165 / 365
第八章 出揃った駒
情報
しおりを挟む「わたくし達に働いた無礼。貴方ならどうすべきかお分かりになりますわねえ。うふふ、謝らなくても宜しくてよ。ほんのちょっと気持ちを示して下されば」
チンピラみたいなセリフ、あれですよね謝罪はイイから誠意を見せろってやつですよね。分かります分ります。ここはしっかりと脅してやって下さいお母様。
母さんがチンピラっぽく振る舞っているのは昏倒した男が目を覚ましたから。
移動先の廃村の村長役だった人の家で俺達は帝国軍人であるこの男との話し合い中なのだ。比較的マシな家の中、手狭な間取りだが俺達が暖を取る程度であれば十分だ。廃村の理由は聞かないが気にはなる。
「‥…確かに確認を怠った私の責任ですが、ご婦人、私に何をしろと?」
「うふふ。ご自身でお考えなさい‥‥と言いたいのですが時間が惜しいですので貸し一つにしておきます。ここぞと言う時にわたくしの求めに応じで下されば事を荒立ては致しませんわ。宜しくて?」
「‥‥‥すまなかった」
言い負かされた男は悔しそうだが自業自得だ。何で確認しないで行動するかな。
これで溜飲を下げた俺達とダル達帝国軍人サイドとの話し合いを始められる。
ーーーーーーーーーーー
「私どもの捜査にご協力をお願いしたい。なに、情報を下さればそれで宜しいのですよ。クレアと関わりのあった貴女方なら我等では掴めなかった情報をお持ちだと思われます。どうですかご婦人。ここで帝国軍に恩を売りませんか」
「‥…貴方の言い分は分りました。ですがこの場での返答は出来かねます。お分かり? 旦那様のいない場所で決められるものではないの。足を洗って出直しなさい」
「…‥‥‥‥帝国貴族の貴女方にお願いしています。王国貴族のザックバイヤーグラヤス公爵家ではございません。お間違えなきよう」
母さんと男の冷やかな応戦は平行線だ。こんな感じで進まない。
聞けば帝国側としてはクレアについては極秘裏に対処したい。王国側で関わったのが俺達ザックバイヤーグラヤス家と伯爵家。だけどクレアが帝国を出奔したのか攫われたのかは不明。でも確実に王国貴族の伝手でいなくなった。
今有力情報は王族、しかも第二王子がクレアの失踪に関わりがあると思われていてその捜査に協力を求められたのだ。
第二王子が留学先の帝国から引き上げる時にクレアはいなくなった。王子もクレアの能力を知っている。学年は一つ下なのだがクレアが見る「先を見る」のは王国が多い。勿論、帝国も見てはいるが圧倒的に王国が多い。しかも何故か学園の出来事や特定の人物たちの個人的な話だったり。偏りが酷いそうだ。
これでは固有の能力だと判定しかねると鑑定者達は頭を抱えているのだと。
‥‥ちょっと聞き捨てならない。第二王子? 今、第二王子って言ったよね?
どういうこと? あっ、同じ学校! えっ、でもまさか‥‥
一国の王子と一介の下級貴族。接点が学院。俄には信じられないがまるっきし嘘とも言えない。微妙なラインだよね。
情報‥‥母さんどうする? この男に教える? でもダルが言いそう‥‥。
そう言えばダルの話も途中だったよね。まずったな。話し合いらしい話し合い出来ていないよね。
「ふぅ。このままで時間の無駄ですわね。少々お時間頂けるかしら。ザックバイヤーグラヤス家の者で話し合います。宜しいわね」
睨み利かせながらだから迫力がある。そうだね甘い顔してちゃダメだよね。
「お母様、クレアの情報はダルも持っています。わたくし達が言わなくても彼を通じて情報が相手に渡るのではありませんか?」
「ふふ、ティはそう思うのね。でもわたくしはダルは情報を渡さないと思うわ。まだ彼はわたくしに手を貸してもらいたがっているもの。意に反する事は避けたいでしょうね」
「奥様、我等もそう情報は持ち合わせてはおりません。恐らく帝国の方が持っていそうです」
「そうね。こちらの情報は大したことは無いわ。あの娘は誰かの駒よ。単に公爵家に恨みを持つ者かティを狙ってなのかはっきりしない。情報だなんて此方が欲しいわ‥…でも」
そう言って母さんはフード三人衆を集めて話始めた。俺と護衛は蚊帳の外。
ちぇ、仲間外れかよ。
「それでは貴方に任せるわ。好きなように話を詰めなさいな」
送り出されたのはフードの男、小刻みに肩を揺らすあいつだ。一人、帝国サイドの者と話すのか? 母さんの人選の基準が分からないや。こっちの情報は特筆するものではないからいいのか。そうか。
待っている間、ダルが此方にやって来た。話の続きか。
「公爵夫人。このような事になり申し訳ございません」深々と頭を下げ謝意を全身で表すダルの深い後悔。居た堪れない。
「あの騎士達は第一騎士団の者ですが金で‥‥皆様に害為すよう雇われた者でした。誘拐を目論見、公爵家から身代金。裏組織の人間に奴隷として売りつけ金を儲けようとしておりました。‥‥禄でもない男です」
聞けばムカつく話だ。この国を守る騎士団の騎士が金目的で悪行に手を染めるとは。情けない。
うーん、ちょっと気になる点があるんだけど。あいつらジオルドと一緒に俺達が居るの知ってたの? なんで?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
伯爵とは、ヴァンダイグフ伯爵。王妃の実家です。
0
あなたにおすすめの小説
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる