転生先は小説の‥…。

kei

文字の大きさ
182 / 365
第九章 王国の異変

検証ー①

しおりを挟む

「うううう、何と言う非道な人達だ‥…我が皇帝陛下より賜りし紋章を‥‥ううう、酷い酷すぎるぅぅ」

あ~ごめんってば。
泣き崩れるギルベルトは放置の儘、義兄とハイデさんは意見交換を始めた。

「ふむ…‥本当に綺麗に消えたね。紋章って一種の契約魔法ではなかったかな」
「はい、若様。これも血の契約の類です。但し誓約のない身分の証明紋かと思われます」
「ふ~ん、そうか。そうなると命を科す程の縛りは無いわけだ。では紋章が消えたところで彼は死ぬこともないね。ふうむ」

何やら義兄が物騒な事を言っている気がする。ちょっと意味がわからないな。

「ふ~うむ。これは‥‥レティは契約魔法自体無効化出来るのだろうか? ううん、いやでも…‥どういう原理だ? これは魔力? なのか‥…」
 
どうやら義兄は独り思考の渦に落たようだ。何やらブツブツ呟いている。

「お嬢様、体調に異変はございませんか? ご気分は?」
「いいえ、何とも無いわ。ありがとう」
「お嬢様、ギルベルト様の魔力を吸い取ったのでしょうか? それとも紋章だけを? 一体、何をなさったのでしょうか」
「あ~、紋章だけよ。光ったから、つい魔力かと思ったの。でも彼の魔力は吸い取ってはいないわ。紋章だけよ」
「そうでしたか。では紋章は消えてなくなったのでしょうか?」
「えっ? そうねぇ‥…消えちゃったのかしら? わからないわ」
「‥…お判りになりませんか? でしたら一度試しに私の手の甲に移してみませんか」
「ええ? ハイデの?」
「はい。お嬢様。もしかしたら消えたのではないかもしれませんし。試す価値はあるかと思います。如何でしょう‥…若様、宜しいでしょうか」

何時の間にか正気に返った義兄が俺達の遣り取りを興味深げに聞いていた。

「‥‥‥ああ構わないよ。面白そうだしね。レティ、いいかな?」
「あ、はい、ではやってみますね」



「ではいきますよ? 気持ちが悪いとか痛いとか、何か異変があればすぐに言ってくださいね」
「はいお嬢様。大丈夫です」

ニコリと微笑んだハイデさん、よく見るとウキウキしていないか?

俺は彼女の左手に紋章が浮き出るようイメージを固め魔力を押し流した。
今回はホンのちょっとの魔力だから気を付けないと流し過ぎちゃうからね。


「‥…どうでしょう、紋章は‥…」

「あ、手の甲に魔力が‥…これは‥…何という不思議な」
「どれ? レティ、気分はどうかな? ハイデも。身体に異常はない?」
「若様、大丈夫です。何処も異変はございません。強いて言えば左手の甲に魔力が感じられる‥…ぐらいでしょうか」
「お義兄様、わたくしも何ともございませんわ」



「うっうっうう‥…俺の、俺の紋章…‥ううう」


ハイデさんの手の甲にくっきりと浮かんだ紋章。どうやら実験は成功だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ
恋愛
この話は 『内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』 の続編です。 アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。 そして、アイシャを産んだ。 父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。 ただアイシャには昔の記憶がない。 だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。 アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。 親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。 アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに…… 明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。 アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰? ◆ ◆ ◆ 今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。 無理!またなんで! と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。 もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。 多分かなりイライラします。 すみません、よろしくお願いします ★内緒で死ぬことにした の最終話 キリアン君15歳から14歳 アイシャ11歳から10歳 に変更しました。 申し訳ありません。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...