の別名を持つレディでもある。
聖らしき要素がどこにあるのだと誰もが思う。でも言わない。
『何故あの女性が選ばれたのだ?』
思うことは一致した。疑惑は晴れないまま騒動に塗れた夜会は終わる。
カランと家族の心は晴天の青空の如くスッキリと晴れ晴れとしたまま王城を後にした。
ふざけた婚約は無しになり面倒な手続きは父親にまるっと丸投げを決めるカラン。
後始末に翻弄される父親をちょっぴり『可哀想かな? 優しくしてあげよう』と心に留め置いた。
◇
ウイリアム殿下の電撃結婚のニュースが 新しいスタイルの聖女様とともに国内外に流布された。
今のところ聖女の力は健全だ。
暫くは続くが、期間限定の聖女の力なのだ。
「あらら、聖女様と殿下の電撃婚! 賑わすわね~。殿下に相応しいお相手が見つかってホント良かったわ! みんなもありがとう。楽しかったわね~あの遊び!」
カランはコロコロと鈴のような笑い声と楽しんだ感想を述べる。
勿論、お相手はいつもの精霊達。
彼等もカランの魔力を帯びた蜜飴や飲み物を美味しそうに堪能している。
『たのしかった~』
『またあそぼうね~』
『カランがせいじょなのに~』
『おやつ~おやつ~』
カランは優しい眼差しで精霊達を見つめる。この穏やかなひと時が何時までも続けば良いと願いながら。
カランは疲れていたのだ。幼い頃より聖女候補生として神殿の奉仕活動に強制参加させられた挙げ句、殿下の婚約者の労苦を負わされて。
少女時代を不本意な形で過ごさねばならない環境に追いやられたからだ。
カランは本来なら送れたであろう少女の生活を取り戻したい。
それが今の彼女の願いである。
カランは自分の願いを自らの手で叶えた。
実力行使に出たが誰も傷つけていないからセーフ。
『殿下はお仕置きだからいいの』とカランは思っている。
カランは今回の遊びを思い出す。
仕込みに手間暇かけたのだ。
『成功して本当良かったわ』カランはホッと胸を撫で下ろした。
『聖女を当てろ』と『聖女ごっこ』は精霊達との遊びの名前。
まずカランは精霊達に遊びと称してウイリアムと神殿関係者の夢に干渉させた。
ウイリアムには『運命の相手が聖女』だと。
神殿関係者には『祝賀パーティの会場で聖女が見つかる。伴侶は第5王子殿下』と。
聖女役に抜擢した女性には『祝賀パーティに参加すると運命の出会いがあるよ。参加しようね』と。
聖宝の作動は精霊ならば簡単だ。
ちょこちょこ弄ってもらったのだ。
精霊達は遊びが大好き。
聖宝を持った人が聖女役の女性を見つけられるかのゲームをしたのだ。
神殿長が光る聖宝で女性を捜す様を精霊は『みつかるかな?みつかるかな?』クスクス笑いながら女性の周りで笑っていた。
隠し事が出来ない彼等だからきっとお目当ての女性の周りに集まるなぁと。
案の定、女性に群がった。
『わ~いわ~いみつかった!』
『みつかった~』
ふわふわ浮かぶ姿は可愛いものである。
『聖女ごっこ』はもっと単純だ。
お目当ての女性が聖宝に触れたら『あたりー』と光って知らせるよう決めていたからだ。
カランは思う。
この遊びの面白さがどこにあるのかは精霊達にしかわからない。
精霊達が楽しめたなら上々だ。後はご褒美である魔力を振る舞えばゲーム終了。
今回は裏技を使った。
精霊達にお願いした聖女役の女性のサポートを頃合いを見て止めればいい。
本来、聖女ではない者を聖女に仕立てたのだ。何時までも続けられない。
幾ら私の魔力量が豊富であろうとも。彼等は強欲に魔力を強請ってくるからね。
聖女の力が消えたら、原因はウイリアム殿下の愛が覚めたからだと判断されるだろう。それでいい。
周囲の者が勝手に行動をしてくれると思う。
多分、殿下は『物理的な死』ではなく『社会的な死』を与えられるのではないかな。
穏便に済むといいね、殿下。
乙女の心を弄んだ責任は取ろうよ。殿下。
―――― 完
どう見ても陛下と同じ年齢、下手すれば上かも知れない。
お相手は親より年上っぽいのだ。
社交界で浮名を流す未亡人。
ぼってりしたボディに体臭を誤魔化す香水。
若作り感のあるドレスに身を包み、厚くベッタリ塗ったお化粧。
若い男が好みで金に任せて侍らす様は、お世辞にも淑女の素行とは言い難い。
社交界のゴシップをかっさらうレディなのだ。
今はウイリアムの腕をがっしりホールド。執着の権化だ。鍛え抜かれたウイリアムでも振り払うことが出来ないでいた。恐ろしや。
『ご愁傷様』と、どこからかひっそりと投げられた言葉。
それはカランだったかも…‥。
歴代聖女とは似ても似つかぬ今代の聖女。
築き上げられた聖なる象徴の聖女像をぶち壊す新たな聖女の誕生だ。
聖女とは真逆の『悪女』の別名を持つレディでもある。
聖らしき要素がどこにあるのだと誰もが思う。でも言わない。
『何故あの女性が選ばれたのだ?』
思うことは一致した。疑惑は晴れないまま騒動に塗れた夜会は終わる。
カランと家族の心は晴天の青空の如くスッキリと晴れ晴れとしたまま王城を後にした。
ふざけた婚約は無しになり面倒な手続きは父親にまるっと丸投げを決めるカラン。
後始末に翻弄される父親をちょっぴり『可哀想かな? 優しくしてあげよう』と心に留め置いた。
◇
ウイリアム殿下の電撃結婚のニュースが 新しいスタイルの聖女様とともに国内外に流布された。
今のところ聖女の力は健全だ。
暫くは続くが、期間限定の聖女の力なのだ。
「あらら、聖女様と殿下の電撃婚! 賑わすわね~。殿下に相応しいお相手が見つかってホント良かったわ! みんなもありがとう。楽しかったわね~あの遊び!」
カランはコロコロと鈴のような笑い声と楽しんだ感想を述べる。
勿論、お相手はいつもの精霊達。
彼等もカランの魔力を帯びた蜜飴や飲み物を美味しそうに堪能している。
『たのしかった~』
『またあそぼうね~』
『カランがせいじょなのに~』
『おやつ~おやつ~』
カランは優しい眼差しで精霊達を見つめる。この穏やかなひと時が何時までも続けば良いと願いながら。
カランは疲れていたのだ。幼い頃より聖女候補生として神殿の奉仕活動に強制参加させられた挙げ句、殿下の婚約者の労苦を負わされて。
少女時代を不本意な形で過ごさねばならない環境に追いやられたからだ。
カランは本来なら送れたであろう少女の生活を取り戻したい。
それが今の彼女の願いである。
カランは自分の願いを自らの手で叶えた。
実力行使に出たが誰も傷つけていないからセーフ。
『殿下はお仕置きだからいいの』とカランは思っている。
カランは今回の遊びを思い出す。
仕込みに手間暇かけたのだ。
『成功して本当良かったわ』カランはホッと胸を撫で下ろした。
『聖女を当てろ』と『聖女ごっこ』は精霊達との遊びの名前。
まずカランは精霊達に遊びと称してウイリアムと神殿関係者の夢に干渉させた。
ウイリアムには『運命の相手が聖女』だと。
神殿関係者には『祝賀パーティの会場で聖女が見つかる。伴侶は第5王子殿下』と。
聖女役に抜擢した女性には『祝賀パーティに参加すると運命の出会いがあるよ。参加しようね』と。
聖宝の作動は精霊ならば簡単だ。
ちょこちょこ弄ってもらったのだ。
精霊達は遊びが大好き。
聖宝を持った人が聖女役の女性を見つけられるかのゲームをしたのだ。
神殿長が光る聖宝で女性を捜す様を精霊は『みつかるかな?みつかるかな?』クスクス笑いながら女性の周りで笑っていた。
隠し事が出来ない彼等だからきっとお目当ての女性の周りに集まるなぁと。
案の定、女性に群がった。
『わ~いわ~いみつかった!』
『みつかった~』
ふわふわ浮かぶ姿は可愛いものである。
『聖女ごっこ』はもっと単純だ。
お目当ての女性が聖宝に触れたら『あたりー』と光って知らせるよう決めていたからだ。
カランは思う。
この遊びの面白さがどこにあるのかは精霊達にしかわからない。
精霊達が楽しめたなら上々だ。後はご褒美である魔力を振る舞えばゲーム終了。
今回は裏技を使った。
精霊達にお願いした聖女役の女性のサポートを頃合いを見て止めればいい。
本来、聖女ではない者を聖女に仕立てたのだ。何時までも続けられない。
幾ら私の魔力量が豊富であろうとも。彼等は強欲に魔力を強請ってくるからね。
聖女の力が消えたら、原因はウイリアム殿下の愛が覚めたからだと判断されるだろう。それでいい。
周囲の者が勝手に行動をしてくれると思う。
多分、殿下は『物理的な死』ではなく『社会的な死』を与えられるのではないかな。
穏便に済むといいね、殿下。
乙女の心を弄んだ責任は取ろうよ。殿下。
―――― 完
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