転生先は小説の‥…。

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第八章 出揃った駒

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「わたくし達に働いた無礼。貴方ならどうすべきかお分かりになりますわねえ。うふふ、謝らなくても宜しくてよ。ほんのちょっと気持ちを示して下されば」

チンピラみたいなセリフ、あれですよね謝罪はイイから誠意を見せろってやつですよね。分かります分ります。ここはしっかりと脅してやって下さいお母様。

母さんがチンピラっぽく振る舞っているのは昏倒した男が目を覚ましたから。

移動先の廃村の村長むらおさ役だった人の家で俺達は帝国軍人であるこの男との話し合い中なのだ。比較的マシな家の中、手狭な間取りだが俺達が暖を取る程度であれば十分だ。廃村の理由は聞かないが気にはなる。


「‥…確かに確認を怠った私の責任ですが、ご婦人、私に何をしろと?」
「うふふ。ご自身でお考えなさい‥‥と言いたいのですが時間が惜しいですので貸し一つにしておきます。ここぞと言う時にわたくしの求めに応じで下されば事を荒立ては致しませんわ。宜しくて?」
「‥‥‥すまなかった」

言い負かされた男は悔しそうだが自業自得だ。何で確認しないで行動するかな。

これで溜飲を下げた俺達とダル達帝国軍人サイドとの話し合いを始められる。





ーーーーーーーーーーー


「私どもの捜査にご協力をお願いしたい。なに、情報を下さればそれで宜しいのですよ。クレアと関わりのあった貴女方なら我等では掴めなかった情報をお持ちだと思われます。どうですかご婦人。ここで帝国軍に恩を売りませんか」
「‥…貴方の言い分は分りました。ですがこの場での返答は出来かねます。お分かり? 旦那様のいない場所で決められるものではないの。足を洗って出直しなさい」
「…‥‥‥‥帝国貴族の貴女方にお願いしています。王国貴族のザックバイヤーグラヤス公爵家ではございません。お間違えなきよう」


母さんと男の冷やかな応戦は平行線だ。こんな感じで進まない。



聞けば帝国側としてはクレアについては極秘裏に対処したい。王国側で関わったのが俺達ザックバイヤーグラヤス家と伯爵家。だけどクレアが帝国を出奔したのか攫われたのかは不明。でも確実に王国貴族の伝手でいなくなった。
今有力情報は王族、しかも第二王子がクレアの失踪に関わりがあると思われていてその捜査に協力を求められたのだ。
第二王子が留学先の帝国から引き上げる時にクレアはいなくなった。王子もクレアの能力を知っている。学年は一つ下なのだがクレアが見る「先を見る」のは王国が多い。勿論、帝国も見てはいるが圧倒的に王国が多い。しかも何故か学園の出来事や特定の人物たちの個人的な話だったり。偏りが酷いそうだ。
これでは固有の能力だと判定しかねると鑑定者達は頭を抱えているのだと。

‥‥ちょっと聞き捨てならない。第二王子? 今、第二王子って言ったよね? 

どういうこと? あっ、同じ学校! えっ、でもまさか‥‥
一国の王子と一介の下級貴族。接点が学院。俄には信じられないがまるっきし嘘とも言えない。微妙なラインだよね。
情報‥‥母さんどうする? この男に教える? でもダルが言いそう‥‥。

そう言えばダルの話も途中だったよね。まずったな。話し合いらしい話し合い出来ていないよね。


「ふぅ。このままで時間の無駄ですわね。少々お時間頂けるかしら。ザックバイヤーグラヤス家の者で話し合います。宜しいわね」

睨み利かせながらだから迫力がある。そうだね甘い顔してちゃダメだよね。

「お母様、クレアの情報はダルも持っています。わたくし達が言わなくても彼を通じて情報が相手に渡るのではありませんか?」
「ふふ、ティはそう思うのね。でもわたくしはダルは情報を渡さないと思うわ。まだ彼はわたくしに手を貸してもらいたがっているもの。意に反する事は避けたいでしょうね」
「奥様、我等もそう情報は持ち合わせてはおりません。恐らく帝国の方が持っていそうです」
「そうね。こちらの情報は大したことは無いわ。あの娘は誰かの駒よ。単に公爵家に恨みを持つ者かティを狙ってなのかはっきりしない。情報だなんて此方が欲しいわ‥…でも」

そう言って母さんはフード三人衆を集めて話始めた。俺と護衛は蚊帳の外。

ちぇ、仲間外れかよ。




「それでは貴方に任せるわ。好きなように話を詰めなさいな」

送り出されたのはフードの男、小刻みに肩を揺らすあいつだ。一人、帝国サイドの者と話すのか? 母さんの人選の基準が分からないや。こっちの情報は特筆するものではないからいいのか。そうか。


待っている間、ダルが此方にやって来た。話の続きか。

「公爵夫人。このような事になり申し訳ございません」深々と頭を下げ謝意を全身で表すダルの深い後悔。居た堪れない。
「あの騎士達は第一騎士団の者ですが金で‥‥皆様に害為すよう雇われた者でした。誘拐を目論見、公爵家から身代金。裏組織の人間に奴隷として売りつけ金を儲けようとしておりました。‥‥禄でもない男です」

聞けばムカつく話だ。この国を守る騎士団の騎士が金目的で悪行に手を染めるとは。情けない。


うーん、ちょっと気になる点があるんだけど。あいつらジオルドと一緒に俺達が居るの知ってたの? なんで?




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伯爵とは、ヴァンダイグフ伯爵。王妃の実家です。
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